乙女ゲームの攻略対象キャラは悪役令嬢の味方をする。
6.王都崩壊
いったい何が起きたら戦争まで広がるのか、最初はさっぱりだった。しかし分かるのは、向こうの国が喇叭を鳴らして余裕ぶっているという事。
俺の見る限り、相手の国は魔術を重視した魔術大国アルダーラだと思われていた。少し地下で調べてみたら本当にそうだったことから確証を得る。
それからは千里眼スキルを使って安全な室内で、公爵家に情報を飛ばしていく俺。ジュリエットに王妃になれとは言わないが、立場は上げておくべきだと思う。
そのため積極的に公爵家へ情報を送るのは、この国ルシャーネに四つある公爵家の中でも王に特別視させるためだ。そして死ぬほどの訓練の末ジュリエットも千里眼スキルを持っているので、俺が居なくなっても問題ないと思われる。
「……それで、これからどうするつもりなんだ?」
「戦争の進行具合にもよるかなぁ。あの調子じゃ少女ジュリエット、戦争の中に突っ込んでくでしょ。あの薬は飲んだと思うしねぇ」
「飲んだぞ、死ぬほど不味かった。ひとつ言いたいんだが、この戦争で敗退する可能性はないのか?」
「分かっていて聞いているだろう? あるわけがない、ベアトリーチェもジュリエットもアルトも居るんだ、全く頼もしいねえ、そうだろう?」
勿論だ、敗退する可能性がないのを前提に俺は聞いている。俺がこうしてアレクサリアの研究専用の莫大な建物の中で駄弁っていられるのも、ジュリエットが飛び出して戦争に参加していけれるのも全てアレクサリアの手の回しのおかげだ。
やっぱり敵に回したくない者の中の一人である。本当はベアトリーチェも敵に回したくないが、敵に回す前提の任務なので仕方ないだろう。
アレクサリアがどうやって恋に落ちるかというと、ベアトリーチェに嫌がらせをするところから始まる。その嫌がらせはいじめというものではなく、面白がってからかうのを再前提としている。
しかしそれはやたら愛らしい笑顔を向けてくるベアトリーチェに対して「私を嫌ってくれ」という表現であった。
過去編を見たことのある俺は何があったのを知っているが、アレクサリアが一人で行動したがる原因こそ嫌われたいからだ。
そんな中でアレクサリアは罪を犯す。それを助けてくれたベアトリーチェに「私を嫌えよ」と怒鳴りつける。
しかし彼女は動じない。アレクサリアは恋に落ちた。ありきたりな漫画やゲームによくありそうな展開の内のひとつだ。
しかしアレクサリアを導く役目も俺の仕事だ。彼が罪を犯すことはありえなくなるし、彼はジュリエットをそれなりに気に入っているだろう。
今は研究材料として接しているだろうが、そのうち絆を深めていけばいいだろう。ちなみに彼の決め台詞は「もっと、それが本音だろ?」というちょっとドS王子なセリフだ。
「何を考えているんだい? 私ではわからない、その脳を分解して研究してみたいくらいだよ。ほら、戦争が進展してる」
「何かあったからっていちいち研究しようとしないで欲しいものだな。……それにしてもベアトリーチェ、ジュリエットを超えそうな実力だな」
「君の鍛錬をも凌ぐ実力ねぇ……これはこれは、実験用具として―――」
「研究材料より格が下がってる上にまた研究しようとするんじゃねえ!?」
こいつは、末期だ。肩を震わせながら叫ぶ俺に、椅子に座ったまま手を顎に当てて余裕の体勢を崩さないアレクサリアは窓から戦争の情景を見下ろす。
廊下に椅子を置いて俺が彼のそばに立つという形だ。壁はなく、研究施設の横の壁にあたる場所はすべて透明の窓が設置されている。
なお、アレクサリアが管理する部屋やアレクサリアが関係する部屋はみな悪趣味なデザインがしてあり、最初こそ人員はそれを避けていたが、今では慣れっこだ。
俺もよくゲームでその部屋を見ていたので、同じくもう慣れている。火の魔術を盛んに使うベアトリーチェとアルト。
