アラフォー女性獣医師は、チートな元獣に囲まれて混乱している

穴の空いた靴下

第二十三話 飛ぶ鳥ではアンデスコンドルが一番大きいはずだけど……

 なぜかアキちゃんと裸で抱き合って眠らされた。
 その方が落ち着くからと言われたけど、妙にハァハァ言われて少し目が怖かった。

 それでもアキちゃんは暖かかった。
 その暖かさが少し疲れで風邪を引きかけていた心をポカポカと温めてくれた。

 朝、アキちゃんと一緒に外に出たらアキちゃんが他のみんなに引きずられて連れて行かれてしまった。

 戻ってきたアキちゃんはよっぽど恐ろしいことを言われたのかガタガタ震えて私に近づこうとしなくなってしまった。
 お礼を言いたかったのになぁ……

 しばらくするとアキちゃんの目にも光が戻ってきた。
 貴族怖い、帝国怖い、冒険者怖い、なによりも宗教怖いとブツブツ言ってる時は本当に大丈夫か不安になってしまった。

「さて、だいぶ雰囲気も良くなってきてる。
 終りが近いんだろう……」

「あのゴーレムを超える何かがいそうですね……鳥肌が立ってる」

 今はあの戦いを終え、休養を取ってさらに5階層ほど下った場所にいる。
 目の前に今まで見たことがないほど大きな扉がある。
 どうやら私の、聖女の力で開くタイプの扉、つまり、この先には何かある。
 全員の状態を確かめて、何か、に挑む準備を完璧にする。

「ここまで自分たちを支えてくれた冒険者の皆のためにも、何が起きようと必ず乗り越えないと」

「フユ、あまり肩に力が入ってると身体が動きませんよ~集中しつつ、リラックスが寛容です」

 こういう時のリッカの陽気さは見習いたい。
 全員がふーっとひとつ深呼吸をするといい顔になっている。

「じゃあ、開くね」

 扉の中央に手を当てるとその点を中心に光が広がり、扉が音もなく開き始める。
 扉の先はまるで神殿のような荘厳な作りになっている。
 その空間の中央に一体の生物が丸くなって眠っている。

「鳥……?」

『マキ殿、そこで眠っているのは聖鳥 メーリア。
 儂と同じように古き聖獣が一角。姿を見ぬと思ったらこんなところにおったのか』

 フユの身体の中からその生物の正体を教えてくれた。
 全員が部屋の中に入ると静かに扉が閉まっていく。
 サポートの方々とまた分離されてしまうけど、この先の展開的に外に居てもらったほうがいい。

『よく来たわね聖女とその仲間たち。懐かしい気配も感じるわね……
 私は聖獣メーリア。古き勇者との約束でいずれ来るこの時をここで眠り待っていました。
 魔王を倒さんとする聖女の一行よ、その力を私に見せてください。
 力を貸すに足る存在なら我が力を与えましょう!』

「皆、気合い入れていくよー!」

 聖鳥メーリア。見た目は丹頂鶴が近い、ただ全身はプラチナのような輝きの純白。
 美しいエメラルドグリーンの瞳と鋭い黄金の嘴。
 広げると20mくらいはありそうな両翼を大きく広げる。
 その時巻き起こる突風を絶えるだけでも全員必死になるほどだ。

