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「最強」に育てられたせいで、勇者より強くなってしまいました。

烏賊月静

第五章 第百七十八話 確認

 そもそも、危険を冒してまでこうして村に戻ってきたのは村がどうなっているのか、また、村人が無事であるかを確かめたいというリフィルの意見を聞いたからであった。ロン――「鬼」と対峙した時点で警戒を優先して頭の片隅に追いやられ、会話を始めてからはいよいよ思い出すことのなかった目的だが、リフィルにとっては未だにここに来た一番の理由である。あくまで「当初の目的」であって状況が変わった今、そこにこだわる必要はないのかもしれないが、ヴォルムからしても村の状況や村人の安否は気になるところだった。もしかすると、自分がこの村を訪れたことが原因かもしれないのだから。

「村の人……って、この村のことだよな? 建物はいくつか壊しちまったが、村人には何もしてないぜ。全員無事なはずだ」

 全員無事。その言葉を聞いて、自分を探して殺戮が行われた可能性を考えていたヴォルムはとりあえず安堵した。しかし、村の状態を見る限り、ロンの言葉をそのまま信じてしまえる状況ではない。村にいた老人たちは一向に姿を現さないし、そもそも、村から討伐隊が向かっていたはずなのに「鬼」がここにいるということは、討伐隊を壊滅させたということではないのか。リフィルも同じ考えのようで、懐疑的なまなざしをロンに向けていた。

「……っと、その目は信じてないな? まぁ、ここで俺がいくら話しても信憑性なんてもんはないんだろうけど、ちゃんと事実だぜ。そうだな、村に残ってた老人に会えれば信じてもらえるか?」

 疑いの目を受けて、ロンはそう言いながら踵を返して歩き出した。ついて来いということだろうか。ヴォルムはリフィルと目を見合わせて、その後に続いた。
 向かった先は盗み聞きをした、老人が集まっていた建物だった。村の奥の方にあるため入り口付近でロンに出会ってその場に釘付けにされていたヴォルムたちには見えなかったが、全ての建物を壊したというわけではないらしい。建物が無事ということは、恐らく中にいる老人も無事だろう。念のため中で殺されていないかの確認はしたいが。

「俺が村に着いた時に残ってたのは全部この家の中だ。そっから出入りもないし、全員生きてるはずだぜ。確認したいなら引きずり出すか?」
「いや、いい。無事なのは確認できた」

 目視で確認したわけではないが、中から薄っすらと声が聞こえる。詳しい内容が聞こえるような大きさではないが、もう出て大丈夫か、討伐隊はどうした、みたいなことを話している。恐れているはずの「鬼」がまだ村の中――近くにいるかもしれないのにおしゃべりをしていられるなんて案外、余裕なのかもしれない。
 そんなことを考えながらリフィルを見ると、彼女も家の中から声がすることに気付いたようで、安心したような表情を浮かべていた。しかし、村の住人はこれで全てではない。今のところ、討伐隊として村の外へ出ていた人たちが一人も帰ってきていないのである。

「討伐隊はどうしたんだ?」
「あー、あの定期的に攻撃してくるやつ? 今回は急いでたしスルーしてきちゃったからその後どうなったかまでは知らないな……。気になるならいずれ帰ってくると思うから、ここで待ってると良いよ。それより、話の続きをしよう。この力のこと、知りたいだろう?」

 その提案にリフィルは少し不服そうではあったが、老人がロンの言葉通り無事だったこともあって、とりあえずはその言い分を信じることにしたようだ。帰ってくるのを待つしかないのなら、ここで力について聞いておく方が時間の効率的には良い。というか、探しに行けないとなるとやることがそれくらいしかない。三人の意見が本意であるかはさておき合致したところで、勝手ながら倒壊していない家を一つ使わせてもらうことにした。

「改めて、俺はロンだ。よろしく」
「ヴォルムだ」
「リフィルです」

 ロンが床にドカっと座りながら改めて名前を確認する。ヴォルムたちもそれに合わせて座りながら応じた。

「ここまで来て世間話で前置きなんていらないよな。早速、本題に入ろう。まずは、基礎的なところと言うか、仕組みの部分から。そもそも、こうして生きている生物はそれだけで莫大なエネルギーを内包している。何もしなくても存在自体が持つエネルギー、それが命の力や魂の力と呼ばれているものだ。その莫大さは言葉じゃちょっと言い表しづらいんだが、そこの嬢ちゃんの魔術一回の千倍とか万倍のエネルギーがあってようやく一年分の生命エネルギーになると思ってくれて良い。いや、これでも分かりづらいか。まぁ、具体的な数値なんて重要じゃないから漠然と大きなイメージを持ってもらえれば良いよ。で、お察しの通り、普段はこのエネルギーを消費して生命活動を維持しているってわけだ。逆に言うと生命維持にはこれだけのエネルギーが必要ってことだな」

 ロンが感慨深そうに、頷きながらそう語る。いかに生命エネルギーが大きいかという話はそんなに重要なのだろうか。

「特別なことがなければ、寿命を迎えると共に空になるように消費され続けているわけだが、エネルギーを持っていることには変わりない。何かの拍子にそれが外へ出ることがたまにある。それが俺やヴォルムみたいな人間だな。ここに至るには二通りの道があって、一つは魔術を使ううちに体内のエネルギーをよく認識できるようになり、自らの生命エネルギーに手を付けてしまうというもの。もしもの時の引き出しが増える感じだな。そしてもう一つが死に瀕するなど、強く生を願ったり、あるいは強く死を拒んだりしたときに、本来の生命維持機構が働いて寿命を削ってでもその場を切り抜ける力を得るというものだ。コントロールできるかはその人次第だからそのまま上手く扱えずに死んでしまうこともあるみたいだが、ヴォルムは上手くやったようだな」

 言われてみると、確かにあの時は守るために何が何でも敵を排除しなければならない場面だった。そのためには当然、死は許されなかったのだが、正直なところ必死になっていたためよく覚えていない。ただ、ロンがそう言うのだからそうだったんだろうな、という気持ちになった。
 そこで、ヴォルムはあることに気付いてしまった。力を使えるようになったきっかけなんかよりよっぽど重要な事実――ロンが話好きで、割と時間のかかる話し方をする人間であるということに。

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