トランセンデンス・ストーリー

Meral

魔王編 第二話 自分の力

零はこの異世界オリュンピアに飛ばされた瞬間とてもでは言い表せないほどの綺麗な声に囁かれた。その声の主は分からなかったが、何を言っていたかは鮮明に覚えている。

『勇者足り得る力を開花させるのです。』

そんな言葉だった。だから、零は職業というものを知った瞬間自分は勇者なのか?と思ったが実際に勇者になったのは自分ではなく、なんと声が聞こえなかったはずの光だったのだ。そして更に自らの職業や他の皆から見えている自分の職業など、色々なものが一気に流れ込んできて零はかなりの混乱状態に陥っていた。

「どういう事なんだ?しかも僕の職業は勇者じゃなくて超越者・・・」
「何さっきからボソボソ言ってんだよ零、アニマさん達がこの国の王の元へ行きましょうって言ってるんだ。ほら、行くぞ。」
「あ、うん。」

そして、零はその主とやらの元へいく間に確認し損ねた自分のステータスを見る。

名前/レイ・アマツキ

Lv 1
職業/超越者(研究者)
種族/人間
筋力:45
俊敏:55
防御力:35
頭脳:700
魔力:20
闘力:40

《スキル》
超集中、超速読、超視力、超頭脳、ケルト語訳翻訳
鑑定

《魔法》
変幻自在、
 
《称号》
探求者

と、こんな感じだ。明らかに研究者寄りでしかも頭脳とやらだけが遥かに高い。それ以外はかなり低いが、
ちなみに光のステータスはこんな感じだった。

名前/キダケ・ヒカル

Lv 1
職業/勇者
種族/人間
筋力:400
俊敏:430
防御力:395
頭脳:305
魔力:510
闘力:375

《スキル》
正義の一撃、ケルト語翻訳

《魔法》
光魔法、聖魔法

と、自分と比べて遥かにスペックが違っていた。ステータスに関しては闘力というのがいわゆる総合戦闘力のようらしい。そして、一般人なら普通は50くらいだとかつまり、光はとんでもない強さを持っていた。それに比べて僕は、闘力が一般人よりも下なんてかなり落ち込んだ。でも頭脳の欄を見て、アニマさんが今居る世界最高の研究者でも頭脳は500なんだそう。戦闘系の職業じゃなくても僕はそれなりに凄いみたいだ。でも、光たちと比べてしまうととても情けなくなってしまった。

「はぁ、こんなんでどうやって力を使えってんだよ。」
「ん?何か言ったか?」
「いや、何でもない。」
「そうか…。おっと、どうやら着いたみたいだな。」

零達が信じられないくらい豪勢な廊下を歩いて辿りついたのは今まで見たどの部屋の扉よりも豪勢だった。

「これより先は陛下の御前でございます。皆様、静粛にお願い致します。」
「はい、分かりました。」

アニマがとても真剣な表情で告げたので皆に緊張が走った。

「それでは、行きますよ。」

そして、扉が開くと目の前に真っ直ぐに伸びた階段があり、その上に玉座が置いてあった。そして、その玉座に今まさに腰掛けているのが、

「あの方がアトランタ王国第72代目国王、"メイビス国王陛下"であらせられます。」
「あの人がこの国の国王陛下・・・。」

そこに居たのは、白みがかった灰色の髪に同色の髭を生やした。まさに王という言葉がしっくりくるような人だった。そして、その横にとても綺麗な金色の髪をした、かなり美人な女の子もいた。見たところ同い年位だろうか。

「よく来た、異世界の者よ。突然の事で色々と混乱しているかもしれないがアニマから事情は聞いただろう。お前達に魔王を退治してもらいたいのだ。」
「陛下その事に関してですが、この度見事に勇者が現れました。」
「っ!それは本当か!」
「はい、間違いありません、しかとこの目で拝見いたしました。光様、 陛下にそのカードを見せてください。」
「はい、分かりました・・・どうぞ。」
「どれどれ・・・!!本当に勇者ではないか!」
「っ!すごい。」

光が王様にレジデントカードを見せると王様はそれはもう喜んだ。そして隣にいた女の子も小さい声で驚いいるみたいだった。

「ありがとうございます。」
「うむ、よくぞここへ参られてくれた。勇者となったからには、責任が伴う。その責任しかと背負ってくれ。」
「はい、分かりました。」
「良い返事じゃ。」

