異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

念話

翌日、昨日あんなことがあったからといって、今日まで休むというわけにはいかない。

なので、予定通り物件を買いに行く事になった。

支度を始めようとした時、アスタから待ったがかかる。

『あ、クオさん待ってください』

(ん?)

『出かける前に、みなさんを集めてくれませんか?』

言われたとおりに、全員を集める。

「クオ、どうしたの?」

「出かける前になにかすることがありましたか?」

「フィリアちゃん、今日はお店を買いに行くだけだったはずだよ?」

「じゃあ、なにか緊急の用事かな?」

″夜伽?″

「ああ。ちょっとな。それとサタナ、今夜どころか早朝だし、二度寝する気は無い」

″という理由をつけて、実はヘタレ?″

それを聞いたクオは、軽く魔力弾をサタナのひたいに向けて発射するも、同じ威力の魔力弾で相殺された。

順調に魔法の修行は進んでいるようである。

(で、集めてどうするんだ?)

『ルッカさんに共有者をクオさんに使ってもらってください』

(分かった)

「ルッカ、俺に共有者を使ってくれないか?」

「いいですけど……。どうしてですか?」

「知らん」

不思議そうに尋ねるルッカをばっさりと切るクオ。

「ええ……?ま、まあわかりました。とりあえず使いますね」

『あ、繋がりました。それではクオさん、ちょっとだけ待っていてください』

それからしばらくすると、ルッカの目が驚愕に見開かれる。

「あ、頭の中に声が……」

その声を皮切りに、残りの4人も顔をしかめる。

「……なるほど」

ルノがそう呟くと、

(クオ、聞こえる?)

直接声が響いてきた。

(ルノか?……どうやったんだ?)

(アスタ?って人から、教えてもらった)

(あー、あー、聞こえてるかな?)

(セナか)

(うん、そうだよー。出来たみたいだね)

(聞こえますか?クオさん)

(ああ、聞こえてる)

(良かったです)

(お兄様!どうですか?出来てますか?)

(ああ、ちゃんと出来てるぞ)

(わあ!本当にお兄様のことはが響いてきます!不思議な感じですね)

(主人ー!)

(うるせえ)

(儂に対するヘイトがすごいのじゃ……。まあとにかく、これがあれば街中でもみんなに話しかけられるの!)

(これ会話する相手選べるのか、便利だな)

『はい、今は個人に向けて使っていますが、ここの7人全員同時に使用可能ですよ』

(師匠、どう?)

聞こえてきたのは、どこか機械チックな人間味のない声。

(師匠ってことはサタナか?)

『……ああ、それはですね、サタナさんはこれを使うと修行が出来ないとのことでしたので、サタナさんだけ特別仕様なんです。……ですよね?』

と、アスタがサタナに呼びかける。

これが先ほど言った同時使用というものだろう。

(視線で不可視の魔力の文字を書いて、それを読み上げてもらってる。これなら難易度がむしろ上がってるからいい修行。……しばらくすれば目からビームが撃てるかも)

(撃つな)

相変わらず魔法関係になるとネジが飛ぶサタナであった。

ともあれ、この念話のようなものがあれば秘密裏に口裏合わせなども可能であり、今から交渉に行く身としては、かなり嬉しい追加の能力であることは間違いないだろう。

そのままクオたちは、当初の予定通り、物件を買いに行くのだった。

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