Waving Life ~波瀾万丈の日常~
13話 大切な1人
大切な1人
1
中学3年。
俺は新たな始まりに期待を持って登校しようと道路を歩いていた。
今日は曇り。雨が降りそうな天気だった。
しかし俺の期待はそんな天気を吹き飛ばすくらい清々しいものだった。
中学まで家からは遠くないけど、途中大きな道路を挟んでいる。
その道路の所までやって来た。
ここは普段から車が多くてとても危ない。
信号が青になった。
それを確認して渡ろうとしたその時だった。
俺は暴走してきた車に跳ねられてしまった。
一目散に俺の周りに人が集まる。
『君、大丈夫かね?』
中年の男の人の声が聞こえる。
『救急車だ!すぐに!』
俺はその言葉を聞いた後、意識を失った。
次に目が覚めたのは近くの病院の病室だった。
俺は目覚めてすぐに大変なことに気が付いた。
膝から下の感覚が全く無いのだ。
これでは満足に歩けやしない。
『ガチャ』
扉の開いた音が聞こえた。
すると医師が看護師を引き連れこちらへと向かってくる。
よく見るとその後には両親もいた。
「先生!膝から下の感覚がないです…」
「残念ですが…」
「治して下さい!お願いします!」
「でも安心してください、剣也君。まだ可能性がありますよ」
正直驚きだった。
さっきの言い方だと100%無理なものだと思っていたから。
「どういう事ですか?」
「あなたの怪我はまだ軽い方です。それに年齢も若いのでリハビリさえすれば、ちゃんと元通りの生活が送れますよ!」
「本当ですか?」
俺に希望の光がさした。
俺はすぐリハビリをやることを伝えた。
しかし、
「ただ、リハビリはかなりきついものになるかも知れません。そこの所だけは了解していただきたい」
と先生から忠告があった。
でも、元通りの生活が送れるならそれでいいと俺は割り切った。
2
次の日から俺はリハビリに励んだ。
小、中と運動することはあまり無かったので、このリハビリはより辛く感じられた。
正直、何度も心が折れてしまっていた。
でも俺はいつも蘭華が来てくれるおかげでかなり気が楽になっていた。
蘭華は、学校が終わると必ず病院に来るようにしていた。
いつも病室に来ると笑顔で、
「元気?剣也」
と俺の調子を伺ってくる。
そんな優しい彼女を見ているとどこか心が安らいだ。
何故だろう。
彼女には不思議な力でもあるのか?
と疑ってしまうくらいだった。
ある日、俺はあまりの辛さに1度泣いたことがある。
辛くて心には、
『諦め』
の2文字が浮かんで来ていた。
そんな時だった。
リハビリを行なう部屋に蘭華がいつものように入ってきた。
そしてベンチに座って泣いていた俺の横に座る。
「調子どう?って剣也?」
俺の異変に気付いたのか、蘭華は俺のそばまでやってくる。
そして俺を慰めていた。
「剣也。ここで諦めたら駄目だよ。剣也がこの先に何を求めているのかは私には分からないよ。だけどね、私は剣也が元気に日常を送っている姿をもう1度見たいの。だから、絶対に諦めないで!」
彼女の叫びは俺の心の奥まで届いた。
そうだ。
俺はいつも送っている日常が好きだ。
そして、それは俺だけじゃないということを。
俺は涙で濡れた顔をタオルで拭い、顔を蘭華の方に向けた。
そして優しく微笑む。
「悪いな。俺はなんにもしてやれないっていうのに、いつもいつも助けて貰って。感謝し切れないほど俺は蘭華に感謝しているよ」
この言葉を最後まで聞く前に彼女の方から鼻をすする音が聞こえた。
どうやら彼女まで泣いてしまったようだ。
「って、何お前まで泣いてるだよ!」
「だって私、剣也には迷惑かけてばっかりで…。私にはこんなことくらいしか出来ないけど、それでも剣也は嬉しい?」
『こんなこと』と彼女は言うかもしれない。
でもそれがどれほど俺を救ってくれたことか。
「もちろん、俺は嬉しいよ。だから改めて言わせて欲しい。ありがとう」
すると彼女は涙を隠すために覆っていた手を膝について立ち上がる。
そして俺の方を振り返って、
「こちらこそ、ありがとう」
と言葉を返した。
