デスゲーム

矢崎未峻

10分

 白い空間からみんなが消えてから、カウンターが現れた。
 もちろん表示されている時間は10分。
 すでに10秒ほど経過しているが、俺も奈々も黙ったままだ。
 だが、これ以上無駄にするわけにはいかない。

「奈々」

「なに?」

「怒ってるか?」

「怒ってないと思う?」

 まあそりゃそうか。怒らない理由がないもんな。

「だよな。でもさ、俺は奈々に死んでほしく無いんだよ」

「私だって祐介に死んでほしくない!私は、祐介と一緒に生きたいよ・・・」

「俺も奈々と生きたいよ。だけどさ、この先もきっとデスゲームは続く。これまではお互い死なずに済んだけど、次は分からない。俺は、そんな危ないところに奈々を置いておけない。だから、デスゲームから解放させた」

 後7分。もう時間がない。

「でも、デスゲームから解放されても、祐介が居なきゃ意味ない。祐介が居ない世界なんて、生きてる意味ないよ」

「大丈夫。現実に戻ったら、奈々は俺のことを忘れてる筈だから」

 これが、第3ゲームで指摘されないように隠し続けた報酬の最後の効果。
 3つ目を使った後、使い手は死ぬ。その記憶があれば、使われた側が罪悪感から死ぬかもしれない。それを防ぐための効果らしい。
 全く、ありがたい。

「待って、待ってよ・・・。私、祐介の事、忘れるの?忘れちゃうの?」

「そうだよ。あれが嘘じゃなければ、忘れる」

「嫌。絶対に嫌!」

「嫌って言われてもな〜。そうだ、じゃあこうしよう・・・」

 ここまで来て自分の願望を提案にするなんてな。
 まあ多分、無理だろうけどさ。
 後3分か。

「うん、わかった」

「よし。頑張れ、お前ならできる」

「うん!」

「・・・奈々」

「なに?」

 言って良いか、迷う。そして、どうせ忘れるからと、覚悟を決めた。

「好きだよ。中学の時からずっと、奈々が好きだ。大好きだ」

「私も、私も裕介が好き。大好き!」

 カウントが0になった。
 言うべきことは言った。言いたい事も言った。もう、やり残したことはない。
 あ〜でも、やっぱ生きたかったな〜。

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