異世界奮闘、チート兄
意味
ルノが来てから一年。
最初は、迷惑を掛けているという負い目があったのか、倒れるのではないかというほどに働いていたが、それも程よく落ち着き、任された仕事と少しの手伝いをする程度になっていた。
もっとも、任された仕事の中で一つだけ、出来ているのかよく分からないものがあるのだが。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朝。
クオは布団の中でコロンと何かが動く感触で目を覚ます。
起きてしばらくぼーっとした後、クオは布団をめくる。
そこには、クオに寄り添うように寝ているルノの姿があった。
朝起きたら同じ布団の中に美少女だ。
普通に考えてドキドキするし、俗にいう朝チュンなのかと硬直するのが当然だろう。
しかし、この場の男はクオである。
ルノの姿を確認すると、何も言わずにルノの額へと手を近づけ、
ビシッ。と音がなるほどのデコピンを喰らわせた。
その衝撃にんん。とくぐもった声を漏らし、ゆっくりと顔を上げクオを見るルノ。
デコピンされた額が若干赤くなっているが、本人は気にしたそぶりもない。
「…………ん。起きた?」
「……起きた?じゃねえよ。寝てたのはお前だろ。……つうか、ここで寝るなって何度言えば分かるんだ?」
「……クオの布団が寝心地が良いのがわるい」
目を若干逸らしながらも開き直るルノ。
「……そうかよ。……とりあえず、もう起きてるから降りろ」
クオはルノのそんな態度にため息にを吐きつつも、特に何もせず、ルノをベットから降ろす。
ルノも渋々と言った様子で指示に従う。
……このやりとりが、朝の二人の日課である。
そして、ルノの出来ているのか分からない仕事というのも、これのことだ。
ルノは、朝早くにクオを起こしに来る。
そして、そのまま睡魔に負けて寝てしまう。
しかし、何故か起こさなければならない時間になると寝返りを打とうとする。
それにクオが反応して時間ぴったりに起きるのだ。
これが、出来ているのか分からないという理由である。
さっさと身支度をし、(ルノには部屋の前で待って貰っている)部屋を出ると、ちょうどフィリアと鉢合わせた。
「お兄様、おはようございます!」
「フィー。おはようございます。行きましょうか」
「はい!お兄様」
……相変わらず、驚きの豹変ぶりである。
リビングへ降りると、アーシャが料理を作っていた。
「あら、おはよう。3人とも、手伝ってくれないかしら?」
「「「はい(ん)」」」
アーシャは3人に気づくと手伝いを求め、それに応じた3人はそれぞれ、クオは料理を手伝い、フィリアとルノは皿を運び始めた。
全てが終わると全員が席に着き、食べ始める。
「フィー。どうかしましたか?」
フィリアがチラチラと自分の方を見ているのに気付いたクオが尋ねる。
尋ねられたフィリアは、見ていたことを気付かれたことに顔を赤くしながらも、答える。
「あ、あのですね、お兄様。明日は……わ、私と、お出掛けしてくださいませんか?……勿論、ルノお姉様も一緒に!」
「明日ですね?勿論構いませんよ。なんなら今からでもいいですよ?」
何故明日なのかと、遠回しに尋ねるクオ。
「え!?い、いえ。あ、明日じゃないとダメです!」
「…………じゃないとまだ何も用意出来ていないですし……」
「そうですか、分かりました。明日、楽しみにしていますね?」
最後、何を言ったか聞こえなかったクオだったが、言いたくないならまあいいか。と気にしないことにし、出掛けるのを楽しみにしている。とだけ伝えることにした。
「ええ!?……もしかして気付かれてます……?」
その言葉を聞いて驚いた顔をするフィリアに、やはり不思議そうな表情を浮かべていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朝食が終わると、クオは森へ行く。
自身のレベル上げと、時にルノのスキルの練習のためだ。
ルノの操魔師は、例え魔法の制御を奪ったとしても、自分が制御出来なければ結局は攻撃を喰らってしまう。
だから、クオの魔法を使って練習をするのだ。
これは、ルノがやってきた日の次の週から始めていた。
最初は威力のない水魔法の初級1個から初め、2個、3個と増やし、他属性も練習。
他属性の同時制御もやっていきーー
今では、クオの全力の魔法展開の10倍の数まで余裕で制御出来るようになっていた。
今も、全属性の魔法が全て二桁以上、ルノの周りに漂っている。
「……んじゃ、今日はもう帰るか」
日が傾いてきたのを確認したクオが、ルノに呼びかける。
それを聞いたルノは、コクリと頷く。
その時。
バシャ
と、なぜか水魔法だけ制御に失敗したルノは、水を全身に浴びた。
ルノは、着てきた服から着替え、破けてもいい薄手の洋服でいたので、ビショビショになった服は張り付き、所々透けていた。
「……何やってんだ」
若干恥ずかしそうに頬を染めるルノに、クオは眉をひくつかせながら尋ねる。
「……失敗」
