Waving Life ~波瀾万丈の日常~
56話 もう一方の行方
もう一方の行方
1
喫茶店に入った俺たちは、すぐに見覚えのある桃色の髪の女の子と、昨日の隣にいるナンパ男を見つけた。
え?なぜナンパ男は外見の特徴じゃないって?
だってこれと言った特徴ないし……。強いて言えば変態かな?
もちろん、その2人とは桃山さんと半弥である。
「あれ?みっちゃんだ!」
蘭華の呼びかけに、桃山さんが手を振って応えた。
俺たちはその2人と向かいあわせで座り、すぐさま近くにいた店員にコーヒー2つを注文した。
蘭華の『あ……、ココアにして欲しかった……』っていう小さな呟きは聞かなかったことにしておこう。
「奇遇だね!っていうか、来てくれて助かったよ〜。こいつったら……」
桃山さんはそう言って、蘭華に向けていた視線を左横に移す。
そして、左手で半弥の耳を思いっきりつまんだ。
「痛い痛い痛い痛い!おい、見てないで助けろよ……」
と、半弥は俺の方にゾンビのように手を伸ばしてきた。
半弥の事だ。どうせ桃山さんに変なことを言ったに違いない。自業自得だ。
俺は容赦なく半弥を痛めつける。
「え?お前ってMだから寧ろ気持ちいいんだろうなと思ってたけど?」
「っちょ!んなわけ……、あぁ、案外気持ちいいかも……」
「ちょっ、気持ち悪い声出すな!」
『ペシ〜ン!』
桃山さんは左手を離して、即座右手で半弥の頬を平手打ちした。
いやぁ、いい音するよな!
キャッチャーミットにボールが入る音よりも気持ちいいぜ!
さすがに可哀想だと思った俺は、半弥に何をしたのか問うことにした。
「お前、桃山さんに何したんだよ?」
「いやぁ、そりゃ完璧なエスコートを……」
それを聞いた桃山は更に機嫌を悪くする。
「は?どこがエスコートよ!何1つしてないじゃない!」
俺は半弥を蔑んだ目で見た。
その視線に気付いた半弥は、急に焦り出した。
「いや、今こうして喫茶店に来ているのは俺の誘いなわけだし……」
「あんた、簡単に嘘つくと嫌われるわよ?」
桃山の怒りは半弥が口を開く度に強くなっていた。
そして、それが強くなるにつれて大きくなる声は、周りの客の視線を引いていた。
同じひくでもせめて惹いてくれよ……。どこかの女優みたいにさ。
俺たちまで、変な目で見られるんだよなぁ……。
「いや、別に嘘なんて……」
おい、視線が外向いてるから俺でも嘘だって分かるぞ……。
「あんたが、『せっかくだから夜も一緒にいない?』とか『俺の家が嫌ならホテルでもいいよ?』とかその他淫らな言葉ばっかり言うし、そのせいで……」
そのせいで、『周りから変な視線を浴びて恥ずかしくなったから、喫茶店に逃げ込んだんじゃない!』とでも言おうとしたのだろう。
だが、怒りがエスカレートしてボリュームアップした声のせいで、誤解を呼ぶような文章が店いっぱいに響いていた。
それによって、浴びた視線に気付いた桃山さんは恥ずかしくなって喋るのを止めたのだ。
桃山さんの、顔はみるみる赤く染まっていく。
「ん〜!もぉ〜!」
怒りが収まったかと思いきや、中ではその逆だったらしい。
怒りは、最高点に達した。
桃山さんの右手は強く握られ、半弥の腹に当たって突き上げられた。
見事なアッパーだ。
「ぐおぉぉぉぉ〜!」
半弥はお腹を抑えてノックアウトされたようだ。
「最悪!」
一方の桃山さんは赤くなった顔を抑えて、テーブルに伏せてしまった。
