アラフォー女性獣医師は、チートな元獣に囲まれて混乱している

穴の空いた靴下

第十六話 えっ? 私の戦闘力高すぎ……

 宴も過ぎて翌朝、一旦ソウ山から降りた私たちは近くの街で物資を補給して、そのまま北のトーンツリー共和国へと移動する。
 大きな道へ出てからは再び馬車での移動となり、快適な旅が再開する。
 馬に乗れるだけでもすごく楽になるんだけどね。

「ところでマキさん魔法の組み換えってどうやったのですか?」

「いやー、あのスマホのゲームに似てるんだよねこの世界の上位の魔法……
 だからなんとなく……」

「つまり積層型魔法陣をマキ君は自由に形成できるってことになるのか?」

「うん、たぶん。知識はなぜか頭のなかに入ってて、後はパズルを組む要領でぱぱっと……」

「それが事実だとすると、マキさんの能力は帝国の魔法師団級ってことになります……」

 ナギちゃんが真面目な顔で考え込んでる。かわいい。

「そういえばマキ、その腕輪なんでも武器出せるんだろ?
 扱い方はわかるのか? まぁ銃はあれだとしても」

「うーんとね、言いにくいんだけど……
 勇者の経験的なものと、皆の経験が全て身体に入ってる? 的な?」

「……ん? 勇者の経験って……基本的にこの国にある武芸の元は過去の勇者の流れを組んでいるんだぞ……と、いうことは……」

「うん。ハルの剣術とかフユの槍術も、マキちゃんの弓術も含めて、なんでも……」

 皆開いた口が塞がらないと言った表情だ。
 別に私のせいじゃないんだけど……
 つながりのある皆の力は、もともと使えるようになっていたんだけど、さらにこの腕輪のお陰でいろんなことが出来るようになった。

「……聖女様だから、仕方ないね」

 トウジが苦笑いしていた。

「か弱いマキを守るって夢が……」

「か、肩を並べて戦えることを喜ぼうナツ!」

 その後、何度か魔物が襲ってきたので魔法やら色んな武器で撃退してみせたら皆納得してくれた。
 質問攻めにあったんだけど、自分でもわからずに何故か、知ってる知識って説明が難しい……
 フユなんて失われた口伝の槍術だって弟子にして欲しいって言ってきた。
 どうやら私は結構強いらしい。取り敢えずお荷物にならないですんでよかったのだ。

「しかし……もともと規格外なマキが、勇者の神具を集めていったらどこまで行くんだ……
 一個の神具だけで、これほど……だからこそ神具と呼ばれているんだろうが……」

 すっかり意気消沈してしまったハル。そんなに落ち込まなくても……

「ハルはまだいいじゃねーか、神獣様の加護で急に強くなって……オレなんて……」

 ナツはもっと凹んでる。
 うーん。お母さんとしては皆で元気になってほしいなぁ……

『聖獣は他にもいるし、勇者の足跡をたどるなら主殿は他の聖獣も従える。
 皆の力になる聖獣もおるじゃろう』

 ウインが救いの手を差し伸べてくれた。
 ナツもそうか、そうだよな! って元気になっている。
 昔っから気分屋で調子がいいんだから。

 ソウ山の麓、霊山に登る冒険者や旅人が利用するために結構栄えている。
 街道を挟み込むように街は形成されていて石造りの防壁によって周囲からの襲撃に備えている。
 街道を通る際にはほぼ通過することになるので関所に近いような働きもしているとハルが教えてくれた。
 街道沿いは活気に満ち溢れていて、様々な商品が所狭しと、時には街道にはみ出して売られていて、なんだかワクワクしちゃう。
 建物の作りも日本で見るような建築様式ではもちろん無いので、まるでヨーロッパか何かの情緒あふれる街に迷い込んだような、そんな気分になる。
 王都とかの整えられた町並みも素敵だったけど、こういうごちゃごちゃした感じもこれはこれで素敵です。

 BB商会の人達は物資の調達など休む暇もなく働いてくれている。
 もともとアキちゃんが準備してくれていたので、スムーズに物事は進んでいく、この世界のアキちゃんは日本にいた頃と同じように物凄く頭がいい。
 いつの間にか毎日当たり前のように家にいたんだよなーアキちゃんは。
 庭にいたリッカとすぐに仲良くなって……

「どうしたんだいマキっち。少しさみしそうに見えたよ~」

「ううん、少し昔のことを思い出してたの」

「そうかい。……早く、帰れるといいね」

「ふふふ、ここの生活も、なんか夢みたいで楽しいけどね」

「うん、やっぱりマキっちは笑顔のほうが可愛いよ!」

 うーん、なんか変なキャラになってるけど、リッカもめっちゃくちゃイケメン何だよなー。
 なんかラテン系な男性って感じで、こういうことサラッと言えちゃうんだもんなー。

「リッカ、なにマキ君に粉をかけているんだい?」

「そ、そうだよリッカさん。ず、ずるいよ!」

 覗き込むようにしていたリッカをトウジとナギちゃんが間に入って割り込んできた。
 ふぅやれやれみたいなポーズでリッカは元の席に座る。

「まったく、油断も隙もない……」

「何もされなかったマキさん?」

「やだなぁ、リッカが私に何かするわけ無いじゃん!」

「いや、わからんぞ。アイツはあのノリで一気に距離を詰めそうで恐ろしい」

「そうですよ! 気をつけてくださいねマキさん!」

「うーん、気をつけろって言われてもー」

「マキ君、この際だからはっきり言っておくが、君は過去のままで考えているかもしれないが、今君は魅力的な女性で、僕たちは男だ。それを忘れずに、誰とでも二人きりになったりするのは控えてほしい」