その後、メイビスは他のみんなの職業も確認して唯一戦闘系ではない職業を持つ零を不思議に思ったが頭脳を見てこれは素晴らしいと言い、城の書物庫にある本や書物、文献などを自由に見ていいという許可をもらった。

「おっと、紹介するのが遅れてしまったな。この子はわしの娘のエリザベスというのじゃ。仲良くしてやってくれ。」
「エリザベスです。皆様どうぞお見知りおきを。」

綺麗な礼をして、零を除き男女問わず彼女の姿に見蕩れてしまっていた。エリザベス自身も自分の容姿にはそこそこの自信があり、全員を呆然させるほど上手く自己紹介が出来たと思っていたのだが零だけは見蕩れるどころかずっと考えごとをしているような雰囲気で、エリザベスには全く目を向けていなかった。そんな姿を見てエリザベスは少しムッとしたが、すぐに切り替え彼は自分の美しさに気づけていない愚か者なんだなと思った。

「この度我々の勝手な都合で、お呼び立てしてしまい誠に申し訳ありません。ですがこれは、我々の未来が掛かっているのです。どうか力を貸しては頂けないでしょうか?」

上目遣いでエリザベスは光たちに問う。一瞬たじろいだもののすぐに立て直して光はこう答える。

「もちろんです!エリザベスさんのため、この国のために精一杯頑張ります!」

手をギュッと握り光はそう答えた。

「ありがとうございます!皆様是非ご存分に!」

まるで、興奮した様子でエリザベスは言った。

「さてそれでは、今日は皆休んでくれ。明日から訓練を開始するから今日の所はしっかりと体を癒しておいてくれ。」

そう言い残しメイビスは王の間から、出ていった。

「それでは皆様、各々の部屋を用意してあります故ご案内いたします。」

アニマは零達を部屋へ案内して、明日の鍛錬は覚悟して下さいませと言って自らの部屋へ帰っていった。
________________________

「よし、書物庫へ行くか。」

零は、自分の部屋に入るも今日の事で頭が追いつかず寝ようにも寝れなかった。こんな時零はいつもありえない量の勉強をして気持ちを整理していた。それが全国テスト断トツの1位という結果を生み出したわけだが、零はこの時自分が異世界に来て普通の人間とは違う力を持ってしまってる事に気づいていなかった。

「ここが書物庫か・・・。」

教えられた道を進み辿りついたのは見上げるほどの量がある本棚だった。何やらかなり古そうな本棚があるみたいだが、そこは他と違い雰囲気が明らかに違っていた。あそこにも行ってもいいのかな?とそんな雰囲気をものともせず零はそんなことを考えていた。

「さて、まずはこの世界の今のことからだな。」

そう言って零はケルト語で書かれている本に手を伸ばして、その本を読み始めた。すると・・・

「・・・!なんだこれ!?」

零が本を読もうとした途端一瞬でそのページの内容が頭に入ってきた。

「もしかして、スキルのせいか?だとしたらかなり凄いな。少ない時間でここの本全部をを制覇できるぞ。」

そう言って零は周りの約17000冊の本を見渡した。

「よし、自分の力を試すのにもこれは丁度良かったみたいだしどんなもんかやってみるか。」

それから一時間後…。

「ふぅ…、だいぶ進んだな。」

あれから、一時間で零は3000冊の書物を読み終えていた。スキルの超集中と超速読、そして超頭脳などのおかげでありえない速さで零はこの世界の情勢を把握し始めていた。

「これは、想像以上だな。でも、この世界の大体のことは大方理解出来たな。ほかの本はケルト語じゃないみたいだけど既に他の言語も理解出来るようになったしな。後は古代語とかいうやつもあったな。あっ、そうか、こういう時にステータスを確認するのが良いのか。」

そして、零は自分のステータスを見る。

名前/レイ・アマツキ

Lv7
職業/超越者(研究者)
種族/人間
筋力:118
俊敏:170
防御力:156
頭脳:7465
魔力:164
闘力:98

《スキル》
NEWスキル:全言語翻訳


と、スキルが進化していた。そしてそれよりも驚いたのが、

「いくら何でも、頭脳が上がりすぎだろ。」

(そりゃ多少はこの世界のことについて調べたつもりだけど、ここまでとは思ってなかったな。)

ここで、レイは気付かなかった。自分が多少とは言っているもののいつも通りその量がおかしい事に。通常どんな研究者でも読める言語と読めない言語がある。
だが、レイは全言語を操りそして3000冊というとんでもない量の書物を読み終えたことで最早この世界のことについては全部知ったも同然なのだ。残っているのはこの世界のこれまでの歴史に関する書物のみで、異様な雰囲気の漂う場所には国王に許可を得てからにしようと思った。

