異世界奮闘、チート兄
閑話 デート (ルノ)
翌日、クオはルノと街をぶらついていた。
「……どこにいくの?」
右隣で腕を組んでいたルノが、クオに尋ねる。
出かける約束はしたものの、どこに行くかは決めていなかったのだ。
「……そうだな。とりあえず、ぶらぶら散策するかな。……ルノは行きたいとこないのか?」
2人で出かけているのだ、ルノの行きたいところにも行くべきだろう。
そう考えたクオは、ルノに希望を聞く。
「……ん。それなら、洋服見に行く」
「そうか、じゃあ服屋は確定だな。……他、なんか用事あるか?」
「……別にない。残りはクオに任せる。……私も、行きたいところがあれば言う」
「……まあ、それもそうだな。まだ時間はあるし、ゆっくりするか」
「……ん」
クオの言葉に嬉しそうに返事をしたルノは、クオの腕を握る力を強め、より密着した。
それに気づいたクオは、ルノから少し赤くなった顔を隠すように背向ける。
「……どうしたの?」
「……わざとらしいな」
「……なにが?」
「……お前、普段察しいいくせにこんな時だけ惚けやがって……。……まあいい。行くぞ」
何処か挑発的な笑みを浮かべるルノに、クオは何も言い返せず、何事もなかったかのように歩き出す。
しかし、その速度が若干速くなっていることに気がついていたルノは、ずっと嬉しそうにクオの隣をついていった。
「うちのコロッケはジャイアントカウをふんだんに使った自慢の一品だよ!」
「ねえねえそこの奥様、このネックレスいかがですか?この真ん中に嵌めてある宝石はーー」
「……これは、なんと言うか」
「……すごい」
大通りに出た2人は呆然とする。
辺りに溢れる客寄せの声。
今まで、こんなところに来たことのなかった2人は、この活気にただただ驚くばかりであった。
「どうだい、そこの兄ちゃん!オークの串焼き、うちのは特別うまいぜ!」
と、そこへ肉を焼いていた男から声がかかる。
「へえ。……ルノ、いるか?」
「ん」
「じゃあ、おじさん、串焼き2つ」
「はいよ!ちょっと待ってな……で、焼き加減は?」
「そんなサービスもやってるのか」
「まあな!世界一うまいうちのオークの串焼きを一番うまく食べてもらいてえからな!」
「ルノどうする?」
「……レア」
「分かった。じゃあ俺はミディアムで」
「あいよ!」
ジュウジュウと肉が焼ける音と共に香ばしい匂いが漂う。
「おまち!」
「いくらだ?」
「5切れで銅貨3枚……なんだが。兄ちゃんそんな可愛い子とデートだしな!妬ましいぜ。ったくよお!6切れにして銅貨4枚だ!」
「……それ、高くなってるよな?」
「いいじゃねえかよお!兄ちゃんがデートしてる間、俺は1人肉焼き続けんだ。少しくらい幸せを分けてくれ!」
「……はあ、まあいいか」
あまりにも情けないセリフにため息をつきながらも、特に金に困っているわけでもないので銅貨8枚を出すした。
一口。
オークは魔物であり、地球にいた時から容姿についても性質についても嫌悪感を感じていた生き物だった。
だからこそ、食べるまで不安に思っていたクオだったが、一口食べるとその認識が覆された。
肉はある程度火を通したミディアムのはずだ。
しかし、口に含んだオークの肉はマシュマロのように柔らかく、するりと溶け出し喉を通る。
くどさがなく、甘みのある肉汁は、その味を求めて次の一口へと誘う。
地球のどの高級肉でも恐らくかなわないであろう、圧倒的なうまさだった。
「……なんでこんなうまいのが露店で売ってるんだ……」
「……凄いおいしい」
クオの隣を歩くルノも、おいしさに驚いている。
「……流石は世界一だな」
「……自称するだけある」
その他にも色々な露店を食べ歩いたが、どれも、先ほどの串焼きに一歩劣る程度で、2人の露店という存在が覆されるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
腹も膨れ、次は服屋に行こうと歩いている2人。
