話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

「最強」に育てられたせいで、勇者より強くなってしまいました。

烏賊月静

第五章 第百八十五話 成果

 翌朝、ヴォルムたちは早速、話し合いで決めた目的地に向かって歩き出していた。夜のうちに話したことは大まかに二つ。ヴォルムの手に入れた能力がどんなものだったのかということ。それから、どこへ行き、何をして、最終的な目的である復讐を果たすのかということだ。
 能力については実演をするには遅い時間だったため言葉だけでの説明になったが、ロンから生命エネルギーを受け取ったおかげで色々なことができるようになっていた。まず、生命エネルギーを感知することができるようになった。それは目の前にいるリフィルの生命エネルギーもそうだし、森の中にいる動物、虫、植物など、生命エネルギーを持つ者全てが対象で、大体の位置を掴めるようになった。それから、その量についてもある程度把握できるようになったみたいで、例えば、小さな虫とリフィルでは内包する生命エネルギーが違うなど、ロンの言っていたことが実体験として分かるようになった。
 それだけではなく、戦闘時に使っていたように身体強化や回復手段としても使えること、それから、能力を授かる話についてもちゃんと使い方をいつの間にか知っていたことを伝えた。
 その能力は、いわゆるコピー。能力を発動しながら見た魔術などの超常的な力を生命エネルギーを使って再現できるというものだ。難点なのはコピーするときも再現するときも能力を発動しなければならないことで、それだけエネルギーの消費が激しい。コピーするだけでその術自体を練習しているわけではないから、単純にコピー元よりもコストパフォーマンスが悪いのだ。それから身体的な動きをトレースできるわけではないことを考えると、今すぐに使える強い能力とは言い難い。
 だが、ヴォルムはこの能力の有用性に気付いていた。この能力の一番のミソはコピーした力を未来永劫いつでも再現できること。つまり、機会がある度に使っていけば、いずれは多くの力を再現できるようになる。魔術なんかはいちいち難しい詠唱をするため、一人でいくつも覚えておくことは難しい。それこそ、研究をしているような人間ならたくさん覚えているのかもしれないが、実践の中で使うとなったら、使う魔術はいくらか絞られてくるだろう。そんな環境の中で、圧倒的な数の魔術を行使することができる。あるいは、魔術以外の力を使うことができる。それは大きなアドバンテージだ。状況に応じて、その場その場で最適な力を行使することができるのだから。

「では、私の使える魔術をコピーしておきましょうか」

 この話を聞いたリフィルから、真っ先にこんな提案をされた。確かにコピーさせてもらえたら良いなとは思っていたが、まさか向こうから差し出されるとは。

「良いのか? 努力して手に入れた力なんだろう? これからいろんなところでコピーさせてもらうつもりなのに何を言っているのかと思うかもしれないが、基本的にコピーなんてされたくないもののはずだ。一緒に行動する仲間なんだから、嫌なら嫌と言って良いんだぞ」

 我慢していないかと心配になり確認を取る。が、リフィルは笑顔で首を横に振った。

「嫌だなんて思っていませんよ。仲間の出来ることが増える。それは喜ばしいことじゃないですか。それに、今後、私が渋ったせいで直面した困難を切り抜けられないなんてことがあるかもしれません。そのときに、私は絶対に後悔しますから、どうぞ、コピーしてください」

 つくづく、できた人間だ。そう思いながら、ヴォルムは頷いた。だが、リフィルの魔術は光の出るものがほとんどだ。こんな夜に目立つ魔術を使うと魔物や人間が寄ってくる可能性がある。そんなにすぐ必要になる者でもないだろうということで、機会があればコピーしておくということになった。具体的には、戦闘訓練を近い内にまた行うつもりで、そこでコピーするという話になった。
 ヴォルムの手に入れた力についてはこんなところで、最後に維持についての話をした。維持、つまりは他所から生命エネルギーを持ってこなければならないわけだが、ゆく先々で悪人から殺さない程度に奪う、あるいは道中の植物なんかからチマチマと吸収することで維持をしてくということになった。恐らく増えることはないだろうということで、エネルギーを使うタイミングについても、コピーは別として、他の要素は余程のことがない限りは使わないようにして温存することになった。ヴォルムとしては好き勝手出来なくなってしまう方針だが、リフィルと共に行動する以上、倫理観は大事にしておく必要があることをなんとなく感じていた。それに照らし合わせるなら、この決まりは守っておいた方が良い。それに、好き勝手したせいで収支がマイナスになったとき、困るのはヴォルムだ。普段から節約しておく意識を持つという意味でも、とりあえずはこの方針で行くことに文句はない、どころか賛成であった。

「それで、明日からはどこに向かうんでしょうか」

 村を追い出されて、少し早い出発となってしまったヴォルムたち。本来なら屋根のある場所で少し休んでからゆっくりと行き先を決めるつもりだったのだが、状況が変わった今、余り悠長にはしていられない。
 そこで、ヴォルムはいくつか考えていた道をすべて提示した。その上でリフィルの意見をうかがうのだが、今までのようにただ選んでもらうだけでなく、もっとこうした方が良いとか、こんなのはどうかとか、ちゃんと口出しをしてもらうつもりだ。
 提示したのは、言ってしまえば安定を取るか、早さを取るか、みたいなものだった。神が後ろにいることは分かったが、それを倒すにはどうしたら良いのかは全く分からない。それでも猪突猛進に挑んでみるのか、あるいは、時間をかけて調べるのが先なのか。そういった差があった。

「そうですねぇ……私は、安定を取った方が良いと思います。今までは時間がなかったから急いで――焦っていましたが、時間についての問題が解決した今、未知の相手に策もなく挑むのは無謀です。大きな町まで行って、そこで生活の基盤を整えて、じっくり調べものをする。あるいは、共に戦ってくれる仲間を増やしたり、自分の力を高めたり、準備を徹底的に行うべきだと思います」

 ここに来るまで、確かに焦りのようなものを強く感じていた。それに背中を押されるままに走ってきたが、ここらで一旦ペースを落として、視野を広く持った方が良いかもしれない。ヴォルムはその意見を取り入れて、ここから少し遠くはなるが、大きく安定して稼げそうな町へと目的地を定めるのであった。

「「最強」に育てられたせいで、勇者より強くなってしまいました。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く