「さて、もう少しやりますか。」

____________________________________________________
翌日。

「ふぁ、、徹夜しちゃったな。」

レイはあの後、日が昇るまでずっと書物庫に籠ったままだった。そして、17000冊のうち3000冊程を読み上げ既にアトランタでは誰よりも物知りになっていた。

「あっ!こんな所に!!」
「ん?」
「ん?じゃないよ零くん!さっき零くんの部屋に行ったら零くん部屋に居なくてずっと探してたんだよ。で、何してるの?」
「この世界について色々と情報収集をね。ざっと3000冊を読んだよ。」
「へぇ〜、そうなんだ。ってえぇ!3000冊って多すぎじゃない!?」
「まあね、そこら辺はどうやらステータスのおかげでみたいなんだけどな。」
「えっ?零くんってどんなスキルを持ってるの見せて見せて♪」

咲はそう言ってレイから、レジデントカードを見せてもらう。

「なっ」
「な?」
「なっ、なにこれーーーー!」
「?」
「?じゃなくて!このステータスおかしいでしょ!」
「まあ、それは分かるけど。」

咲があんなに驚くのも無理はない。なんせ、レイのステータスは更にパワーアップしたのだから、


名前/レイ・アマツキ

Lv18
職業/超越者(研究者)
種族/人間
筋力:183
俊敏:237
防御力:201
頭脳:563148
魔力:479
闘力:206

《スキル》
超集中、超速読、超視力、超頭脳、全言語翻訳、
超鑑定

《魔法》
変幻自在、古代魔法

《称号》
探求者、知能神、古代魔法の継承者

____________________________________________________

「これ、どうなってんの。」
「凄いよね。」
「他人事みたいに言ってるけど零くんの事だからね。でも、ほんとに凄いねこれ。ねぇ、零くん何やってたの?」
「ここにある書物を読んだだけ。」
「信じられないけど、とりあえず皆で朝御飯だから行こっか。」
「うん、わかったよ。」

そして、皆の元へいくと。

「遅いぞ零。」
「ごめんごめん、ちょっと調べ物しててさ。」
「っ!?おまっ、それどれくらいだ!」
「?3000冊だけど。」
「はぁ〜〜〜〜〜〜。」

崇は、それはもう長いため息をして、

「やっぱ、お前すげぇよ。」

とひとこと。崇はたった1度だけレイと勉強したことがありその時にレイの異常なまでの勉強量を目の当たりにしているため、こちらの世界に来てから最初にレイのステータスを見てその内容を少し理解していた崇はレイの異常さが更に増したと思っていたが、あそこまでとは全く思っていなかったのだ。

「3000冊ぅ!?」
「多すぎだろ!ちょっと盛ってんじゃねえのか?」
「嘘じゃないよ私さっき見てきたけど本が山のように積み重なってたよ。」
「さすが零だな。」
「まあ、僕も初めはびっくりしたけど慣れるとスラスラ読めるようになったよ。で、夢中になってたら3000冊も完読してたんだ。」
「信じられないわね。」

色んなリアクションが繰り広げられレイ達は朝食をとった。そして、

「皆、朝メシは食ったみたいだな。俺はアトランタ王国騎士団団長の"グラント"だ。よろしく頼む。」

と、いきなり出てきた鎧を身にまとったおじさんはそう言って、

「今日から、お前達の訓練を指導してやることになったから覚悟しとけよ。」

とてもいい笑顔でそう言った。

「あなたが俺達の指導を?」
「あぁ、その通りだ。」
「分かりました。これから宜しくお願いします。」
「よし、それじゃあ訓練場へ向かおうか。」
「わかりました。」
「あの、すいません。」
「ん、なんだ?」
「僕は戦闘系の職業ではないので訓練はパスさせてもらっても良いですか?」
「はぁ!?何言ってんだ。そんなの関係ねぇよ。鍛え方次第で強くなれるって。」
「いえ、そういう訳じゃなくて僕の力は戦闘では発揮されないので折角なら自分が出来ることしっかりとやりたいんです。」
「なるほど、いい心意気だな。でも訓練には時々やってもらうからな。」
「了解です。」
「よし、じゃあ残りのやつは俺について来い。」