「なあ、どこに服屋があるか知ってるのか?」
「……ん。大丈夫。任せて」
「ならいいんだが」
そんな風に話しながら行く2人に、
「おいおいそこの坊主!」
対面から、無精髭を生やした男が呼びかける。
身長が190は超えているだろう。
いかにも荒くれものといった様子だった。
「……なんだ?」
「お前、可愛い娘連れてんじゃねえか」
そう言ってルノを見る。
ルノは、面倒臭そうな顔をしていた。
テンプレか。
そう思ったクオは、いつでも目の前の男を吹き飛ばせるように軽く構える。
「なあなあ、お嬢ちゃん。そんなに可愛いんだ」
その後に続いて、
「この、キャサリンファッションショーに出てみないか?」
この言葉は予想外だったのか、2人が固まる。
「……ファッションショー?」
「おう!このファッションショーで優勝すれば、この企画の主催側のキャサリンって店の新作を無料でいくらでも買う権利が貰えるんだよ!……お嬢ちゃん可愛いしな、どうだ?出てみないか?」
「……ち、ちょっと待て。……キャサリンって、あのキャサリンか?」
クオにしては珍しく要領を得ない質問だった。
「坊主がどのキャサリンを言ってるか知らねえが……服屋でキャサリンと言やあキャサリン・ゴートさん以外にいないだろ。かくいう俺もキャサリンさんに見初められてな、今修行中の身なんだ」
そこまで聞いたクオの体は微妙に震えていた。
対照的にルノは開催者が知り合いの確率が高いと分かって少し安心しているようだ。
「まあ、知ってるなら話ははええ、チラシはこれだ、興味があるならそこに書いてある日時に王都に来いや、じゃあな!」
ルノに紙を渡すと、走り去って行く男。
「……行くのか?」
「……だめ?」
「……だめ、じゃないんだが……。あいつがいるのか……」
「……キャサリンさんはいい人」
「いや、あいつの近くにいると俺だけが危ないんだが……」
ショーに出ると言ったルノに、心底嫌そうな顔をするクオだった。
「……どこにいくの?」
右隣で腕を組んでいたルノが、クオに尋ねる。
出かける約束はしたものの、どこに行くかは決めていなかったのだ。
「……そうだな。とりあえず、ぶらぶら散策するかな。……ルノは行きたいとこないのか?」
2人で出かけているのだ、ルノの行きたいところにも行くべきだろう。
そう考えたクオは、ルノに希望を聞く。
「……ん。それなら、洋服見に行く」
「そうか、じゃあ服屋は確定だな。……他、なんか用事あるか?」
「……別にない。残りはクオに任せる。……私も、行きたいところがあれば言う」
「……まあ、それもそうだな。まだ時間はあるし、ゆっくりするか」
「……ん」
クオの言葉に嬉しそうに返事をしたルノは、クオの腕を握る力を強め、より密着した。
それに気づいたクオは、ルノから少し赤くなった顔を隠すように背向ける。
「……どうしたの?」
「……わざとらしいな」
「……なにが?」
「……お前、普段察しいいくせにこんな時だけ惚けやがって……。……まあいい。行くぞ」
何処か挑発的な笑みを浮かべるルノに、クオは何も言い返せず、何事もなかったかのように歩き出す。
しかし、その速度が若干速くなっていることに気がついていたルノは、ずっと嬉しそうにクオの隣をついていった。
「うちのコロッケはジャイアントカウをふんだんに使った自慢の一品だよ!」
「ねえねえそこの奥様、このネックレスいかがですか?この真ん中に嵌めてある宝石はーー」
「……これは、なんと言うか」
「……すごい」
大通りに出た2人は呆然とする。
辺りに溢れる客寄せの声。
今まで、こんなところに来たことのなかった2人は、この活気にただただ驚くばかりであった。
「どうだい、そこの兄ちゃん!オークの串焼き、うちのは特別うまいぜ!」
と、そこへ肉を焼いていた男から声がかかる。
「へえ。……ルノ、いるか?」
「ん」
「じゃあ、おじさん、串焼き2つ」
「はいよ!ちょっと待ってな……で、焼き加減は?」