桃山さんの完全勝利かと思いきや、どうやらドローだったみたいだ。笑。
2
桃山さんが落ち着きを取り戻したと、同時にコーヒーがきた。
ちなみに、桃山さんは落ち着いたが半弥はまだ半分死んでいる。半弥だけに……。
「この後、一緒に行く?夕方祭り」
蘭華がそう切り出した。
夕方祭りの開始は4時30分。もうすぐだ。
「この歩く卑猥用語スピーカーが来ないなら行くよ」
桃山さんと仲良くなりたくて一緒に回ることを約束したのに、尚更嫌われてるじゃねぇか……。
その証拠に半弥のことを指す言葉が酷くなっている。
卑猥用語スピーカー……。
悪いが、半弥……。友達だけど、その通り過ぎて否定出来ないよ……。笑。
「お、俺は、行く……」
死んだ声で半弥が言った。
相当痛かったんだな……。
でも、安心しろ。股間を蹴られる痛みよりは、何倍もマシだから。痛かったなぁ、あれは。
「じゃあ、私は……」
「行こっ!」
桃山さんの声を遮って蘭華はそう言う。
結局、桃山さんは蘭華に言いくるめられて一緒に行くことにした。
「じゃあ、もう時間だし行こっか!っ!苦!」
店を出ようと、残っていたコーヒーを一気に飲んだ蘭華がそう口にした。
時刻は4時20分。
外の様子を見ようと、グラウンドに視線を移すとそこにある人が立っていた。
そして、即座にやらなくては行けないことがあることに気付いた。
「ごめん、蘭華。ちょっと急用思い出したから行ってくる!すぐにそっち行くから!」
「うん。分かった。早く来てね!」
俺は自分の分のお金をテーブルに置いて先に店を飛び出した。
そして、その人の元へと走り出した。
学校祭中に解決するべき問題。
その問題の解決に至るための方法を俺は思いついていた。
でも、時間はない。
俺は学校祭中に問題を解決すると決めていたのだ。
1度言ったことをしないのは男ではない。
だから俺は、その人の元へと全力で走った。
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喫茶店に入った俺たちは、すぐに見覚えのある桃色の髪の女の子と、昨日の隣にいるナンパ男を見つけた。
え?なぜナンパ男は外見の特徴じゃないって?
だってこれと言った特徴ないし……。強いて言えば変態かな?
もちろん、その2人とは桃山さんと半弥である。
「あれ?みっちゃんだ!」
蘭華の呼びかけに、桃山さんが手を振って応えた。
俺たちはその2人と向かいあわせで座り、すぐさま近くにいた店員にコーヒー2つを注文した。
蘭華の『あ……、ココアにして欲しかった……』っていう小さな呟きは聞かなかったことにしておこう。
「奇遇だね!っていうか、来てくれて助かったよ〜。こいつったら……」
桃山さんはそう言って、蘭華に向けていた視線を左横に移す。
そして、左手で半弥の耳を思いっきりつまんだ。
「痛い痛い痛い痛い!おい、見てないで助けろよ……」
と、半弥は俺の方にゾンビのように手を伸ばしてきた。
半弥の事だ。どうせ桃山さんに変なことを言ったに違いない。自業自得だ。
俺は容赦なく半弥を痛めつける。
「え?お前ってMだから寧ろ気持ちいいんだろうなと思ってたけど?」
「っちょ!んなわけ……、あぁ、案外気持ちいいかも……」
「ちょっ、気持ち悪い声出すな!」
『ペシ〜ン!』
桃山さんは左手を離して、即座右手で半弥の頬を平手打ちした。
いやぁ、いい音するよな!
キャッチャーミットにボールが入る音よりも気持ちいいぜ!