そして、グラントに連れられレイ以外の全員は訓練場へと向かった。

「とりあえずは国王様にあの不気味な場所に入っていいか聞くとするかな。」

レイはそう言って国王の執務室に向かった。

「ここかな 。」とレイが来たのは両開きの扉の部屋の前だ。扉の両端には兵士が1人ずついる。

「すいません、国王陛下に話があるのですが合わせて頂いても宜しいでしょうか。」
「何者だ貴様は!ここは王城だぞ不法侵入とはいい度胸じゃないか。」
「いえ、そうではなく私はつい先日勇者召喚の儀にて召喚された異世界人の1人です。」
「証拠はあるのか?」
「王に会わせて頂ければ宜しいかと」
「あれ?あなたは確か…レイ様?でしたっけ?」

そう言って現れたのは、エリザベスだった。
「っ!エリザベス様何故このような所に。」
「父上に少し用があってね。それよりもこの状況は?」
「はっ、ただ今怪しげな侵入者が居ましたので尋問をしている所でした。」
「怪しげな侵入者ってもしかして彼のこと?」
「その通りにございます。」
「何を言ってるの。彼は先日の勇者召喚の儀で呼ばれた異世界人の1人よ。」
「誠で御座いますか!?」
「ええ、もちろんよ。」
「それは失礼しました。ささどうぞお通り下さい。」
「ありがとうございます。」
「ご苦労様。」


そう言って、レイとエリザベスは執務室へと入って行った。そして、そこに居たのはもちろんこの国の国王であるメイビス国王陛下だった。

「ん?どうしたんだエリザベスこんな所に。あと、もう1人は確か研究者の...」
「レイ・アマツキです。」
「そうだったな。して、何用かな?」
「はい、昨日教えて頂いた書物庫に不気味なと言うかなんというか雰囲気が違う場所があったのですがあそこの書物も読んでも宜しいのでしょうか?」
「あぁ、あそこか。いや別に読めるのなら読んでも構わんが...」
「読めるのなら?」
「うむ、その通りあそこにある書物は全てこの大陸の言語で書かれておらん。古代語や他の大陸のもの、竜の言語で書かれたものもある。」
「なるほど、だからあんな雰囲気だったのか。」
「分かっただろう。あそこにある本は全て読めないのだ今まで数多の研究者達が解読に挑んだが1人も成功しなかった。全く違う言語を解読するのはそれだけ難しいということだよ。だから、いくら君でもかなり難しいと思うんだ。別に読んではいけない訳では無いけどまだここの書物もそんなに読めていないだろう?もう少しココについて調べるといい。」
「あぁ、それなら大丈夫です。昨日で3000冊読んで今のこの世界の情勢は大体の把握したんで。」
「そうか、もう3000冊も読んだのか・・・・・って、3000!!?」
「えぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」

メイビスもエリザベスもこの短時間でその量よ完読したというレイに驚きを隠せなかった。

「あはは…。」
「それは本当か?」
「ええ、僕のステータスを見て頂ければ。」
「どれどれ...な、なんだこれは!昨日見たのとは大違いじゃないか!!」
「お父様私にも見せて下さい。・・・なに・・これ。このスキルの数は、信じられない。」
「スキルの数ですか?」
「えぇ、今現在確認されている最大取得スキル数は4つなんです。でも、6つなんて。」
「うむ、それに魔法もどうなっているのだ。"変幻自在"と"古代魔法"2つとも初めて見る魔法だ。」
「まあ、変幻自在はともかく古代魔法に関してはその名の通り昔あった魔法なのでしょう。ですが、古代語を読める者がいなかったためにこの魔法が知られていなかったかと思われます。」
「そういえば、3000冊という量に驚いて気付かなかったがスキルに全言語理解とあるが、まさか…。」
「そのまさかですよ。僕はどんな文字でも解読できます。」
「そんな馬鹿な!」
「今まで数々の者達が何年もかけて挑んだこの解読をたった一晩で終わらせてしまうなんて。どういうこと。」
「まあ、魔法とスキルの所しかよく見てないから気付いていないのかもしれませんが、僕の頭脳を見て頂ければ解決するかと。」
「「頭脳?」」
「はい。」
「「!!!!!?」」
「なんだこの数値は!?」
「500000なんて数値初めて見ましたわ。」
「まさかこれ程とは、どうやら召喚の儀にて我々が手に入れたのは勇者だけでなく天才もいたようだ。」
 
と、レイは自分の力の異常さに少し気付いたみたいだった。

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く