『飛ぶことはルール違反でしょうから、この場にてお相手しますわ』

「風の精霊よ、我らに風よけの加護を!」

『聖獣の名において命じます。風の精霊よ我が領域からお帰りなさい』

 リッカがかけようとしていた精霊魔法が即座に無効化される。
 メーリアから吹き荒れる風が私達の行動を妨害する。

「駄目だねー、この空間で精霊魔法は使えないと思ってくれー」

「単純な力比べで聖獣に挑むなんて無謀の極みなんですがね……マキ君手を貸してくれ!」

 トウジが組み上げる術式に手を加え、さらに魔力提供をする。
 私達の背後から風が吹き込み向かい風と均衡を取ってくれる。

「なんとか吹き飛ばされないで済みますが、やや手詰まりですね」

 長距離攻撃はメーリア付近の唸り狂う風に全てはたき落とされる。
 近代兵器でも無理だったのでたぶん無理だ。

「私のウインチェスターすら逸らすとは……」

「くっそー! 結構近くまで行けるんだけどなー!」

「ふっ、風も読まずに突っ込むからだ、ホラ見ろ俺のほうが2mぐらい近づいてるぞ」

「ハルもナツもくだらないことで張り合わないの!」

「しかしマキ殿、これは問題ですぞ」

 フユも何度か近くまで接近できたが、もう少しというところで押し返されている。

「地下を行くってアイデアは、領域の結界とやらで防がれましたし……
 マキさんどうしましょ?」

「正攻法で、風を見切るしかない!」

 乱れ狂う暴風に見えるが、その流れには隙間のようなものがある。
 風を読んでその隙間を進むことで聖獣へと肉薄が出来る! はず。

「ランダムで変化する風の流れを読んでその流れに乗る!
 風の声を聞けば大丈夫!」

「マキ……具体的には?」

「努力、根性!」

「ですよね……」

『なんじゃ、大したことないのぉ……妾は眠ってるからその壁突破したらお越しておくれ。
 ついでに勇者は3ヶ月でクリアしたぞー』

「さ、三ヶ月!?」

「それは少し時間がかかりすぎる気が……」

『まぁ頑張り給えひよっこ達……ふあああ~』

「ぬぐぐ、やってやるわ! 勇者よりも早く!」

「一見すると変化に規則性はないし……コレは手強い……」

 それから全員が疲れきるまで徹底して風の壁の試練に挑み続けた。
 汗だくになりながら何度も何度も挑戦したが、結局フユの力づくが一番接近できるという悲しい結果に終わった。

「ぬぐぐぐぐぐぐぐ……ヘイロンの力でも風が読めないとは誤算……」

『聖獣としての格が違いますから……申し訳ない』

「いいのよ、でもなんとなーくとっかかりのきっかけの端っこを掴んだような気になってきたから……
 今日はもう終わり、正直歩くのもしんどい……」

 すでに私、フユとハル以外はみんな疲労に負けて壁に風によって押し付けながら眠っている。

「明日は我が身か……」

 ズリズリと身体が交代して背後の壁に押し付けられる。

「あれ? なんか気持ちいいねこれ」

 なんか壁がほんのりと温かい、そこに力を抜くと浮いたような感覚で風に寄って押し付けられる。
 風は緩やかに体中をもみほぐしてくれているかのようだ。
 その感覚に集中していると気がつけばぐっすりと眠ってしまった。

『目覚めたか? 朝餉くらいは許してやる。2時間で再開するぞ』

 目覚めると身体が軽い。
 倒れる寸前まで酷使した肉体疲労が綺麗サッパリ抜けている。
 お言葉に甘えて必死に朝食を胃に詰め込んで2時間で身支度を整える。

「今日こそ!!」

『頑張るが良い』

 メーリアが大きく羽ばたくとまた風の障壁が作られる。

「今日こそ少しでも皆の力添えに!」

 リッカとナギ、トウジは魔法による風の軽減を今日も頑張っている。
 魔法でのアプローチも風の変化を読んで最も効率のいいバランスで拮抗させる必要があるので、繊細なコントロールが必要だと昨日で気がついたらしい。
 肉体派はもう当たって砕けろ的に何度もチャレンジだ。

『ふっ、少し休憩するといい。
 昨日よりほんのすこーーーーーし進んどるじゃないか、その一寸が昨日より前に進んでいる証拠だ。
 再開したければ声をかけるがよろしい。
 後そうだ、外の奴らは地上に送っておいたぞ。
 人というものはああして他人のために一生懸命になれる、美しいものだ』

 なんとお昼休憩も与えてくれる聖獣様。優しい。

「よっしゃ! 行くぞ!」

 数日経つとナツがその才能を発揮し始めて来た。
 無駄のない足さばきと身体の利用、風の変化にも対応してスルスルと暴風の中を進んでいく。

『ほほう、早いではないかい。それでは少しいたずらをさせてもらおうかね』

 メーリアは自身の羽を風に乗せて飛ばしてくる。
 ナツはその羽根を落とそうと構えるがその瞬間に風に吹き飛ばされていく、内部のほうが風は強いために少しでも巻かれると弾き飛ばされてしまう。

『フフフ……まだまだじゃな。いざ戦いという時に身体に力が入っておるな』

「くっそー!」

「凄いよナツ! あのライン超えられたじゃん!」

「ふむ、儂も続かねば」

 実は人によって適正に合わせた試練へのアプローチがある。
 ハルやナツは自身の身体能力と読みを利用した方法、フユは力による風の操作と防御、アキは風の流れを読んだ完璧な射撃の探求、トウジ、リッカ、ナギは魔力による障壁への抵抗。
 それぞれの特色を利用して試練に挑んでいる。
 初めは皆で挑んでいたが……

『それぞれ持ち味をいかさんでどうする?』

 それからそれぞれ試練へと挑んでいる。

 私は……




 

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