「……みんな約束して我慢してるんだから……」

 ……そういうものなのかぁ、少しさみしい。
 でも、ハルにドキドキしちゃったことを思い出して、ほんの少し気をつけよう。そう思った。

 そんなこんなでこの街での滞在場所である商会と縁故のある宿屋に到着する。
 街の中でも街道沿いの目立つ位置にあって、建物も一際立派だ。
 木造の雰囲気がある作りで、日本だったら河口湖とかの辺りにある高級ロッジとかにありそう。

「お待ちしておりましたペッセルヘルン様、聖女様、それにお護りする勇者の方々を当ホテルでお迎えすることになり、大変な栄誉を賜りました」

「お世話になります」

 従業員総出でお迎えされて恐縮してしまう……
 ホテルの内装も素敵だった。全体的にシックで落ち着きのある作りは好みだなぁ。
 証明が魔道具とランプをうまく使って高級感をか持ち出している。
 電気がなくても別の技術が発達してるんだなぁ……
 魔法とか電気以上に便利だもんね。

「アキネスカ様!! 大変です!」

 荷物を運んでもらっているとホテルに人が飛び込んでくる。
 かなり焦っているようで息も絶え絶えに肩を揺らせている。

「何事や?」

「魔物が、魔物が大挙してこの街に迫っております!
 間もなく外壁に到達すると思われます!」

「なんやて!?」

 すぐに全員で外に飛び出す。

「速度強化!」

「風よ! 我らを運び給え!」

 最大速度で敵が迫る外壁へと到達する。
 魔法を使うと外壁もとんとんとーんと登れてしまう。
 でも、これ敵にも同じこと言えるよね……

「あれか……」

 薄暗くなった街道の先にモゴモゴと蠢く塊が見える。
 大量の魔物が集団で押し寄せている。

「すでに街道側の城門は閉じてある。幸運にも外に人が少なかったようだ」

 ハルが守備隊の人に話を聞いてきてくれた。

「うーん、どうやらベンモス軍団の怨嗟が周囲の魔物に取り付いたようだねー」

 リッカは精霊の声に耳を傾けている。

「そうなると、少しは私達に責任がありそうですね」

 トウジはいつものメガネをくいっとあげる素振りを見せる。
 少し、めんどくさそうにため息をつく。
 さっき、あとから考えたら魅力的な女性なんて言われたのを思い出すと、この知的な男性のそういったものがなんだかセクシーに見えてしまう……

「マキ殿、自分たちが町の外でアレを抑えたほうが被害は少ないでしょう。
 よろしいかな?」

「は、はい! それで行きましょう」

 何の躊躇もなく全員が防壁から外へと飛び降りる。
 風の精霊の加護があるので地面には音もなく着地する。

「マキさんお手伝いお願いします!」

「マキ君最後の構築は頼むよ」

 ナギちゃんとトウジが複雑な魔法陣を組み上げていく。
 魔法陣からなんとなく魔法の性質や効能を読み取って、より効果的で範囲威力を調整させていく。

「ここを、こうして、こうやれば! 出来た!!」

「詠唱を!」

「えーっと……、行けー! ファンネル!」

 魔法陣が輝きだし無数の光のレーザーが美しい曲線を描きながら敵の頭上に降り注ぐ、敵の頭上でその光の一つ一つが分裂して隙間なく降り注ぐ。

「おおう……スゲー魔法だな……これで終わったんじゃないか?」

 まったくナツはわかりやすいフラグを……

「いや、まだだ……ゆくぞハル殿!」

「おうさ!」

 聖獣付きの二人が敵の集団へと突っ込んでいく、結構な数は倒したかもしれないけど、まだまだ敵は大波のように街に押し寄せる。

「取り敢えず、街へ被害を出さないように敵の侵入を防がないと……」

 街道以外から街へ接近されると問題だから……
 敵の侵入を街道だけに限定する壁でも作ってみよう。

「えーっと、多分これをこうして、こんな感じで……」

 自分の中の知識に従って魔法陣を組み上げていく。
 地面に働きかけて防壁を作る。
 ついでにねずみ返しっぽいのも作って壁を乗り越えられにくくして、手前には堀を作って……
 あ、そう言えば湖近いし水堀にしよう!

 ふふふ、わたしのかんがえたさいきょうのぼうへきよ今現われろー!
 信長の○望位の知識しか無いけど、城壁をイメージする。

「いでよ壁!」

 魔法陣を地面に向かって放つ。
 足元に急に魔法陣が展開してハルとフユがびびってたけど、仕方ない。
 急がないと街に敵が押し寄せちゃう!

 ゴゴゴゴゴゴと地面が揺れる。
 魔法によって大量の土が巨大な壁を作っていく。
 同時に手前の土が利用され深い堀状になる、湖まで達した堀の内部に水が大量に流れ込む。
 一部の敵が堀に落ちてその濁流に飲まれていく。

「よーし! これで街道以外からは侵入できないはず!」

「……なんてことだ……」

 トウジがずれた眼鏡も直さずにポカーンとしている。
 まぁ、たしかに突然目の前に10mくらいの巨大な壁が現れたらびっくりもするか。

「さ、さすがマキ! これで敵は街道部分からなだれ込むはずだ!」

「我ら二人で敵をせき止め、後続は皆頼むぞ!」

「任せといてー! 皆いくよー!」

 こうして街道沿いの戦いは佳境を迎える。






「アラフォー女性獣医師は、チートな元獣に囲まれて混乱している」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く