デスゲーム

矢崎未峻

やるしかない

 突如始まった第1ゲーム。その内容に驚きや戸惑いが隠せず呆然としていると、周りが騒がしくなってきた。
 叫び声を上げる者、頭を抱える者、お前がやれと無責任なことを言っている者、そして、泣いている者。だが、最も多いのはただただ呆然としている者だ。
 俺はどれにあてはまるだろう。最後のかな?まぁ、今はどうでもいいか。

「さて、どうしよう・・・」

 殺すにしても素手でやれと?ん?ポケットに違和感が・・・ナイフ。こんな物、いつ?いや、それは後で考えよう。
 これで殺せってことか。いや、あくまで手段を与えたというだけだな。
 かと言って、殺せるかと聞かれれば、どうかな?無理、かな。うん。今は無理。
 他になんかできることってないか?話し合いとか・・・は、できそうにないか。となると、他の奴は頼れないから

「自分で誰かを殺して終わらせるしかない・・・のか?」

 一瞬、隣にいる克己がこっちを見たので焦ったが、ちゃんと聞き取れはしなかったわうでスルーされた。
 良かった。聞かれたら克己は俺がやるって言い出すに決まってるからな。
 そうだ、やっぱり他の奴、もとい友達とか、知り合いに罪を背負わせたくない。俺が殺ろう。
 さて、そうと決まれば誰を殺す?誰を殺しても罪悪感は残るだろうな。今一番、大事な条件は、殺す時に躊躇わないやつを探すこと。そんなやついるわけ・・・ないことも、ないか。
 ターゲットが決まった。現状まだ騒いでいるやつばかりだ。さっきと同じ状況。ありがたい。
 ターゲットを発見し、ゆっくり近づいていく。怪しまれないように、狂ったフリをしておく。ゆらゆら近づき、ほぼ真後ろに来た。
 やばい、緊張する。
 鼓動が速い。息も荒くなってきた。
 落ち着け、落ち着け、静まれ!
 ポケットからナイフを取り出し、鞘から抜く。
 手が震えている。手汗も半端ない。
 でも、ここまできたら、やるしかない!
 覚悟が決まった途端、震えが止まる。息は荒いまま、鼓動も速い。震えだけが止まった。
 いける。最後の一歩を踏み出し、ターゲットの、早見 駿ののど元にナイフを当て

「ごめんな、死んでくれ」

という言葉と共に、一気にのどを掻き切った。
 血が溢れ出す。早見が振り向いたので、俺に血がかかる。避けることなく、素直に浴びた。
 何かを言おうとしたのか、口が動いたがしゃべれないらしい。恨みの目を俺に向けたまま、崩れ落ちた。ドサという音とともに、早見は死んだ。
 沈黙・・・悲鳴。そして、俺から距離をとる。一連の予想していた動作を見事にやってのけた連中に、俺は顔を合わせる勇気がなくて、下を向き顔を隠した。

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