Waving Life ~波瀾万丈の日常~
57話 気付かなかった思い
気付かなかった思い
グラウンドに着いた俺は、すぐに西島を見つけた。
「西島!」
「どうしたの?蔭山君」
「良いから、ちょっと来い!」
俺は、西島の腕を掴んで強引に引っ張った。
そして、俺たちは校舎裏へと向かった。
「いい加減離してくれないか?」
「あ、悪い」
俺は手を離した。
「で、何の用だ?」
「お前が信頼されていない理由を聞きに来たんだよ!」
「その話はしないと言っただろう?」
西島の声は低い。だが、そこから怒りは感じとれない。
「蘭華から聞いたよ……。お前、蘭華の事が好きだったんだろ?」
「……」
「で、その後何かあったんだろ?それと、これとでは話が別かもしれないけど」
「……。そうか。聞いたのか……。なら話すよ」
暗くなってきた外。太陽の光が届かない校舎裏は更に暗かった。
西島は白いコンクリートの壁に背中を預ける。
そして1度、深呼吸してから話を続けた。
「俺は、岸川の事が好きだった。無邪気な笑顔を見るのが好きだったよ……。でも、俺は告白してふられた。そのショックを引きずったまま生活していたある日。俺は腹立たしい光景を見た。好きでもない、ただの幼馴染が岸川と楽しそうに話をしている様子を。一緒に下校している様子を」
幼馴染。すなわち俺のこと。
要するに、彼は嫉妬していたのだ。
好きでもない奴が、その女の子と楽しそうに話しているのが羨ましかったのだろう。
もし同じ立場なら、俺はそう思うだろう。
「それで、俺はイライラしていたのだろう。教室で岸川と会話していた時に急に口調が荒くなった。それを見ていた周りの奴らが『こいつには裏がある』と思ったのだろう。途端にみんな、信頼しなくなった」
「……」
これが原因で、西島が信頼されなくなった。
だから蘭華は責任を感じていたのだろう。
「でも、時が経ってみんなその事を忘れたんだろうな。次第に信頼が戻ってきた。だから、今も何とか学級委員長を出来ている」
西島は淡々と事実を述べていた。
怒りもせず、ただ冷静に。
しかし、彼の表情は次第に変わっていく。
「信頼されていない理由を聞いて、問題を解決しようと思っていたんだろう?」
「あぁ」
「なら、問題を解決するために手伝って欲しい」
そう優しく微笑む。
でも、この笑顔には明らかに裏がある。
そう思える含みのある笑顔だ。
「何を?」
「お前、岸川に近づくな。決してな!」
そして怒りの気持ちがこもった強い声で、俺に命令を下す。
『ド〜ン!』
そのタイミングで、夕方祭りのイベントの1つの花火が打ち上がった。
気付けば時刻もそれくらい経過していた。
「何でだよ?」
西島の怒りが強くなるにつれ、俺の怒りもこみ上げてくる。
次第に口調が強くなってきていた。
「この問題のそもそもの原因は、お前にある。だから償え。過去は変えられない。ならこの先の未来を変えればいい。俺が信頼を失った分だけ、お前は償うんだ!いいな!」
俺は怒りを抑えられなくなってきていた。
そしてその怒りが俺の体を動かす。
「何で、何でそうなるんだよ!」
俺は右手で西島の胸ぐらを掴む。
「好きでもないやつが、好きなやつの邪魔をした。それが迷惑以外のなんだってんだよ!」
俺は、その西島の言葉を聞いて手を緩めた。
西島が怒っている理由。
それは、好きでもないのに、蘭華と楽しそうに一緒にいたから。
好きでもない……。
確かに、その時は好きじゃなかった。
いや正確には多分気付けていなかった。
胸の中にあったモヤモヤが、好きだという気持ちだったことに。
でも、今は違う。
俺は蘭華の事が好きだ。
そして、昔から好きだったと言うことにも気付けた。
つまり前から好きだった。
じゃあ、言えばいいじゃないか。
俺は蘭華が好きだと、西島に言えばいい。
