彼との別れは突然に

白雪 哀音

デートの約束

私の名前は斎藤 明日香「さいとう あすか」どこにでもいる普通の高校生。

今日もいつも変わらない日常が過ぎると思っていた。あの瞬間が訪れる前までは…

「ちょっと早く着きすぎちゃったかな」

今日は彼氏の袴田 千秋「はかまだ ちあき」とのデートの約束をしていたが約束は12時、現在の時刻は11時。
朝が弱い千秋はまだ来ていない。

「久しぶりのデートで楽しみだったからあまり眠れなかったし…寝癖とか大丈夫よね」

そういうと小さな手鏡を見ながら彼氏に恥ずかしくない姿をしなければとむむっと真剣そうな表情をしながら髪を直していると足元から

「にゃ〜ん」と小さな鳴き声が聞こえた。
明日香がふと下を見てみるとそこには可愛らしい猫がじっとこちらを見つめていた。

「かわいいー!どこから来たのかなー?頭撫でても大丈夫かな?」

猫に警戒されないようにゆっくりとしゃがんで優しく頭撫でていると気持ちよさそうに喉を鳴らしながら甘えていた猫を見つめ「いまね、私待ち合わせしてるんだけど一緒に待ってる?」と抱っこして猫に問いかけてみる。

すると猫は「にゃー!」とまるで一緒に待ってると言うように抱き上げられながら鳴き声をあげてた。

それから猫と待つこと30分ようやく待ち合わせ場所に着いた千秋。

「あっ…明日香もう待ってる…待たせちゃったかな…あとで謝らないと」

先に来ていた明日香を遠くから見つけて待たせてしまって申し訳ないなと思いながら待ち合わせ場所に行くために信号が赤のためゆっくり歩みを止めた。

「あっ…千秋来た!あれがね私が待っていた人だよー」

猫と遊びながらふと顔をあげると信号を止まっている彼氏である千秋を見つけて抱っこしている猫にあれが私が待っていた人だよと教えてあげると自分も合流しようと信号に近づく。

すると「にゃー」と声をあげて突然動き出したのにびっくりしたのか猫は飛び降りてしまった。

「あっ…そっちはだめだよ!」千秋に駆け寄るといきなり腕から飛び降りた猫に驚いて手を離してしまったが猫が飛び降りたのは赤信号の道路。

驚いて飛び降りた猫の先には車が走ってきたがいきなり出てきた猫にドライバーも驚いた表情をしながらブレーキを止める音が鳴り響く。

それと同時に猫を助けようと飛び出した明日香が猫を抱き上げて顔を上げて見た光景はいまにもぶつかりそうな車の姿だった。

こういう時体って動かないんだ…と思い逃げることの出来ない明日香を突然「早く逃げろ!!」という言葉と同時に明日香の体は突き飛ばされた。

「えっ…なに…?」

確か自分は飛び出した猫を助けようとして無意識に道路に飛び出して…その後声が聞こえて…冷静にいま起きた出来事を整理する明日香。

しかし整理していくと嫌なことが頭をよぎった。「早く逃げろ!!」確かにそう聞こえた。

聞こえた声は間違いなく千秋の声だった。そして突き飛ばされた明日香の体。明日香の脳裏に嫌な気配がよぎった。

恐る恐る道路に目を向けるとそこには明日香を庇って倒れていた千秋の姿だった。

「えっ…いや…千秋…?千秋…?ねえ…起きてるよね…?ねえ千秋…?」

あまりの突然の出来事に頭が混乱して倒れている千秋に駆け寄る明日香。
周りからは救急車を呼ぶ声や駆け寄ってくる人たちで混乱していた。

「ねえ…千秋…?今日は久しぶりのデートなんだよ…?せっかく会えたのに…早く起きて頑張っておしゃれしたんだよ?…髪もいつもと違う髪形にして…なのに…なのに…」

自分のせいで大切な人が車にひかれて事故にあってしまった。もしあの時自分が道路に出ていなかったら大切な人が事故に遭うことはなかった。そんなことを考えながら目を覚まさない千秋の手を握りながら涙を流して見つめていた。

すると千秋の目がゆっくり開いて空いていた手で優しく頬を撫でながら「よかっ…た…怪我…して…な…いみたい…だね…。」っと優しく微笑みながらどこか安心した表情を浮かべて再びゆっくり目を閉じてしまう。

それと同時に救急車が到着し手際よく千秋を救急車の中に連れて行く。

「私も…連れて…行っ…てくださ…い!」

泣きながらもう言葉もまともに話せない状態だったがなんとか自分も連れて行ってほしいと言い一緒に救急車に乗り込むと救急車はそのまま病院へ走り始めて行く。

この時明日香は千秋が助かればそれでいいと思っていた。
この先に更につらい現実が待ち受けていることも知らずに…

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