トランセンデンス・ストーリー

Meral

魔王編 第十二話 白天龍

「おお!本当に出てこれた」

僕はヘリオスにある頼み事と言うよりお願いを聞いてもらった後ダンジョンから出ようとしたけど、自分の現在地が分からずどうしよか悩んでいたらヘリオスがダンジョンの主の権限で僕を一気にダンジョンの外まで転移させてくれた。

「さて、まずはギルドでギルドカードを作って貰わないとな。」

そして、レイはギルドへと向かった。その途中、

「あっ、すみません。」
「!ん?ああ。大丈夫だよ。」

びっくりしたぁ。まさかいきなり星菜さん達に出くわすとは思わなかった。もしこのローブを来てなかったらかなりまずかったな。このローブはヘリオスの部屋にあったいくつかのアイテムの一つで認識阻害なる効果があるらしい。

「着いたな。」

ギルドへと到着した僕は新たにギルドカードを発行した。

「すみません。冒険者登録をしたいんですが。」
「はい。分かりました。お名前と職業を書いてください。」
「わかりました。」

そして、僕は名前を書いた。本名は流石にバレるので、名前はゼロという名前にした。随分と安直な名前だけど、あまりいいのは浮かばなかった。職業は一応剣士ということにしておく。今一番うまく使える武器が剣だからだ。正確には刀が一番使いやすいのだが。

「これでお願いします。」
「はい、ありがとうございます。それでは軽くご説明をさせていただきます。」

ここは光達と聞いたことと一緒だったので割愛。

「冒険者になりたての方は必ずこのGランクからですのでご了承ください。それではお気を付けて。」
「はい!ありがとうございます。」

挨拶をした僕は早速旅に出る準備をする。ヘリオスの部屋には様々なアイテムや金銀財宝があった。それらを使うものだけは残して全て売ってしまった。
それにより今の所持金は金貨97枚と銀貨53枚だ。
因みにこの世界でのお金は石貨、鉄貨、銅貨、銀貨
金貨、白金貨とある。更にその上のものもあるみたいだが今はまだいいだろう。これらは100枚毎に一つ位が上がる。つまり銀貨100枚で金貨1枚だ。これは他の貨幣でも同じである。結構な量の資金を手に入れたので、兼ねてより予定していた移動に関しての問題から済ませていく。この街には馬などを売っているところがあるらしく受付の人に場所を聞いて、そこで馬を買ってさらに武具の調達もする。

「ここだな。」

教えて貰った場所に着いた。

「すみませーん。」
「はい、いらっしゃいませ。」
「何かいい馬はいますか?」
「それはお客様の相性などにもりますのでまずは当店の馬たちを見ていってください。」

営業スマイルで店員さんは言った。

「わかりました。それじゃあ、行きましょう。」
「はい、こちらでございます。」

店の奥に入って行くとたくさんの綺麗な馬が姿を表した。だが、その中に一際薄汚れた馬?のような何かがいた。

(何だあれは?馬にしては少し違うように見えるが。)

「すみません、あそこにいる馬は?」
「え?あぁ、あれは馬などではありませんよ。遠目だから分からないが知れませんがあれはグリフォンですよ。まあ、出来損ないですが」
「出来損ないのグリフォン?」
「えぇ、本来グリフォンには角があるのですがあのグリフォンにはそれが無いのです。何故かは知りませんが。知り合いからあのグリフォンを貰ったのはいいもののお客様に売るにはとても不格好なもんですから、ああやって一応世話はしています。」

確かによく見るとあのグリフォンにはあるべきはずの角が無かった。僕も店員さんの話を聞いてから他の馬を見ようとしたけど、どうしてもあのグリフォンから目が離せなかった。何故だろうか、でもあのグリフォンからは何か異質なものを感じる。

「あのグリフォンを見せてもらっても?」
「え!?いや、見るのは構わないが本当にろくに飛べもしないグリフォンですよ?」

そうグリフォンは角が無いとうまく飛べないとある本で読んだことがある。にも関わらず僕はあのグリフォンが本当は飛べるのではないかと思った。

「えぇ、大丈夫です。見るだけですから。」
「わかりました。ではこちらへ。」

店員さんに案内されてグリフォンに近づくと異質なものの正体に気づいた。

(これは魔力?でもこれはかなり嫌な感じのする魔力だな。)
《その通りです。マスター。これは呪いですね。》
(呪い?)
《はい。それもかなり強力な呪いです。》
(なんでそんなものがこのグリフォンに。)
《恐らくこれはグリフォンではありません。呪いによって姿が変えられているものと見ます。》
(なるほど、ならこの呪いを解いてやろう。)
《それは構いませんがかなり強力な呪いで、しかも、元はどのような生物だったのか分からないのですよ?それでもやるのですか?》
(うん。なんかこのグリフォンからは何かを、感じるんだ。まあ、ほとんど勘だけど。)
《マスターの勘は信用できるのですか?》
(僕の勘はよく当たるよ。)
《そうですか。それではマスターにお任せします。》
(任されたよ。)

ノエルとグリフォンについて喋ってから僕はグリフォンを買うことにした。

「すみません。このグリフォン買います。」
「え?ですが先程見るだけと…。」
「気が変わりました。このグリフォンを買わせて下さい。」
「は、はい。わかりました……。」

