異世界奮闘、チート兄

嚶鳴

紹介

森の中を歩く二人。

ルノの着ている、麻でできたワンピースの様な物は乱暴に扱われたかのようにボロボロだったが、そのルノ本人には傷どころか跡すら何も残っていなかった。

それを今更ながら不思議に思ったクオは、ルノを鑑定し、驚いた顔をした後、しばらくすると納得した表情になった。

これが、ルノのステータスである。

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名前 ルノ   種族 夜の王ノスフェラトゥ

年齢315

Lv17

HP7000

MP20000

STR52

DEX80

AGI60

INT79

DEF51

スキル

固有スキル

操血師  操魔師

称号 血姫けっき

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夜の王ノスフェラトゥ
•夜間はステータス5倍、毎秒HP2000回復。

•HP全損以外での死亡無効。

•HPの、物理、魔法攻撃以外での損失無効。

•MPのHP変換(MP1に対しHP10)

•固有スキル、操魔師の取得。

•HPがある限り、自身の欠損を即時回復

操血師
•自身の触れた血液の操作が可能。

操魔師
•発動した魔法を、発動MPの10分の1で乗っ取り、操れる。

血姫
•吸血鬼としてのデメリットを全て無効化し、所有者の種族を夜の王へと昇華。

•伴侶との吸血効率50倍(血液1mlにつきMP500、HP250回復)

•伴侶以外の者の吸血が不可能となる。

•固有スキル、操血師の取得。

……チートである。

スキルは勿論のこと、ステータスも同レベルの者より高い。

特典を貰っていないのにこの強さは、はっきり言って異常である。
 
しかも、吸血鬼の特徴か、ルノの年齢は15歳ほどにしか見えない。

……しかしそこはクオ。

奴隷の契約で、一切自分と家族に不利益なことができなくなっているので、多少警戒はしたが、すぐに視線を前へ戻した。

「…………?」

後ろから付いて来ていたし、何より鑑定をされたので自分が見られているのも見ていた。

そんなルノは、目の前の少年がいきなり自分を見つめ、驚いた表情をした後、急に納得した様な表情になり、最後には興味を無くし視線を戻すという、奇妙な行動を目にしたのだ。

当然、頭に?を浮かべながら、キョトンとした顔で小首を傾げる。

しかし、視線を前に戻したクオはそんなルノに気付いていないのか、さっさと進む。

それを見たルノは、少しよろけながらも、小走りで追いかけた。

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しばらく歩いて家に着いた二人は、玄関の前で立ち止まる。

この時点でルノは、クオがスキルを使って作った黒のフリルつきドレスに着替えていた。

彼女の腰まで伸びた金髪と、紅い目によく合っている。

まさに、夜の種族というに相応しい妖しさを放っていた。

この後の作戦はどうするかは、クオがすでに考えていたが、成功するかは分からない。

扉を開けるクオの額には、じわりと汗が浮かんでいた。

「クオ、お帰りなさい。……あら?」

「お兄様、お帰りなさい!……?」

扉が開く音を聞いたアーシャとフィリアは、玄関に行くと、クオを笑顔で迎える。

しかし、ルノの姿を見て、不思議そうな顔をした。

「お兄様、……その人は誰なんですか?」

特に、フィリアはいつも通りを装っているが、若干不機嫌さが感じられた。

「ルノは、僕の友達ですよ。フィー。……僕はお母様と話しがあるので、少しルノとお茶でもしていてくれませんか?」

「……お兄様も、後で来てくださいね?」

「はい、勿論いきますよ」

「……わかりました。ルノさん。こっちです」

クオが宥めて、渋々と言った様子でルノを連れて行く。

ルノにはあらかじめ口調については説明していたため、特に驚かれたりはしなかった。

「……それで、話しって何かしら?」

フィリアに聞かれたくない内容だと察したアーシャは、フィリアとルノが見えなくなってから尋ねてきた。

「あのですね?お母様、実はーー」

ルノは、両親と共に魔物に襲われ、両親に庇われて命拾いし、逃げて気を失った所で自分が見つけたらしい、とアーシャに伝えた。

勿論口裏合わせは済んでいる。

ちなみに、服や体は泉で洗ったと誤魔化した。

「……そうだったの。そんなことが……」

アーシャは瞳に涙を溜めている。

そのことに罪悪感を覚えつつ、クオは続ける。

「……そ、それでですね。もしよかったらーー」

「ええ、いいわ。当たり前よ!ルノちゃんをうちの子にするわ!」

その言葉を聞いて、ひとまず成功、と安堵するクオ。

話しを終えた二人は、フィリアとルノのところへ向かう。

『おに……さま……す……』

『クオ……本当、に……』

どうやら二人はクオのことについて話しているようだ。

扉を開ける。

「お兄様!お話は終わったのですか?」

「はい、ですので今から参加してもいいですか?」

「はい!勿論です!さあ、お兄様、こちらへどうぞ」

フィリアそう言って、テーブルへ案内し、クオが座ったのを確認すると、自分も3人で三角形を作るような位置にある椅子に腰掛ける。

今日のフィリアは、白いワンピースを着ており、自身の肩まで伸びた金髪と、碧眼が合わさって天使のようである。

フィリアとルノ。

どちらも同じ金髪ではあるが、フィリアはどこか神聖さえ感じさせるのに対し、ルノは少し妖艶ささえ感じさせる。

二人とも、方向性の若干ことなる可愛さを持っていた。

「……フィー。ルノとは仲良くなれましたか?」

「はい!ルノお姉様はもうお友達です!」

「……ん。フィア、とはなかよし」

クオの質問にフィリアが肯定を示し、ルノも同意する。

呼び方が変わっていることからも、嘘ではないだろう。

これなら大丈夫だろうと、クオは続けて話す。

「実は、ルノは今日からうちに住むことになりました」

その言葉に呆然とするフィリア。

しかし、言葉の意味を理解したのだろう。

フィリアの瞳がキラキラと輝きだす。

「ルノお姉様が、本当のお姉様になるんですか?うれしいです!」

そして、ルノの胸に飛び込む。

ルノは、よろけながらもしっかりと受け止めると、頭を撫で始めた。

ーーこうして、クオの家族の輪の中に、一人の少女が加わった。

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