ArkRoyalを吸う君が好き
1箱目-2本目-
あれから2週間が経った7月25日。その間、僕は毎日のように海咲さんの家に料理を作りにお邪魔していた。彼女が食べたがるものを毎回作り、子どものようにはしゃぎながら食べる姿を見るのがなんとも幸せだ。海咲さんが食べ終わると洗い物を済ませて、日付が変わる前には帰っていたのだが、今日はなんと泊まりになってしまった。
外泊の用意を片手に緊張しながら海咲さんの家のインターホンを鳴らす。
「いらっしゃーい!よく来た!ささっ、入り給え〜!」
と、有名人が来たかのように出迎えられ中へと連れられる。
「いやー、今回は泊まりでって急に言ってごめんね〜。明日予定無いし折角だからゆっくりして帰ってもらおうかなー?って思ってね。家近いけど。」
海咲さんはベッドにあぐらをかき左右に揺れながら僕に話しかける。
「いえ、こちらもお招き頂きありがとうございます。お、女の人の家に泊まるの初めてで…あっ、1回泊まってるか。」
「そーんな緊張するこたぁねぇでおやっさんよぉ〜!まぁまぁ、まだご飯の時間は早いからこっち来て一緒に話そうではないか!」
海咲さんはベッドをバフバフと叩き僕を呼び寄せた。
荷物を床に置き、緊張しながら彼女の横に腰を下ろす。その瞬間、、、
「スキありー!」
海咲さんが僕に向かって飛びかかってきた。
「っ……!///」
下腹部に柔らかな感触があり、長く綺麗な髪はいい匂いを放ちながら揺れ、海咲さんの顔はわずか数センチの近さにあった。
(やばい!心音聴こえてないだろうか!近い!可愛い!うぅー…。)
「ねぇ…。」
生暖かな吐息混じりの声が耳をくすぐる。体に軽い電流が走ったかのようにゾワッとした。海咲さんはそこから動く様子はなく、また生暖かい声で
「裕司くん…。」
とからかうかように続け様に囁いた。
自分の心音が海咲さんに聴こえないよう願いながら必死で頭回転させ、これから起こることを予測した。が、いやらしいことしか思いつかなくてドンドンと身体中の温度が上がっていく。そんな僕の心情を知らない海咲さんはお構い無しに、
「き、今日は…。」
と耳元で呼吸をしながら囁き続ける。
「わ、私の…。」
く、来るか!と思ったその瞬間、
「お母さんの味を再現してほしいんだ!」
といきなりいつもの喋り方に戻った。
「あのね、君の料理を食べてると実家が恋しくて恋しくて仕方が無いんだよ!」
「と、言われましてもそれは流石に不可能かと…。」
「いいや!君ならできる!なんたって私が見込んだ料理人だ!君なら完全再現してくれると信じてるよ!」
「それなら、実家にお帰りになられた方が…。」
「実家は遠いし、お金がかかる!私は盆と正月しか帰る気がない!」
はぁ。と、ため息をつきたい。さっきのドキドキを返して欲しい。
身体の熱も下がったところで2人で買出しに近くのスーパーへ出掛けた。海咲さんは楽しみにしているのか鼻歌を歌いながら、僕の腕を掴んでスキップ混じりで歩く。たわわな胸がまた僕の身体を熱くする。
スーパーに着いた。今日の献立は肉じゃがをご所望とのことだ。実家の肉じゃがは白滝、人参、玉ねぎだけの少し色合いに偏りがあるものらしい。
材料を買い終え海咲さんの家へと戻る。早速手を洗い調理を開始する。
「うちの肉じゃがはね、ちょっと甘めなんだー。だから、砂糖少し多めに入れてね!」
海咲さんの要望を真横からダイレクトに受けながら調理を勧め、出来上がった。
「出来ましたよ海咲さん。」
盛り付けた皿を持って居間に行くと、エサを待ちわびていた犬のように駆け寄って、立ったまま食わんばかりの勢いで肉じゃがの臭いを肺いっぱいに入れた。
「実家のと臭いは同じ!さっすが裕司くん〜♡いいお婿になるなぁこりゃあ。あーあ、欲しいなー。」
チラチラとこちらを見ながら皿を机まで運んでくれた。
2人向かい合って座り、いざ実食。先陣はもちろん海咲さん。
「ど、どうですか?」
恐る恐る聞いた。暫く目を瞑りながら噛み続け、喉を通った音と同時に深く息を吸いこみ、
「うまい!こりゃオカンだ!ママだ!あんたが母ちゃんだよ!」
と困るしかない褒め言葉をマシンガンのように浴びせてきた。悪い気はしない。
「君は天才料理人だ!そういや専門学生って言ってたけど料理の学校なの?」
「いえ、映像の学校です。」
「あー、あの駅前の学校だよね。」
「そうですそうです。」
「なのに何でこんなに料理がうまいんだい?」
そろそろ聞かれる頃だろうと思って心構えはしていた。いざ話すとなるとすごく緊張するし、声が小さくなってしまう。