それと対照に雷と水、氷を盛んに使うジュリエットは二手に分散して戦っている。町まで侵入してくるほどの戦火が舞い上がる。
ベアトリーチェは戦争の中心部に行こうとしているのかずんずんと進んでいき、流れた敵はすべてジュリエットが受け持つことになった。
なお、研究所に張られる強力な結界の力が衰えることは無く、ジュリエットの凄さを感じた。しかし彼女はぬるい生活をしてきた地球の人間。
ためらいもせずに人を殺していける彼女の秘密は気になるが、今はそれではない。アレクサリアがベアトリーチェを凝視していた。
「ふん。そういうことか……よく似ているよ」
「どういうことだ? ベアトリーチェがどうかしたのか?」
「ん? ああ。確か伯爵令嬢だったはずだねえ? 彼女、魔術の使い方と魔元素の流れ方に無理があるよ……研究したいなあ」
「……そうか。凝視する理由になるとは思わないが?」
「はっはは、よく見てるねぇ。私が思うに彼女の眼はあまりにもどす黒い。剣聖をやってたんだから、様々な感情に触れて来るんだよ」
本当は戦争が起こる設定などない。何故起こったのかというと、ジュリエットの才能が発見されあの日アレクサリアに呼ばれたからだ。
王都が削れていくのを見ながら俺は思った。ジュリエットの才能を聞きつけた魔術大国が嫉妬し戦争を起こそうとした時に、こちらの中枢貴族にやれ無能と喧嘩を売られた。
そりゃ、決行するわな。本当は国王がじきにやめろと頼みに行って中枢貴族の首をはねていくのだが、もう不可能である。
つまり、本当はアレクサリアがここでベアトリーチェの瞳の中のどす黒さに気が付くはずはないということだ。
シナリオをぶち壊し始めたなぁ、と俺はようやく実感を持つ。ジュリエットとアルトのコンビは真に素晴らしいと素直に口にできる。
一匹狼な大規模魔術を使いまくるベアトリーチェとは違って、しっかりと連携を取って効率的に魔術を放つ事が出来ている。
「……才能で言えば、ジュリエット嬢が上だ」
俺のぽつりとした呟きの返事はなく、王都崩壊はさらに進んでいった。そしてその中で、俺達が勝つと信じて疑わない原因となれる者が降り立った。
俺の見る限り、相手の国は魔術を重視した魔術大国アルダーラだと思われていた。少し地下で調べてみたら本当にそうだったことから確証を得る。
それからは千里眼スキルを使って安全な室内で、公爵家に情報を飛ばしていく俺。ジュリエットに王妃になれとは言わないが、立場は上げておくべきだと思う。
そのため積極的に公爵家へ情報を送るのは、この国ルシャーネに四つある公爵家の中でも王に特別視させるためだ。そして死ぬほどの訓練の末ジュリエットも千里眼スキルを持っているので、俺が居なくなっても問題ないと思われる。
「……それで、これからどうするつもりなんだ?」
「戦争の進行具合にもよるかなぁ。あの調子じゃ少女ジュリエット、戦争の中に突っ込んでくでしょ。あの薬は飲んだと思うしねぇ」
「飲んだぞ、死ぬほど不味かった。ひとつ言いたいんだが、この戦争で敗退する可能性はないのか?」
「分かっていて聞いているだろう? あるわけがない、ベアトリーチェもジュリエットもアルトも居るんだ、全く頼もしいねえ、そうだろう?」
勿論だ、敗退する可能性がないのを前提に俺は聞いている。俺がこうしてアレクサリアの研究専用の莫大な建物の中で駄弁っていられるのも、ジュリエットが飛び出して戦争に参加していけれるのも全てアレクサリアの手の回しのおかげだ。
やっぱり敵に回したくない者の中の一人である。本当はベアトリーチェも敵に回したくないが、敵に回す前提の任務なので仕方ないだろう。
アレクサリアがどうやって恋に落ちるかというと、ベアトリーチェに嫌がらせをするところから始まる。その嫌がらせはいじめというものではなく、面白がってからかうのを再前提としている。
しかしそれはやたら愛らしい笑顔を向けてくるベアトリーチェに対して「私を嫌ってくれ」という表現であった。