「……またか……」
「……濡れたから、クオの服を貸して欲しい」
ルノの着替えは、たまたま一緒に濡れていた。
「……嫌だ。……はあ」
「乾燥」
ため息を吐いたクオは、風と火の混合魔法でルノの服を乾かす。
「……これでいいだろ」
「……ん。大丈夫」
「なんで若干落ち込んでるんだよ」
「……別に」
「……そうかよ、じゃあ行くぞ」
「……ん」
これが、たまにある二人のお約束だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーコンコン。
家に帰って夕飯を食べ、しばし微睡んでいた
クオは、ノックの音に目を覚ます。
「誰ですか?」
「……私」
「ルノか……待ってろ、今開ける」
クオが扉を開けた先には、黒のネグリジェに身を包んだルノが立っていた。
「まあ、とりあえず入れよ」
「……ん」
部屋に入ったルノは、椅子に腰掛けた。
「……で、何の用だ?」
「……気になったから、来た」
「何がだ?」
「……名前」
「あ?」
「ルノっていう、名前の意味。……急に気になったから、来た」
「……そりゃ確かに急だな」
一年いて今か。と呟くクオ。
「……で、意味は?」
自分で付けた名前の解説は恥ずかしいのだろう、頭を掻いて迷う表情を見せる。
「あー、あれだ」
「…………?」
クオらしくない、歯切れの悪いセリフに、ルノは首を傾げる。
その態度をみたクオは、頭をガシガシと掻くと、話し始めた
「お前の髪が、その。金髪で綺麗だったから。……月って言う意味のルナと、お前のイメージの黒の意味のノワールをかけたんだよ」
ルナはチェコ語とルーマニア語、ノワールはフランス語でバラバラなのだが、語感はいいのでしょうがないだろう。
最初は何を言われたかわかっていないのか、固まったままのルノは、意味を理解すると驚愕に目を見開く。
「……綺麗?私の、髪?」
「ああ。……なんで片言なんだよ。……どうした?」
急に俯いたルノの顔を覗き込んだクオは驚く。
俯いたルノの顔はーー
真っ赤で、嬉しそうな顔と少し悲しそうな顔をしたまま、目に涙を浮かべていた。
「……!……なん、でもない。あり、がとう、理由はわかった。……もう寝る。おやすみ」
覗き込まれているのに気付いたルノはさらに顔を真っ赤にさせ、少し早口でまくしたてると、小走りで部屋を出て行った。
「あ、ああ」
突然のルノの変化に呆然としたクオは、呆気にとられた顔で、そんなルノを見送った。
最初は、迷惑を掛けているという負い目があったのか、倒れるのではないかというほどに働いていたが、それも程よく落ち着き、任された仕事と少しの手伝いをする程度になっていた。
もっとも、任された仕事の中で一つだけ、出来ているのかよく分からないものがあるのだが。
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朝。
クオは布団の中でコロンと何かが動く感触で目を覚ます。
起きてしばらくぼーっとした後、クオは布団をめくる。
そこには、クオに寄り添うように寝ているルノの姿があった。
朝起きたら同じ布団の中に美少女だ。
普通に考えてドキドキするし、俗にいう朝チュンなのかと硬直するのが当然だろう。
しかし、この場の男はクオである。
ルノの姿を確認すると、何も言わずにルノの額へと手を近づけ、
ビシッ。と音がなるほどのデコピンを喰らわせた。
その衝撃にんん。とくぐもった声を漏らし、ゆっくりと顔を上げクオを見るルノ。
デコピンされた額が若干赤くなっているが、本人は気にしたそぶりもない。
「…………ん。起きた?」
「……起きた?じゃねえよ。寝てたのはお前だろ。……つうか、ここで寝るなって何度言えば分かるんだ?」
「……クオの布団が寝心地が良いのがわるい」
目を若干逸らしながらも開き直るルノ。
「……そうかよ。……とりあえず、もう起きてるから降りろ」
クオはルノのそんな態度にため息にを吐きつつも、特に何もせず、ルノをベットから降ろす。
ルノも渋々と言った様子で指示に従う。
……このやりとりが、朝の二人の日課である。
そして、ルノの出来ているのか分からない仕事というのも、これのことだ。
ルノは、朝早くにクオを起こしに来る。
そして、そのまま睡魔に負けて寝てしまう。
しかし、何故か起こさなければならない時間になると寝返りを打とうとする。
それにクオが反応して時間ぴったりに起きるのだ。
これが、出来ているのか分からないという理由である。
さっさと身支度をし、(ルノには部屋の前で待って貰っている)部屋を出ると、ちょうどフィリアと鉢合わせた。
「お兄様、おはようございます!」
「フィー。おはようございます。行きましょうか」
「はい!お兄様」
……相変わらず、驚きの豹変ぶりである。
リビングへ降りると、アーシャが料理を作っていた。
「あら、おはよう。3人とも、手伝ってくれないかしら?」
「「「はい(ん)」」」
アーシャは3人に気づくと手伝いを求め、それに応じた3人はそれぞれ、クオは料理を手伝い、フィリアとルノは皿を運び始めた。
