乙女ゲームの攻略対象キャラは悪役令嬢の味方をする。
9.ベアトリーチェの驚愕
初めに行ったのは、ジュリエットの味方を完全になくすためにセバスチャンへ手紙を送ったことだ。てきぱき済ませるのが好きな彼にぴったりの文章で。
貴方の実力が知りたいという明確な意志を持ったうえでのメッセージ。捉え方を変えればどうとでも捉えられるのに、きっちり隙の無い文章。
そう、完璧である。セバスチャンの下調べにディルティアを送り込んでいる。
駆けつけたアティルに手紙を渡すと、私は机の上にて王城の対面にある公爵邸を睨んだ。
「すぐに苦痛とは何か味わわせてやるわ……」
どうして彼女に魔術の才能があるの。どうして彼女に加護があるの。彼女の全てが許せない、彼女の持っている物全てを奪いたい。
誰にも否定させる気はない。だって、私を否定できる人なんていないんだから。
机に手を叩きつけた。国はお世辞にも活気に満ち溢れているとは言えない。魔術大国と緊迫した雰囲気が漂っているのも理由のひとつ。
でも、戦争は起こらない。私に不利なことは、何ひとつ起こってはならない。
火を灯してみる。ゆるぎない、強く燃える火は私の魔力操作が完璧なことを事実的に物語っている。英才教育ではあるのだが、公爵のものとは劣るだろう。
それでも私は独学で全てを学んだ。魔術の原理も、魔力の操作も、私の血を吐く努力の結晶を、どうしてジュリエットに奪われなくてはならないの。
全部私のもの。努力は裏切らないのなら、私の言う通りになるべきなの。
私はまた一週間かけて侍女や執事、メイド達を私のものにした。そして、片っ端から私の物に出来る者達へ潜入させ、また一週間。
ディルティアが戻って来た。その表情はやけに歪んでいた。どうせ彼が私の事を考え過ぎて吐き気がしていたんでしょう、そう聞こうと思った。
でも、セバスチャンは私の事をそんなに知らない。私はそんなに魅力的なのかしら?
えぇそうね。それもそうね。私は魅力的なの。だからみんな私の物になるのね。
「―――話を聞いてくれそうにはありません」
「は?」
「恐らくはジュリエット嬢に先に手を回されているのでしょうか、ベアトリーチェ様がお伝えした通りの言葉をお伝えしたのですが、拒否されてしまいまして」
「どういうこと? 何なの、どうして私の言葉を拒否するのよ!」
私はセバスチャンをお茶会に招待するように言っておいたはずだ。仲を深めるためにという正当な理由もつけて。
それなのに、相当な身分もないただの執事が伯爵令嬢の誘いを拒否……?
あり得ない。あり得ないわ。泣いて喜ぶのならまだしも、拒否なんてありえないわ。そうね、きっと恥ずかしがってるの。
私はディルティアを下がらせ、日記に結果を記し、私の見解も記す。
次にアティルが入って来たが、手紙の返信はなくディルティアによると破り捨てられていたらしい、という報告が私の耳を疑わせた。
破り捨てた? 伯爵令嬢の手紙を?
皿に聞けば、セバスチャンはジュリエットに掛かりきりなのだという。バカな、優秀な魔力を見るなら私の方が上なはずなのに……!
次!
次は私がアルトに送り込んだ侍女。彼にも私が彼に会いたいと言っていると正当な理由もつけて侍女を送り込んだのだが―――。
丁重に断られたらしい。「僕はジュリエットに誘われている」と。
嘘だ、ウソに決まっている。私よりあのジュリエットを優先するなんて!
あり得ない、ありえないのよ。この現象はないはず。こんなのは―――!
完全に取り乱してしまった私。次に入って来た執事はアステリアに潜入させた者だった。こちらも研究という理由で断られている。
それでも最近ジュリエットと仲がいいという噂が流れているので、彼女のために断ったというのは考えればすぐに分かった。
セバスチャン、アルト、アステリア。この三人は攻略不可能だ。日記に記す。
次はディエルト。彼は私の誘いを鼻で笑ったらしい。「私はジュリエット嬢の護衛任務がある」と丁重に断りもせずストレートに断った。
しかも鼻で笑う。
―――ふざけるなぁぁぁああああ!
私は高貴な身分の伯爵令嬢。私は強く美しい、聖女と言われるべき人物なの。ジュリエットなどにかき回されるなんて、信じられないわ。
「そのほかは政治的な理由があり現在は調べることができませんでしたが、現在攻略可能なのは宮廷魔術師長と第二皇子殿下くらいです」
「……わかったわ。下がりなさい……何かわかったらすぐに報告するのよ」
「はっ」
ディルティアが扉を開けて去っていく。私は椅子の向きを変え、窓から見える王城を見つめた。正確にはその隣の公爵邸を見つめた。
国王にさえ大切にされている公爵家の令嬢、ジュリエット。気に入らない。私は誰よりもかわいく強く正しい少女なのに。
どうして、私が奪わなければならないのに、彼女に私が奪われてしまうの。
そんなのは許せない。―――だから。
私は妥協なんてもう一切、絶対、することはないわ!
