幻想妖華物語

ノベルバユーザー189431

幻想妖華物語~第一話.変わる自分-7~

……
 …………
 ………………

「―――……と、えいと………影都っ」
 「ん……はっ。俺は………?」
 「………ずっと、ぼーっとしてた」
 気付けば、舞狸が俺の目の前に立ち、無表情で小首を傾げていた。
どうやら過去を語っている間に、結構時間が経ってしまったようだ。
 「悪い。ちょっと思い出に耽っていたんだ」
 「………そう。でも、そんなことより、人里に着いた」
その言葉に顔を上げるとそこには、古都のような建物が小川を挟んで沢山並んでいる風景が目に入ってきた。
 歩いている人も和着物を着ていて、その里に合っている。
 「おー………これが人里か。中々綺麗な町並み?だな」
 「………案内役の男、もう帰った」
そういえば、と振り返ってみても、あのチンピラ団リーダー男はいなかった。舞狸の話によれば、人里が見えるところまで来たら、すぐに逃げ帰ったらしい。
 「まあ、これ以上一緒にいても何にもないからなー。これで良かったんだろ?」
 俺の問いに、舞狸は手に溢れるほどある押収品……片刃剣、ナイフ、棍棒、etc……を大切そうに抱えて答える。
 「………うん。こんなに沢山貰えた。嬉しい誤算」
 何をそんなに武器を貰って嬉しいのか………どのみち使わないと思うけど。
 「………これらは売る。この世界の、活動資金にする」
 「流石、俺に出来ない(ゲスい)ことを平然とやってのける舞狸さん、マジパねぇっすわ」
 世間的には褒められた行為ではないのだが。
 「………ほら、この剣を見て」
 「おお、って刃をこっちに向けんな!」
 「………この剣。隕石に含まれている、レアメタルの鉱石で造られている」
 「へぇ、そんなこともわかるのか!」
 「………ここに来る途中、森の中でクレーターを見つけた。………それに、似たような剣を、いくつも見たことがある」
 「ほー、舞狸って物知りなんだな」
これは意外。舞狸に剣の種類とかそんなものが分かるとは。なんだか先を越された気分だ。
と、そこで舞狸は丸眼鏡を指で押し上げて、
 「………まあ、全部ウソだけど」
 「何故このタイミングで嘘をつく!」
 舞狸の言うことだから間違いないだろうと思っていたが、騙された。
 忘れかけていたが、そこらへんは狸……人を化かす、騙すという性格が伝わってくる。
なんて質が悪いのだろう。
それはともかく、俺は舞狸の頭を掴んでかき回しながら確認する。
 「………なあ、舞狸」
 「………なに?影都」
 「俺、この世界で何があっても、またお前と離れるようなことはしたくないわ」
 「………!(バッ)ど、どうしたの、急に」
 「いや、あの時みたいにはなりたくないなって思って」
 「………あの時、ね……」
 「例え離れたとしても、必ず迎えにいくからさ」
 「………そう。じゃあ、私はあなたを信じる……///」
 「おう、信じられたぞ。って何赤くなってんだ?」
 「………気のせい(ブンブン)」
 「ちょ、パイプ振り回すな!アブねっ!」
 「………早く人里に行く。遅れたら、チョコパフェ奢ってもらう」
 「赤くなったり怒ったり、パフェねだったり……忙しいやつだな、甘党狸さんは。てかこの里にパフェとかあるのか?」

かくして、俺と舞狸は人里へ足を向けた――――。

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