勇者でわなく魔王で呼ばれたから頑張って生きる

柚子華

10話

陸斗がとどめをさせない様子をスゥは見ていた。

スゥは代々魔王に受け継がれるもので、中には「殺したくない。でも平和になって欲しい。」というようなわがままのような目標を達成する直前までたどり着いた者もいた。

そんなスゥから見ても陸斗はまだ弱かった。

技術に関しては、既に申し分ない。だが、まだ心構えが完成していなかった。魔物を、そして敵を殺める覚悟がなかった。

スゥは陸斗にはまだ隠していることがある。

スゥは陸斗を信頼していない。会ったばかりの関係で信頼できるのなら素晴らしかったのだが、スゥは歴代魔王の中でも先代を最も信頼していた。先代は、人間との争いをなくすために戦い、あと一歩のところまでたどり着いた。そう・・・あと一歩のところまでは。

先代はあと一歩で死んだ。



人間によって殺されたのだ。



スゥは武器、魔王が死ぬまで永遠にそばにいる存在。



だからこそスゥは主人の最後を見ることとなる。



だからこそスゥは人間への復讐を誓った。



まあ次の主人が人間だったのは予想外だったが。それも些細なズレ。

スゥたちのような魔槍や神槍と呼ばれるものは自分の主を好きになることが多い。スゥとて例外ではなく陸斗のことは好きである。だからスゥの中では、「陸斗以外の人間への復讐」を誓っている。

だから「陸斗には強くなって欲しい」そう思って陸斗を応援していた・・・。




陸斗は未だためらっていた。

元は平和な世界にいたのだから当然だろう。それでも生きるために命を奪わなければいけない。

だが、陸斗は既に理解し始めていた。自分の中に何かあること。それはまだ自分の手には余るものだと。

それでも倒せないのであれば使うしかなかっただろう。

使うと決めたその瞬間、陸斗・・は意識を失った。

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