Waving Life ~波瀾万丈の日常~

柏崎 聖

52話 待ちわびた日の始まり

 待ちわびた日の始まり
 1

 待ちに待った学校祭初日。
 今日は学校祭日和がっこうさいびおりの秋晴れだ。学校祭の殆どは中で行われるため、雨でも特に問題は無いのだが……。晴れという日は気持ちがいいのだ。

「やっと始まるね!学校祭」
「だな」

 朝、いつも通りの登校もどこか楽しみに溢れていた。
 その証拠に、早く行きたいという衝動が俺の足を進めている。
 急ぎ過ぎて、さっき転けそうだったけど……。危ねぇ……。

「売り上げ、勝てるといいね!」
「豪華商品がどれ位か分かっているなら、もっとやる気も上がったかもしれないけどな……」

 別にやる気がない訳では無い。
 でも、正直なところ模擬店当番ほど学校祭で楽しくないものは無い。
 やっぱり、友達とか好きな人と回るのが1番楽しい。

「でも3日目に楽しいことあるし、そのために頑張ると思えば案外やる気出るかもよ?」

 学校祭3日目には、蘭華と一緒に回るという約束がある。
 今回の学校祭はそれが1番の楽しみなのだ。

 気付けば、既に校門を潜っていた。
 平翼高校は、学校祭1色で染まっていた。
 校門から飾り付けがされていて、色とりどりになった学校はまるで別物のようだった。
 俺たちは学校祭のメイン会場、つまり校舎を目指し校庭を歩く。

「昨日とは、大違い……」

 昨日、最後の会議を終えた俺達が帰ったのは午後6時頃。
 ほとんどの生徒が、全ての準備を終え下校していた。
 辺りが暗かったため同じ飾りつけでも、昨日と今日では印象がかなり違っていた。

「じゃあ、行くか!」

 玄関のドア前。ガラス越しに見える廊下には、それぞれの教室がするイベントのチラシが貼ってある。
 その中には俺たちの作ったチラシも含まれている。つい2日前に作ったものだ。
 俺たちは、遂に校舎に乗り込んだ。

 2

 ……。
 静寂に包まれた校舎内。
 人気ひとけを全く感じない。
 この原因は、俺が思い当たる所は1つしかない。

「ったく!いくら何でも早すぎだろ!」

 時計の短針が指す数字は7。長針は12を指している。
 つまり7時丁度。
 学校の開く時間は、7時。
 学校祭は、通常登校で行うので開会式開始は8時半。
 1時間半も早く来てしまったのだ。
 俺がそう言ったのも頷いて貰えるだろう。

「だからいつも通りでいいって言ったのに!」
「学校祭は、学校が開いた時から始まるんだよ!」
「いや、開会式してからだろ……」

 俺のツッコミはほぼため息同然だった。
 これから1時間半もどうするんだよ?
 ビラ配り?試食?

「とりあえず、教室に行こう!」
「そりゃあ、こんな玄関でボーッと突っ立っていても仕方ないからな……」

 蘭華はスキップして俺より先に教室に向かった。
 俺はその後ろをかなり遅いペースでトボトボと追いかけた。

 階段を上り3階へ。そして3組、2組の前を通る。
 そうしてようやく俺たちの教室に辿り着く。
 つまり玄関から1番遠いのだ。
 閑散とした廊下をようやく歩ききり1組に着いて俺は、一呼吸おいてから教室の扉を開けた。
 ……?
 中にいたのは蘭華ではない。
 西島だ。

「西島?おはよ」
「あ、蔭山君。おはよう」

 いつも通りの優等生らしい振る舞い。
 俺が来たということは蘭華が一緒にいるだろうと推測をしているのだろう。
 俺だけに見せた本性を見せてこない。

「早いな」
「それはお互い様でしょう?」

 優等生、西島のことだ。
 蘭華のように、楽しみで仕方がないから1時間半も早く来たという不純な理由ではないだろう。
 ただ、学級委員長として最後の調整でもしていたのだろう。
 そういう推測が立ったのは、彼の座る机の上。左側にあるチラシの山。それとハサミや多色の油性マジック。
 配布用のビラをプラスで書いていたのだろう。本当に真面目なやつだ。

 そんなやり取りの途中、空気をぶち壊すのが俺の幼馴染だ。
 ドアが思いっ切り開かれた。

「あれ?剣也早いね!って西島君?おはよう!」
「うん、おはよう」

『剣也早いね!』じゃねぇよ。
 お前、先に行ったよな?
 それもスキップで。
 一方の俺は、普通の徒歩よりも遅く歩いていたんだぞ?
 これぞ、兎と亀だな。

「どこ行ってたんだよ?」
「ちょっと味見しに……」
「お、お前な……」
「冗談だよ、冗談!」

 お前の場合冗談に聞こえないんだよな……。
 普通の人ならしない事でもするのが蘭華っていう人だから。

「運営委員、揃ったね」

 そう突然、西島が言う。

「最後の一仕事だ」

 と言いながら手に持っているのは、紙とハサミ。
 そして西島の含みのある笑顔からは、言いたい事分かるよね?という思いが見てとれた。
 要するに、配布のビラを一緒に作れってこと。

「分かった」
「やるやる〜!」

 俺たちは西島の要求を了承した。
 どうせ、1時間半すること無かったんだ。
 いい暇つぶしになるだろうと思ったので、珍しく面倒事を嫌がらなかった。
 蘭華も乗り気だしな。

「さぁ、やるか!」

 と、俺の掛け声でビラ作りが始まった。
 その時間は、既に登校してから30分。
 つまり開会式1時間前になってからだった。
 俺たちは、そこから他の生徒が1人来るまで真剣にビラを作った。
 わずか15分で1人目が来たのは誤算だったが、まぁそれなりには作れたからよしとしよう。
 こうして、ようやく開会式を迎える。


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