「ん?どした?話せないなら無理に話さなくてもいいよ?」
話せないわけじゃない。話して嫌われないかが怖かった。
ーそれは僕のたった1つの思い出だった。
外泊の用意を片手に緊張しながら海咲さんの家のインターホンを鳴らす。
「いらっしゃーい!よく来た!ささっ、入り給え〜!」
と、有名人が来たかのように出迎えられ中へと連れられる。
「いやー、今回は泊まりでって急に言ってごめんね〜。明日予定無いし折角だからゆっくりして帰ってもらおうかなー?って思ってね。家近いけど。」
海咲さんはベッドにあぐらをかき左右に揺れながら僕に話しかける。
「いえ、こちらもお招き頂きありがとうございます。お、女の人の家に泊まるの初めてで…あっ、1回泊まってるか。」
「そーんな緊張するこたぁねぇでおやっさんよぉ〜!まぁまぁ、まだご飯の時間は早いからこっち来て一緒に話そうではないか!」
海咲さんはベッドをバフバフと叩き僕を呼び寄せた。
荷物を床に置き、緊張しながら彼女の横に腰を下ろす。その瞬間、、、
「スキありー!」
海咲さんが僕に向かって飛びかかってきた。
「っ……!///」
下腹部に柔らかな感触があり、長く綺麗な髪はいい匂いを放ちながら揺れ、海咲さんの顔はわずか数センチの近さにあった。
(やばい!心音聴こえてないだろうか!近い!可愛い!うぅー…。)
「ねぇ…。」
生暖かな吐息混じりの声が耳をくすぐる。体に軽い電流が走ったかのようにゾワッとした。海咲さんはそこから動く様子はなく、また生暖かい声で
「裕司くん…。」
とからかうかように続け様に囁いた。
自分の心音が海咲さんに聴こえないよう願いながら必死で頭回転させ、これから起こることを予測した。が、いやらしいことしか思いつかなくてドンドンと身体中の温度が上がっていく。そんな僕の心情を知らない海咲さんはお構い無しに、
「き、今日は…。」
と耳元で呼吸をしながら囁き続ける。
「わ、私の…。」
く、来るか!と思ったその瞬間、
「お母さんの味を再現してほしいんだ!」
といきなりいつもの喋り方に戻った。
「あのね、君の料理を食べてると実家が恋しくて恋しくて仕方が無いんだよ!」
「と、言われましてもそれは流石に不可能かと…。」
「いいや!君ならできる!なんたって私が見込んだ料理人だ!君なら完全再現してくれると信じてるよ!」
「それなら、実家にお帰りになられた方が…。」
「実家は遠いし、お金がかかる!私は盆と正月しか帰る気がない!」
はぁ。と、ため息をつきたい。さっきのドキドキを返して欲しい。
身体の熱も下がったところで2人で買出しに近くのスーパーへ出掛けた。海咲さんは楽しみにしているのか鼻歌を歌いながら、僕の腕を掴んでスキップ混じりで歩く。たわわな胸がまた僕の身体を熱くする。
スーパーに着いた。今日の献立は肉じゃがをご所望とのことだ。実家の肉じゃがは白滝、人参、玉ねぎだけの少し色合いに偏りがあるものらしい。
材料を買い終え海咲さんの家へと戻る。早速手を洗い調理を開始する。
「うちの肉じゃがはね、ちょっと甘めなんだー。だから、砂糖少し多めに入れてね!」
海咲さんの要望を真横からダイレクトに受けながら調理を勧め、出来上がった。
「出来ましたよ海咲さん。」
盛り付けた皿を持って居間に行くと、エサを待ちわびていた犬のように駆け寄って、立ったまま食わんばかりの勢いで肉じゃがの臭いを肺いっぱいに入れた。
「実家のと臭いは同じ!さっすが裕司くん〜♡いいお婿になるなぁこりゃあ。あーあ、欲しいなー。」
チラチラとこちらを見ながら皿を机まで運んでくれた。
2人向かい合って座り、いざ実食。先陣はもちろん海咲さん。
「ど、どうですか?」
恐る恐る聞いた。暫く目を瞑りながら噛み続け、喉を通った音と同時に深く息を吸いこみ、
「うまい!こりゃオカンだ!ママだ!あんたが母ちゃんだよ!」
と困るしかない褒め言葉をマシンガンのように浴びせてきた。悪い気はしない。
「君は天才料理人だ!そういや専門学生って言ってたけど料理の学校なの?」
「いえ、映像の学校です。」
「あー、あの駅前の学校だよね。」
「そうですそうです。」
「なのに何でこんなに料理がうまいんだい?」
そろそろ聞かれる頃だろうと思って心構えはしていた。いざ話すとなるとすごく緊張するし、声が小さくなってしまう。
「ん?どした?話せないなら無理に話さなくてもいいよ?」
話せないわけじゃない。話して嫌われないかが怖かった。
ーそれは僕のたった1つの思い出だった。
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