そうすれば、問題は解決する。
『たっ、たっ、たっ……』
俺はこちらに近づいてくる足音に気が付いて、視線の向きをその方向に変えた。
西島も自然とそちらの方を見た。
「あ、いた!剣也!遅いよ!って、西島君も一緒?」
そう俺は、こんな無邪気に笑う彼女が好きだ。
俺が遅いと、心配になって走って探しに来る彼女のことが好きだ。
彼女の全部が俺は好きだ。
そう胸を張って言える。
俺は、1度深呼吸を入れた。
そして、蘭華に前置きの一言を言った。
「なぁ、蘭華。聞いて欲しい」
俺は優しい表情になるように、意識しているがそうはなっていないかもしれない。
緊張で顔が硬くなっているかもしれない。
でも、精一杯の笑顔で彼女に話す。
「どうしたの?剣也?」
彼女は首をかしげていた。
「入学してすぐに、一緒に遊園地に行ったよな?」
「……」
入学してすぐに、俺は遊園地に誘った。
一緒に回れた遊園地の楽しさは今も覚えている。
「その帰りに、蘭華は言ったよな?『俺のことが好きだから』って」
「うん」
恐らく西島はこのことを知らない,
俺の背中側で、驚いている事だろう。
「俺さ、その時から胸の奥にモヤモヤを抱えていたんだよ。何とも言えない気持ちが、そこにはあった。でもその正体が、分からなくて今まで苦労したよ。真っ直ぐな道を何度も遠回りして……。でも、今俺はその時の気持ちが何だったか分かった」
あれから、登下校するようになったり喧嘩したり、旅行したり。
色んなことがあって、蘭華と近づいたり遠ざかったりした。
プラスとマイナスの波を俺は、何度も挫けながらも乗り越えた。
そうして、この気持ちが何だったのか。
ようやく分かったのだ。
その気持ちを精一杯の笑顔で言い放つ。
「俺は、お前のことが好きだ。大好きだ」
好きと言えたことが余程嬉しかったのか、俺の頬には光るものがあった。
グラウンドに着いた俺は、すぐに西島を見つけた。
「西島!」
「どうしたの?蔭山君」
「良いから、ちょっと来い!」
俺は、西島の腕を掴んで強引に引っ張った。
そして、俺たちは校舎裏へと向かった。
「いい加減離してくれないか?」
「あ、悪い」
俺は手を離した。
「で、何の用だ?」
「お前が信頼されていない理由を聞きに来たんだよ!」
「その話はしないと言っただろう?」
西島の声は低い。だが、そこから怒りは感じとれない。
「蘭華から聞いたよ……。お前、蘭華の事が好きだったんだろ?」
「……」
「で、その後何かあったんだろ?それと、これとでは話が別かもしれないけど」
「……。そうか。聞いたのか……。なら話すよ」
暗くなってきた外。太陽の光が届かない校舎裏は更に暗かった。
西島は白いコンクリートの壁に背中を預ける。
そして1度、深呼吸してから話を続けた。
「俺は、岸川の事が好きだった。無邪気な笑顔を見るのが好きだったよ……。でも、俺は告白してふられた。そのショックを引きずったまま生活していたある日。俺は腹立たしい光景を見た。好きでもない、ただの幼馴染が岸川と楽しそうに話をしている様子を。一緒に下校している様子を」
幼馴染。すなわち俺のこと。
要するに、彼は嫉妬していたのだ。
好きでもない奴が、その女の子と楽しそうに話しているのが羨ましかったのだろう。
もし同じ立場なら、俺はそう思うだろう。
「それで、俺はイライラしていたのだろう。教室で岸川と会話していた時に急に口調が荒くなった。それを見ていた周りの奴らが『こいつには裏がある』と思ったのだろう。途端にみんな、信頼しなくなった」
「……」
これが原因で、西島が信頼されなくなった。
だから蘭華は責任を感じていたのだろう。
「でも、時が経ってみんなその事を忘れたんだろうな。次第に信頼が戻ってきた。だから、今も何とか学級委員長を出来ている」