店員さんはとても驚いた様子でこちらの要求を呑んだ。気の所為かな?グリフォンも驚いたように見えた。

「それで、このグリフォンはいくらしますか?」
「いえ、まさかこんなグリフォンを買おうとする人がいるとは思ってなかったので値段なんて付けてないんですよ。」
「それじゃあ、このグリフォンはタダでよろしいと?」
「えぇ、まあ。こちらも本音を言うと食費が減りますのでこのグリフォンを引き取ってもらっても構いません。」
「分かりました。じゃあこのまま行きます。ありがとうございました。」
「あっ。ど、どうもありがとうございました。」

店員さんは呆気に取られたような表情で僕を見送った。そして、それから僕は町を出て誰もいなさそうな場所まで移動した。

「ここなら誰も来ないかな?」
『はい、この辺りには人の気配を感じないので大丈夫ですよ。』
「それじゃあ、解呪しちゃいますか。」
『そうですね。ですがどうやって解呪するのですか?』
「え?それは簡単だよ。魔法陣で、解呪をするよ。」
『なるほど、分かりました。』

レイが今やろうとしてるのは魔法陣による解呪で、その他にも聖属性の魔法や魔道具、伝説の武器に神器と様々な方法で呪いは解呪出来るが今レイが出来るのは魔法陣による解呪のみだったので今回は魔法陣で解呪を行うと言う。

「それじゃあ、呪いの根源の部分を探すから少しじっとしててくれ。」

そして、僕はグリフォンに魔衣:察を使った。すると、グリフォンの首元に強い魔力を感じた。恐らくここがこの呪いの根源なんだろう。

「よし、もういいよ。次は少しくすぐったいかもしれないけど我慢しておくれ。」

そう言ってレイは呪いの根源に被せるようにして解呪の魔法陣を書き始めた。すると、いきなりグリフォンがもぞもぞしだした。

「ごめんよもう少しだけ我慢してくれ。もう描き終わるから。」

そして、魔法陣を書き終えてから解呪の詠唱を行う。

「邪悪なるものによる悪しき呪いを打ち払え【聖浄ホーリーパージ】」

すると、グリフォンの体が光り輝く。そして、その中から出てきたのは白い色をした立派な龍だった。

「ま、まさか竜だとは思わなかったな。」
『この度我が身の呪いを解いて頂き誠にありがとうございます。わたくしの名は"白天龍イヴェレイト"この世界におります四大龍が一体にございます。』
「え?・・・はあぁぁぁぁぁぁあ!?」

まさか王国の城で読んだ御伽話に出てくる伝説の龍だとは思わなかった。

「は!さっきはごめんなさい。竜だと言ってしまって。」
「いえ、大丈夫ですよ。私は気にしません他の龍達は分かりませんが。」

ある本には四大龍は誇り高き龍であり竜と間違えると怒り買うと読んだ事があるのでさっきのことを詫びたけど、どうやらこの龍はとても優しい龍みたいだ。

「そうですか。ところで色々聞きたいことがあるんですけど。」
「えぇ、構いません。それと、敬語は必要ありませんよ。あなたは、私の主ですから。」
「わかりまs、じゃなくて分かった。これでいいかな?ってさっきなんて言った!?」
「敬語はいらぬと申しました。」
「その次は?」
「私の主ですからと」
「何それ!?僕いつ君の主になったの!?」
「たった今主従契約を結ばせて頂きました!」
「なんでそんな簡単に出来るの?そして、なんでそんな嬉しそうなの?」
「我々四大龍程にもなるとそちらの意志に関係無くそういった事が可能なのです。」
「そんな理不尽な。ていうかなんでそんな契約を僕としたのか聞いてもいいかな?」
「喜んでお答えさせていただきます。理由はいくつかありますが最も大きな理由はこの身を侵していた呪いを解いたことです。この呪いは数百年前に魔王と対峙した時に受けた呪いで私の力を完全に封じられ解くことが出来ませんでした。知り合いにも頼みましたが、その時の代の魔王は類を見ないほどの強者でかなり強い呪いをかけられてしまって誰にも解呪出来なかったというのに、あなたはいとも簡単に解呪をした。その瞬間私は思いました。この方なら私の全てを捧げても構わないと。」
「長々と説明ありがとう。色々反論したかったけど、なんか今の説明聞いてたらその気が失せてきた。とりあえず君と結んだ主従契約を認めよう。その上で何か話したいことはあるかい?」
「そうですね……、それなら私をメイドとして傍に仕えさせてください。私こう見えてもそれなりにメイドの技術は持ち合わせているつもりですので。」
「何故メイドなのかもこの際置いておいてその姿でメイドをやるのか?」

今のイヴェレイトは御伽話に出てくる龍の姿そのものなのでその姿で町に行くと住民達がパニックになること間違いなしだ。

「そこはご安心を。」

そう言うと、イヴェレイトは突然光り輝き出した。

「な、何だ?人の姿になっていく?って……なあ!?」

すると次には淡い緑色の髪を靡かせた美女に変身したイヴェレイトが立っていた。

「このように私は人の姿に変身することができます。」
「分かったけど、なんで服着てないの!?」

イヴェレイトに背中を向けながらそう言ったレイはこの先の旅に一抹の不安を覚えていた。

コメント

  • SIno

    更新求む…

    0
  • SIno

    更新求む…

    0
  • やもりん

    鉄貨100枚で金貨1枚かなるほどなるほど…………………って銅貨と銀貨どこいった?って思いました

    0
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品