Waving Life ~波瀾万丈の日常~

柏崎 聖

75話 衝撃の告白

 衝撃の告白
 1


 俺が目覚めると、見えたのは茜色に染まり始めた空だった。
 後頭部には、柔らかな感触。
 体は木の少し硬い感触。
 足はダラっとしていて、完璧なリラックスの体勢だ。

 ……。??
 俺は、今どうなっているんだ……?
 確認するため起き上がってみた。


「大丈夫?剣也」


 聞こえたのは、蘭華の声だった。
 慌てて声の方へと顔を向けた。
 そしてようやく何をされていたかが分かった。
 膝枕だった。


「まだクラっとするけど、とりあえず大丈夫」
「びっくりしたよ……。たまたまお菓子買いに出かけたら、この公園で剣也が倒れてたんだから……」


 そう言えば、晴大に腹を殴られて気を失ったんだったな……。

 蘭華は心配そうな目でこちらを見つめてくる。
 それが恥ずかしくなって、俺はきちんと蘭華の横に座った。


「心配かけて悪かったな」


 蘭華は手をモジモジして照れてる様子だった。


「剣也、何があったの?晴君と一緒だったんじゃ……」


 事情を説明するためには、今まで言ってなかったこと全部言わなくちゃいけないのか……。
 今まで隠してたのは、蘭華が晴大とそれなりに仲が良かったからだ。
 晴大の性格上、蘭華を友達と思っていたのかは知らないが、蘭華は間違いなく思っていただろう。
 だから言い難かったのだ。


「話さないといけないことがある」


 俺がそう言うと、蘭華は首を傾げた。

 空は次第に、赤色から黒色へと変わりつつあった。


 2


 俺は晴大のことを何一つ隠さずに打ち明けた。
 彼女の表情は、空同様次第に暗くなっていった。


「え……。3年生の最初ってことは、まさか……」
「そのまさか、だよ……」





 3年生になって最初の登校日。
 俺は学校に行ってはいない。
 行けなかったのだ。
 俺はその日、新たな始まりに期待を持って登校しようと道路を歩いていた。
 天気は曇り。雨が降りそうな天気だった。
 しかし俺の期待はそんな天気を吹き飛ばすくらい清々しいものだった。
 家から中学まではさほど遠くないのだが、途中大きな道路を挟んでいる。
 その道路の所までやって来た。
 ここは普段から車が多くてとても危ない。
 信号が青になり、俺はそれを確認して渡ろうとした。
 その時だった。


「『ズドン!』」


 俺は暴走してきた車に跳ねられてしまった。
 一目散に俺の周りに人が集まる。


『君、大丈夫かね?』


 中年の男の人の声が聞こえる。


『救急車だ!すぐに!』


 俺はその言葉を聞いた後、意識を失った。

 次に目が覚めたのは近くの病院の病室だった。
 俺は目覚めてすぐに大変なことに気が付いた。
 膝から下の感覚が全く無いのだ。
 これでは満足に歩けやしない。


『ガチャ』


 扉の開いた音が聞こえた。
 すると医師が看護師を引き連れこちらへと向かってくる。
 よく見るとその後ろには両親もいた。


「先生!膝から下の感覚が殆どないです…」
「残念ですが…」
「治して下さい!お願いします!」
「でも安心してください、剣也君。まだ可能性がありますよ」


 正直驚きだった。
 さっきの言い方だと100%無理なものだと思っていたから。


「どういう事ですか?」
「あなたの怪我はまだ軽い方です。それに年齢も若いのでリハビリさえすれば、ちゃんと元通りの生活が送れますよ!」
「本当ですか?」


 俺に希望の光がさした。
 俺はすぐリハビリをやることを伝えた。
 しかし、


「ただ、リハビリはかなりきついものになるかも知れません。そこの所だけは了解していただきたい」


 と先生から忠告があった。
 でも、元通りの生活が送れるならそれでいいと俺は割り切った。

 その日から蘭華に何度も励ましながら、時に挫けそうになるほど辛いリハビリを乗り越えた。
 そして今、事故前と何ら変わりないほどまで回復している。


 この事故に彼、晴大が関係していた。
 直接的に関わっている訳ではないが、この事故は故意にやった可能性も捨てきれないのだ。
 というのも、この暴走した車を運転していたのは晴大の父親。
 昔から大の酒好きで、この事故を起こした時も飲酒をしていたらしい。
 晴大の父が酒で暴走したという場合であれば、晴大に全く罪はない。
 ただ、それが酒が全ての原因でないとすれば話は別なのだ。

 つまり、晴大自身が父親にそうお願いして故意にやったとすれば、彼には大きな罪があることになる。
 でも、そんな馬鹿なことある訳ないだろうと思うだろう。
 しかしながら晴大にはその可能性もあるのだ。

 俺が晴大と絶交した後から、彼は俺に対しても悪ふざけをするようになった。
 それも次第にエスカレートしていっていた。
 その延長線がこの事故だと言う可能性は、十分に有り得るのだ。




「元々友達だったのに、そんな酷いことするのかな……」


 蘭華がそう呟く。


「あいつは人を選ばない。どんな天才でも凡才でも、嫌いな奴は問答無用で嫌がらせをしていた……」
「私……。そんなふうには見えなかったよ?」
「見えないだろうな……。本当の面は俺にしか見せたことがない」
「本当の面?」
「表は普通の奴だけど、裏は……」


 彼の裏は、西島の何倍も怖い。
 目つきは鋭く、表情はとんでもなく冷たい。
 それを普段の優等生のキャラの陰に隠している。
 完璧な演技で。


「どうするつもり?剣也」
「……」


 どうしろと言われても……。
 俺はどうすればいいのだろうか。
 事故に関わっているのか聞けばいいのか?
 なんで嫌っているのか聞けばいいのか?

 例え、それをしようとしても難しいだろう。
 彼は口より先に手が出る。
 武力で対抗なんて出来やしないのだ。


 俺は暗くなった空を見上げて、ぼーっと考えていた。


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