さすがに可哀想だと思った俺は、半弥に何をしたのか問うことにした。
「お前、桃山さんに何したんだよ?」
「いやぁ、そりゃ完璧なエスコートを……」
それを聞いた桃山は更に機嫌を悪くする。
「は?どこがエスコートよ!何1つしてないじゃない!」
俺は半弥を蔑んだ目で見た。
その視線に気付いた半弥は、急に焦り出した。
「いや、今こうして喫茶店に来ているのは俺の誘いなわけだし……」
「あんた、簡単に嘘つくと嫌われるわよ?」
桃山の怒りは半弥が口を開く度に強くなっていた。
そして、それが強くなるにつれて大きくなる声は、周りの客の視線を引いていた。
同じひくでもせめて惹いてくれよ……。どこかの女優みたいにさ。
俺たちまで、変な目で見られるんだよなぁ……。
「いや、別に嘘なんて……」
おい、視線が外向いてるから俺でも嘘だって分かるぞ……。
「あんたが、『せっかくだから夜も一緒にいない?』とか『俺の家が嫌ならホテルでもいいよ?』とかその他淫らな言葉ばっかり言うし、そのせいで……」
そのせいで、『周りから変な視線を浴びて恥ずかしくなったから、喫茶店に逃げ込んだんじゃない!』とでも言おうとしたのだろう。
だが、怒りがエスカレートしてボリュームアップした声のせいで、誤解を呼ぶような文章が店いっぱいに響いていた。
それによって、浴びた視線に気付いた桃山さんは恥ずかしくなって喋るのを止めたのだ。
桃山さんの、顔はみるみる赤く染まっていく。
「ん〜!もぉ〜!」
怒りが収まったかと思いきや、中ではその逆だったらしい。
怒りは、最高点に達した。
桃山さんの右手は強く握られ、半弥の腹に当たって突き上げられた。
見事なアッパーだ。
「ぐおぉぉぉぉ〜!」
半弥はお腹を抑えてノックアウトされたようだ。
「最悪!」
一方の桃山さんは赤くなった顔を抑えて、テーブルに伏せてしまった。
桃山さんの完全勝利かと思いきや、どうやらドローだったみたいだ。笑。
2
桃山さんが落ち着きを取り戻したと、同時にコーヒーがきた。
ちなみに、桃山さんは落ち着いたが半弥はまだ半分死んでいる。半弥だけに……。
「この後、一緒に行く?夕方祭り」
蘭華がそう切り出した。
夕方祭りの開始は4時30分。もうすぐだ。
「この歩く卑猥用語スピーカーが来ないなら行くよ」
桃山さんと仲良くなりたくて一緒に回ることを約束したのに、尚更嫌われてるじゃねぇか……。
その証拠に半弥のことを指す言葉が酷くなっている。
卑猥用語スピーカー……。
悪いが、半弥……。友達だけど、その通り過ぎて否定出来ないよ……。笑。
「お、俺は、行く……」
死んだ声で半弥が言った。
相当痛かったんだな……。
でも、安心しろ。股間を蹴られる痛みよりは、何倍もマシだから。痛かったなぁ、あれは。
「じゃあ、私は……」
「行こっ!」
桃山さんの声を遮って蘭華はそう言う。
結局、桃山さんは蘭華に言いくるめられて一緒に行くことにした。
「じゃあ、もう時間だし行こっか!っ!苦!」
店を出ようと、残っていたコーヒーを一気に飲んだ蘭華がそう口にした。
時刻は4時20分。
外の様子を見ようと、グラウンドに視線を移すとそこにある人が立っていた。
そして、即座にやらなくては行けないことがあることに気付いた。
「ごめん、蘭華。ちょっと急用思い出したから行ってくる!すぐにそっち行くから!」
「うん。分かった。早く来てね!」
俺は自分の分のお金をテーブルに置いて先に店を飛び出した。
そして、その人の元へと走り出した。
学校祭中に解決するべき問題。
その問題の解決に至るための方法を俺は思いついていた。
でも、時間はない。
俺は学校祭中に問題を解決すると決めていたのだ。
1度言ったことをしないのは男ではない。
だから俺は、その人の元へと全力で走った。
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