胸にヲタクという誇りを掲げて
第6節/胸に這い寄る光を避け生きて
背後からものすごい勢いで近づいてくる気配を感じたので思わず立ち上がると、泡沫さんの顎に僕の頭部がぶつかってしまったようだ。
やばい、泡沫さんのファンの人たちや友達になんて言われるかわからない、死ぬ死ぬ、殺される、ミキ助けて!
学校中で人気どころか崇拝の対象になりつつある泡沫さんに触れるどころか、攻撃をしてしまったという事実が誰かにバレたら、社会的地位を剥奪されて即退学も免れないかもしれない......
僕らのような社会的地位が元々低いヲタク達は、社会的地位の高い人間の陰にひっそりと佇んで居なくちゃいけないのに、どうしてこうも陽のあたる場所に近づいてしまったのだろう? いや、実際はあちらから近づいてきたんだけども。
あ、やばい、泡沫さんが後ろに倒れるっ!?
そうわかった時にはとっさに体が動いていた。なぜ体が動いたのかはわからない。
人間の本能の中にある、同族を守ろうとする何か、とかそんなのが働いたのかもしれないし、目の前のものを掴もうとする、ただの反射運動なのかもしれない。
瞬間的に僕は、泡沫さんの腰に手を回して彼女を抱え込むようにして支えた。
自分にしてはかなり頑張った方だと思う。踏み込んだ左足の膝が変に痛むけど。普段の運動不足が原因だろうね、次のコミケまでに何とかしておかないと。
「これを取ろうとしてたんだよね、どうぞ」
と、できるだけ平然を装って、彼女が手を伸ばしていた位置にあった『絶対戦姫ラスマグナ』
を手渡した。
普段女子と話す機会なんてないし(そもそも人と話す機会が少ないけれど)、その上今話しているのは泡沫さんだ。
緊張せずにだなんてさすがに無理があると思ったけれど、今までただひたすらに周囲に隠れたり、偽ったりして生きてきた分、それなりの演技力が僕に備わっていたようで、冷静を装って手渡すことが出来た。
ひとまず、目当ての新刊はまだ無かったので(この書店なら三日前に揃えていると思ったのだけど)一時撤退もとい帰宅することにしよう。
「じゃ、じゃあ僕このあと用事があるから」
少しばかりぎこちないセリフを吐きながら、僕はそのまま地下へ続くエレベーターに乗り込むために、足早にその場所を離れる。
やはり僕のようなヲタクが、泡沫さんのような人の近くにいてはいけない。お互いにメリットがないのだ。むしろ、デメリットだけがあると言っていい。
僕は光に近づけない、陰住人だから。
そんな想いを僕はこれからも抱えていくんだろうと考えると、なぜだか少し切なく感じた。
やばい、泡沫さんのファンの人たちや友達になんて言われるかわからない、死ぬ死ぬ、殺される、ミキ助けて!
学校中で人気どころか崇拝の対象になりつつある泡沫さんに触れるどころか、攻撃をしてしまったという事実が誰かにバレたら、社会的地位を剥奪されて即退学も免れないかもしれない......
僕らのような社会的地位が元々低いヲタク達は、社会的地位の高い人間の陰にひっそりと佇んで居なくちゃいけないのに、どうしてこうも陽のあたる場所に近づいてしまったのだろう? いや、実際はあちらから近づいてきたんだけども。
あ、やばい、泡沫さんが後ろに倒れるっ!?
そうわかった時にはとっさに体が動いていた。なぜ体が動いたのかはわからない。
人間の本能の中にある、同族を守ろうとする何か、とかそんなのが働いたのかもしれないし、目の前のものを掴もうとする、ただの反射運動なのかもしれない。
瞬間的に僕は、泡沫さんの腰に手を回して彼女を抱え込むようにして支えた。
自分にしてはかなり頑張った方だと思う。踏み込んだ左足の膝が変に痛むけど。普段の運動不足が原因だろうね、次のコミケまでに何とかしておかないと。
「これを取ろうとしてたんだよね、どうぞ」
と、できるだけ平然を装って、彼女が手を伸ばしていた位置にあった『絶対戦姫ラスマグナ』
を手渡した。
普段女子と話す機会なんてないし(そもそも人と話す機会が少ないけれど)、その上今話しているのは泡沫さんだ。
緊張せずにだなんてさすがに無理があると思ったけれど、今までただひたすらに周囲に隠れたり、偽ったりして生きてきた分、それなりの演技力が僕に備わっていたようで、冷静を装って手渡すことが出来た。
ひとまず、目当ての新刊はまだ無かったので(この書店なら三日前に揃えていると思ったのだけど)一時撤退もとい帰宅することにしよう。
「じゃ、じゃあ僕このあと用事があるから」
少しばかりぎこちないセリフを吐きながら、僕はそのまま地下へ続くエレベーターに乗り込むために、足早にその場所を離れる。
やはり僕のようなヲタクが、泡沫さんのような人の近くにいてはいけない。お互いにメリットがないのだ。むしろ、デメリットだけがあると言っていい。
僕は光に近づけない、陰住人だから。
そんな想いを僕はこれからも抱えていくんだろうと考えると、なぜだか少し切なく感じた。
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