西島は淡々と事実を述べていた。
怒りもせず、ただ冷静に。
しかし、彼の表情は次第に変わっていく。
「信頼されていない理由を聞いて、問題を解決しようと思っていたんだろう?」
「あぁ」
「なら、問題を解決するために手伝って欲しい」
そう優しく微笑む。
でも、この笑顔には明らかに裏がある。
そう思える含みのある笑顔だ。
「何を?」
「お前、岸川に近づくな。決してな!」
そして怒りの気持ちがこもった強い声で、俺に命令を下す。
『ド〜ン!』
そのタイミングで、夕方祭りのイベントの1つの花火が打ち上がった。
気付けば時刻もそれくらい経過していた。
「何でだよ?」
西島の怒りが強くなるにつれ、俺の怒りもこみ上げてくる。
次第に口調が強くなってきていた。
「この問題のそもそもの原因は、お前にある。だから償え。過去は変えられない。ならこの先の未来を変えればいい。俺が信頼を失った分だけ、お前は償うんだ!いいな!」
俺は怒りを抑えられなくなってきていた。
そしてその怒りが俺の体を動かす。
「何で、何でそうなるんだよ!」
俺は右手で西島の胸ぐらを掴む。
「好きでもないやつが、好きなやつの邪魔をした。それが迷惑以外のなんだってんだよ!」
俺は、その西島の言葉を聞いて手を緩めた。
西島が怒っている理由。
それは、好きでもないのに、蘭華と楽しそうに一緒にいたから。
好きでもない……。
確かに、その時は好きじゃなかった。
いや正確には多分気付けていなかった。
胸の中にあったモヤモヤが、好きだという気持ちだったことに。
でも、今は違う。
俺は蘭華の事が好きだ。
そして、昔から好きだったと言うことにも気付けた。
つまり前から好きだった。
じゃあ、言えばいいじゃないか。
俺は蘭華が好きだと、西島に言えばいい。
そうすれば、問題は解決する。
『たっ、たっ、たっ……』
俺はこちらに近づいてくる足音に気が付いて、視線の向きをその方向に変えた。
西島も自然とそちらの方を見た。
「あ、いた!剣也!遅いよ!って、西島君も一緒?」
そう俺は、こんな無邪気に笑う彼女が好きだ。
俺が遅いと、心配になって走って探しに来る彼女のことが好きだ。
彼女の全部が俺は好きだ。
そう胸を張って言える。
俺は、1度深呼吸を入れた。
そして、蘭華に前置きの一言を言った。
「なぁ、蘭華。聞いて欲しい」
俺は優しい表情になるように、意識しているがそうはなっていないかもしれない。
緊張で顔が硬くなっているかもしれない。
でも、精一杯の笑顔で彼女に話す。
「どうしたの?剣也?」
彼女は首をかしげていた。
「入学してすぐに、一緒に遊園地に行ったよな?」
「……」
入学してすぐに、俺は遊園地に誘った。
一緒に回れた遊園地の楽しさは今も覚えている。
「その帰りに、蘭華は言ったよな?『俺のことが好きだから』って」
「うん」
恐らく西島はこのことを知らない,
俺の背中側で、驚いている事だろう。
「俺さ、その時から胸の奥にモヤモヤを抱えていたんだよ。何とも言えない気持ちが、そこにはあった。でもその正体が、分からなくて今まで苦労したよ。真っ直ぐな道を何度も遠回りして……。でも、今俺はその時の気持ちが何だったか分かった」
あれから、登下校するようになったり喧嘩したり、旅行したり。
色んなことがあって、蘭華と近づいたり遠ざかったりした。
プラスとマイナスの波を俺は、何度も挫けながらも乗り越えた。
そうして、この気持ちが何だったのか。
ようやく分かったのだ。
その気持ちを精一杯の笑顔で言い放つ。
「俺は、お前のことが好きだ。大好きだ」
好きと言えたことが余程嬉しかったのか、俺の頬には光るものがあった。
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