「―――嬢! 戦争です! 戦争の火ぶたが切って降ろされましたッ!」
「え? 戦争? 何ですって……」
それでもきっと私は、変わる現実を怒りで見えなくしてしまったのだろうか。
貴方の実力が知りたいという明確な意志を持ったうえでのメッセージ。捉え方を変えればどうとでも捉えられるのに、きっちり隙の無い文章。
そう、完璧である。セバスチャンの下調べにディルティアを送り込んでいる。
駆けつけたアティルに手紙を渡すと、私は机の上にて王城の対面にある公爵邸を睨んだ。
「すぐに苦痛とは何か味わわせてやるわ……」
どうして彼女に魔術の才能があるの。どうして彼女に加護があるの。彼女の全てが許せない、彼女の持っている物全てを奪いたい。
誰にも否定させる気はない。だって、私を否定できる人なんていないんだから。
机に手を叩きつけた。国はお世辞にも活気に満ち溢れているとは言えない。魔術大国と緊迫した雰囲気が漂っているのも理由のひとつ。
でも、戦争は起こらない。私に不利なことは、何ひとつ起こってはならない。
火を灯してみる。ゆるぎない、強く燃える火は私の魔力操作が完璧なことを事実的に物語っている。英才教育ではあるのだが、公爵のものとは劣るだろう。
それでも私は独学で全てを学んだ。魔術の原理も、魔力の操作も、私の血を吐く努力の結晶を、どうしてジュリエットに奪われなくてはならないの。
全部私のもの。努力は裏切らないのなら、私の言う通りになるべきなの。
私はまた一週間かけて侍女や執事、メイド達を私のものにした。そして、片っ端から私の物に出来る者達へ潜入させ、また一週間。
ディルティアが戻って来た。その表情はやけに歪んでいた。どうせ彼が私の事を考え過ぎて吐き気がしていたんでしょう、そう聞こうと思った。
でも、セバスチャンは私の事をそんなに知らない。私はそんなに魅力的なのかしら?
えぇそうね。それもそうね。私は魅力的なの。だからみんな私の物になるのね。
「―――話を聞いてくれそうにはありません」
「は?」
「恐らくはジュリエット嬢に先に手を回されているのでしょうか、ベアトリーチェ様がお伝えした通りの言葉をお伝えしたのですが、拒否されてしまいまして」
「どういうこと? 何なの、どうして私の言葉を拒否するのよ!」
私はセバスチャンをお茶会に招待するように言っておいたはずだ。仲を深めるためにという正当な理由もつけて。
それなのに、相当な身分もないただの執事が伯爵令嬢の誘いを拒否……?
あり得ない。あり得ないわ。泣いて喜ぶのならまだしも、拒否なんてありえないわ。そうね、きっと恥ずかしがってるの。
私はディルティアを下がらせ、日記に結果を記し、私の見解も記す。
次にアティルが入って来たが、手紙の返信はなくディルティアによると破り捨てられていたらしい、という報告が私の耳を疑わせた。
破り捨てた? 伯爵令嬢の手紙を?
皿に聞けば、セバスチャンはジュリエットに掛かりきりなのだという。バカな、優秀な魔力を見るなら私の方が上なはずなのに……!
次!
次は私がアルトに送り込んだ侍女。彼にも私が彼に会いたいと言っていると正当な理由もつけて侍女を送り込んだのだが―――。
丁重に断られたらしい。「僕はジュリエットに誘われている」と。
嘘だ、ウソに決まっている。私よりあのジュリエットを優先するなんて!
あり得ない、ありえないのよ。この現象はないはず。こんなのは―――!
完全に取り乱してしまった私。次に入って来た執事はアステリアに潜入させた者だった。こちらも研究という理由で断られている。
それでも最近ジュリエットと仲がいいという噂が流れているので、彼女のために断ったというのは考えればすぐに分かった。
セバスチャン、アルト、アステリア。この三人は攻略不可能だ。日記に記す。
次はディエルト。彼は私の誘いを鼻で笑ったらしい。「私はジュリエット嬢の護衛任務がある」と丁重に断りもせずストレートに断った。
しかも鼻で笑う。
―――ふざけるなぁぁぁああああ!
私は高貴な身分の伯爵令嬢。私は強く美しい、聖女と言われるべき人物なの。ジュリエットなどにかき回されるなんて、信じられないわ。
「そのほかは政治的な理由があり現在は調べることができませんでしたが、現在攻略可能なのは宮廷魔術師長と第二皇子殿下くらいです」
「……わかったわ。下がりなさい……何かわかったらすぐに報告するのよ」
「はっ」
ディルティアが扉を開けて去っていく。私は椅子の向きを変え、窓から見える王城を見つめた。正確にはその隣の公爵邸を見つめた。
国王にさえ大切にされている公爵家の令嬢、ジュリエット。気に入らない。私は誰よりもかわいく強く正しい少女なのに。
どうして、私が奪わなければならないのに、彼女に私が奪われてしまうの。
そんなのは許せない。―――だから。
私は妥協なんてもう一切、絶対、することはないわ!
「―――嬢! 戦争です! 戦争の火ぶたが切って降ろされましたッ!」
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