「そんなサービスもやってるのか」
「まあな!世界一うまいうちのオークの串焼きを一番うまく食べてもらいてえからな!」
「ルノどうする?」
「……レア」
「分かった。じゃあ俺はミディアムで」
「あいよ!」
ジュウジュウと肉が焼ける音と共に香ばしい匂いが漂う。
「おまち!」
「いくらだ?」
「5切れで銅貨3枚……なんだが。兄ちゃんそんな可愛い子とデートだしな!妬ましいぜ。ったくよお!6切れにして銅貨4枚だ!」
「……それ、高くなってるよな?」
「いいじゃねえかよお!兄ちゃんがデートしてる間、俺は1人肉焼き続けんだ。少しくらい幸せを分けてくれ!」
「……はあ、まあいいか」
あまりにも情けないセリフにため息をつきながらも、特に金に困っているわけでもないので銅貨8枚を出すした。
一口。
オークは魔物であり、地球にいた時から容姿についても性質についても嫌悪感を感じていた生き物だった。
だからこそ、食べるまで不安に思っていたクオだったが、一口食べるとその認識が覆された。
肉はある程度火を通したミディアムのはずだ。
しかし、口に含んだオークの肉はマシュマロのように柔らかく、するりと溶け出し喉を通る。
くどさがなく、甘みのある肉汁は、その味を求めて次の一口へと誘う。
地球のどの高級肉でも恐らくかなわないであろう、圧倒的なうまさだった。
「……なんでこんなうまいのが露店で売ってるんだ……」
「……凄いおいしい」
クオの隣を歩くルノも、おいしさに驚いている。
「……流石は世界一だな」
「……自称するだけある」
その他にも色々な露店を食べ歩いたが、どれも、先ほどの串焼きに一歩劣る程度で、2人の露店という存在が覆されるのだった。
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腹も膨れ、次は服屋に行こうと歩いている2人。
「なあ、どこに服屋があるか知ってるのか?」
「……ん。大丈夫。任せて」
「ならいいんだが」
そんな風に話しながら行く2人に、
「おいおいそこの坊主!」
対面から、無精髭を生やした男が呼びかける。
身長が190は超えているだろう。
いかにも荒くれものといった様子だった。
「……なんだ?」
「お前、可愛い娘連れてんじゃねえか」
そう言ってルノを見る。
ルノは、面倒臭そうな顔をしていた。
テンプレか。
そう思ったクオは、いつでも目の前の男を吹き飛ばせるように軽く構える。
「なあなあ、お嬢ちゃん。そんなに可愛いんだ」
その後に続いて、
「この、キャサリンファッションショーに出てみないか?」
この言葉は予想外だったのか、2人が固まる。
「……ファッションショー?」
「おう!このファッションショーで優勝すれば、この企画の主催側のキャサリンって店の新作を無料でいくらでも買う権利が貰えるんだよ!……お嬢ちゃん可愛いしな、どうだ?出てみないか?」
「……ち、ちょっと待て。……キャサリンって、あのキャサリンか?」
クオにしては珍しく要領を得ない質問だった。
「坊主がどのキャサリンを言ってるか知らねえが……服屋でキャサリンと言やあキャサリン・ゴートさん以外にいないだろ。かくいう俺もキャサリンさんに見初められてな、今修行中の身なんだ」
そこまで聞いたクオの体は微妙に震えていた。
対照的にルノは開催者が知り合いの確率が高いと分かって少し安心しているようだ。
「まあ、知ってるなら話ははええ、チラシはこれだ、興味があるならそこに書いてある日時に王都に来いや、じゃあな!」
ルノに紙を渡すと、走り去って行く男。
「……行くのか?」
「……だめ?」
「……だめ、じゃないんだが……。あいつがいるのか……」
「……キャサリンさんはいい人」
「いや、あいつの近くにいると俺だけが危ないんだが……」
ショーに出ると言ったルノに、心底嫌そうな顔をするクオだった。
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