全てが終わると全員が席に着き、食べ始める。
「フィー。どうかしましたか?」
フィリアがチラチラと自分の方を見ているのに気付いたクオが尋ねる。
尋ねられたフィリアは、見ていたことを気付かれたことに顔を赤くしながらも、答える。
「あ、あのですね、お兄様。明日は……わ、私と、お出掛けしてくださいませんか?……勿論、ルノお姉様も一緒に!」
「明日ですね?勿論構いませんよ。なんなら今からでもいいですよ?」
何故明日なのかと、遠回しに尋ねるクオ。
「え!?い、いえ。あ、明日じゃないとダメです!」
「…………じゃないとまだ何も用意出来ていないですし……」
「そうですか、分かりました。明日、楽しみにしていますね?」
最後、何を言ったか聞こえなかったクオだったが、言いたくないならまあいいか。と気にしないことにし、出掛けるのを楽しみにしている。とだけ伝えることにした。
「ええ!?……もしかして気付かれてます……?」
その言葉を聞いて驚いた顔をするフィリアに、やはり不思議そうな表情を浮かべていた。
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朝食が終わると、クオは森へ行く。
自身のレベル上げと、時にルノのスキルの練習のためだ。
ルノの操魔師は、例え魔法の制御を奪ったとしても、自分が制御出来なければ結局は攻撃を喰らってしまう。
だから、クオの魔法を使って練習をするのだ。
これは、ルノがやってきた日の次の週から始めていた。
最初は威力のない水魔法の初級1個から初め、2個、3個と増やし、他属性も練習。
他属性の同時制御もやっていきーー
今では、クオの全力の魔法展開の10倍の数まで余裕で制御出来るようになっていた。
今も、全属性の魔法が全て二桁以上、ルノの周りに漂っている。
「……んじゃ、今日はもう帰るか」
日が傾いてきたのを確認したクオが、ルノに呼びかける。
それを聞いたルノは、コクリと頷く。
その時。
バシャ
と、なぜか水魔法だけ制御に失敗したルノは、水を全身に浴びた。
ルノは、着てきた服から着替え、破けてもいい薄手の洋服でいたので、ビショビショになった服は張り付き、所々透けていた。
「……何やってんだ」
若干恥ずかしそうに頬を染めるルノに、クオは眉をひくつかせながら尋ねる。
「……失敗」
「……またか……」
「……濡れたから、クオの服を貸して欲しい」
ルノの着替えは、たまたま一緒に濡れていた。
「……嫌だ。……はあ」
「乾燥」
ため息を吐いたクオは、風と火の混合魔法でルノの服を乾かす。
「……これでいいだろ」
「……ん。大丈夫」
「なんで若干落ち込んでるんだよ」
「……別に」
「……そうかよ、じゃあ行くぞ」
「……ん」
これが、たまにある二人のお約束だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーコンコン。
家に帰って夕飯を食べ、しばし微睡んでいた
クオは、ノックの音に目を覚ます。
「誰ですか?」
「……私」
「ルノか……待ってろ、今開ける」
クオが扉を開けた先には、黒のネグリジェに身を包んだルノが立っていた。
「まあ、とりあえず入れよ」
「……ん」
部屋に入ったルノは、椅子に腰掛けた。
「……で、何の用だ?」
「……気になったから、来た」
「何がだ?」
「……名前」
「あ?」
「ルノっていう、名前の意味。……急に気になったから、来た」
「……そりゃ確かに急だな」
一年いて今か。と呟くクオ。
「……で、意味は?」
自分で付けた名前の解説は恥ずかしいのだろう、頭を掻いて迷う表情を見せる。
「あー、あれだ」
「…………?」
クオらしくない、歯切れの悪いセリフに、ルノは首を傾げる。
その態度をみたクオは、頭をガシガシと掻くと、話し始めた
「お前の髪が、その。金髪で綺麗だったから。……月って言う意味のルナと、お前のイメージの黒の意味のノワールをかけたんだよ」
ルナはチェコ語とルーマニア語、ノワールはフランス語でバラバラなのだが、語感はいいのでしょうがないだろう。
最初は何を言われたかわかっていないのか、固まったままのルノは、意味を理解すると驚愕に目を見開く。
「……綺麗?私の、髪?」
「ああ。……なんで片言なんだよ。……どうした?」
急に俯いたルノの顔を覗き込んだクオは驚く。
俯いたルノの顔はーー
真っ赤で、嬉しそうな顔と少し悲しそうな顔をしたまま、目に涙を浮かべていた。
「……!……なん、でもない。あり、がとう、理由はわかった。……もう寝る。おやすみ」
覗き込まれているのに気付いたルノはさらに顔を真っ赤にさせ、少し早口でまくしたてると、小走りで部屋を出て行った。
「あ、ああ」
突然のルノの変化に呆然としたクオは、呆気にとられた顔で、そんなルノを見送った。
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