過去編を見たことのある俺は何があったのを知っているが、アレクサリアが一人で行動したがる原因こそ嫌われたいからだ。
そんな中でアレクサリアは罪を犯す。それを助けてくれたベアトリーチェに「私を嫌えよ」と怒鳴りつける。
しかし彼女は動じない。アレクサリアは恋に落ちた。ありきたりな漫画やゲームによくありそうな展開の内のひとつだ。
しかしアレクサリアを導く役目も俺の仕事だ。彼が罪を犯すことはありえなくなるし、彼はジュリエットをそれなりに気に入っているだろう。
今は研究材料として接しているだろうが、そのうち絆を深めていけばいいだろう。ちなみに彼の決め台詞は「もっと、それが本音だろ?」というちょっとドS王子なセリフだ。
「何を考えているんだい? 私ではわからない、その脳を分解して研究してみたいくらいだよ。ほら、戦争が進展してる」
「何かあったからっていちいち研究しようとしないで欲しいものだな。……それにしてもベアトリーチェ、ジュリエットを超えそうな実力だな」
「君の鍛錬をも凌ぐ実力ねぇ……これはこれは、実験用具として―――」
「研究材料より格が下がってる上にまた研究しようとするんじゃねえ!?」
こいつは、末期だ。肩を震わせながら叫ぶ俺に、椅子に座ったまま手を顎に当てて余裕の体勢を崩さないアレクサリアは窓から戦争の情景を見下ろす。
廊下に椅子を置いて俺が彼のそばに立つという形だ。壁はなく、研究施設の横の壁にあたる場所はすべて透明の窓が設置されている。
なお、アレクサリアが管理する部屋やアレクサリアが関係する部屋はみな悪趣味なデザインがしてあり、最初こそ人員はそれを避けていたが、今では慣れっこだ。
俺もよくゲームでその部屋を見ていたので、同じくもう慣れている。火の魔術を盛んに使うベアトリーチェとアルト。
それと対照に雷と水、氷を盛んに使うジュリエットは二手に分散して戦っている。町まで侵入してくるほどの戦火が舞い上がる。
ベアトリーチェは戦争の中心部に行こうとしているのかずんずんと進んでいき、流れた敵はすべてジュリエットが受け持つことになった。
なお、研究所に張られる強力な結界の力が衰えることは無く、ジュリエットの凄さを感じた。しかし彼女はぬるい生活をしてきた地球の人間。
ためらいもせずに人を殺していける彼女の秘密は気になるが、今はそれではない。アレクサリアがベアトリーチェを凝視していた。
「ふん。そういうことか……よく似ているよ」
「どういうことだ? ベアトリーチェがどうかしたのか?」
「ん? ああ。確か伯爵令嬢だったはずだねえ? 彼女、魔術の使い方と魔元素の流れ方に無理があるよ……研究したいなあ」
「……そうか。凝視する理由になるとは思わないが?」
「はっはは、よく見てるねぇ。私が思うに彼女の眼はあまりにもどす黒い。剣聖をやってたんだから、様々な感情に触れて来るんだよ」
本当は戦争が起こる設定などない。何故起こったのかというと、ジュリエットの才能が発見されあの日アレクサリアに呼ばれたからだ。
王都が削れていくのを見ながら俺は思った。ジュリエットの才能を聞きつけた魔術大国が嫉妬し戦争を起こそうとした時に、こちらの中枢貴族にやれ無能と喧嘩を売られた。
そりゃ、決行するわな。本当は国王がじきにやめろと頼みに行って中枢貴族の首をはねていくのだが、もう不可能である。
つまり、本当はアレクサリアがここでベアトリーチェの瞳の中のどす黒さに気が付くはずはないということだ。
シナリオをぶち壊し始めたなぁ、と俺はようやく実感を持つ。ジュリエットとアルトのコンビは真に素晴らしいと素直に口にできる。
一匹狼な大規模魔術を使いまくるベアトリーチェとは違って、しっかりと連携を取って効率的に魔術を放つ事が出来ている。
「……才能で言えば、ジュリエット嬢が上だ」
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