「私、ジュース買ってくるね!」
そう言って、この部屋を勢いよく出ていった。
「おい、財布忘れてるぞ!」
言ったところで聞こえないだろうけど。
まぁ、『財布忘れちゃった』とか言って戻ってくるのがオチだろうが…。
その5分後、彼女は案の定財布を取りに帰ってきた。
3
俺はリハビリを頑張ったおかげで遂に退院出来るようになった。
これでようやく学校へ行けるとウキウキな気分で病院の自動ドアをくぐる。
ドアの外にいたのは、花束を持った黒髪ロングの少女。
幼馴染で、馬鹿で天然。
だけど心優しい、俺の大事な人。
その彼女が俺の目の前に来て、花束を差し出す。
「退院おめでとう!剣也!」
「ありがとうな!お前のおかげだよ」
俺は約3ヶ月ぶりの帰宅の途につくことになる。
でも、親が仕事の関係で迎えには来ていない。
歩いて帰らなければ行けなかった。
でもそんな嫌なこともリハビリと比べると雲泥の差に感じる。
帰る前に俺の見送りをしてくれた、医師と看護師にお礼の言葉を言った。
そして、蘭華にこう質問する。
「一緒に帰るか!」
「うん!行こっ!剣也」
俺達は快晴の空のもとを歩いていった。
蘭華。
彼女は俺の最高の幼馴染だ!
1
中学3年。
俺は新たな始まりに期待を持って登校しようと道路を歩いていた。
今日は曇り。雨が降りそうな天気だった。
しかし俺の期待はそんな天気を吹き飛ばすくらい清々しいものだった。
中学まで家からは遠くないけど、途中大きな道路を挟んでいる。
その道路の所までやって来た。
ここは普段から車が多くてとても危ない。
信号が青になった。
それを確認して渡ろうとしたその時だった。
俺は暴走してきた車に跳ねられてしまった。
一目散に俺の周りに人が集まる。
『君、大丈夫かね?』
中年の男の人の声が聞こえる。
『救急車だ!すぐに!』
俺はその言葉を聞いた後、意識を失った。
次に目が覚めたのは近くの病院の病室だった。
俺は目覚めてすぐに大変なことに気が付いた。
膝から下の感覚が全く無いのだ。
これでは満足に歩けやしない。
『ガチャ』
扉の開いた音が聞こえた。
すると医師が看護師を引き連れこちらへと向かってくる。
よく見るとその後には両親もいた。
「先生!膝から下の感覚がないです…」
「残念ですが…」
「治して下さい!お願いします!」
「でも安心してください、剣也君。まだ可能性がありますよ」
正直驚きだった。
さっきの言い方だと100%無理なものだと思っていたから。
「どういう事ですか?」
「あなたの怪我はまだ軽い方です。それに年齢も若いのでリハビリさえすれば、ちゃんと元通りの生活が送れますよ!」
「本当ですか?」
俺に希望の光がさした。
俺はすぐリハビリをやることを伝えた。
しかし、
「ただ、リハビリはかなりきついものになるかも知れません。そこの所だけは了解していただきたい」
と先生から忠告があった。
でも、元通りの生活が送れるならそれでいいと俺は割り切った。
2
次の日から俺はリハビリに励んだ。
小、中と運動することはあまり無かったので、このリハビリはより辛く感じられた。
正直、何度も心が折れてしまっていた。
でも俺はいつも蘭華が来てくれるおかげでかなり気が楽になっていた。
蘭華は、学校が終わると必ず病院に来るようにしていた。
いつも病室に来ると笑顔で、
「元気?剣也」
と俺の調子を伺ってくる。
そんな優しい彼女を見ているとどこか心が安らいだ。
何故だろう。
彼女には不思議な力でもあるのか?
と疑ってしまうくらいだった。
ある日、俺はあまりの辛さに1度泣いたことがある。
辛くて心には、
『諦め』
の2文字が浮かんで来ていた。
そんな時だった。
リハビリを行なう部屋に蘭華がいつものように入ってきた。
そしてベンチに座って泣いていた俺の横に座る。
「調子どう?って剣也?」
俺の異変に気付いたのか、蘭華は俺のそばまでやってくる。
そして俺を慰めていた。
「剣也。ここで諦めたら駄目だよ。剣也がこの先に何を求めているのかは私には分からないよ。だけどね、私は剣也が元気に日常を送っている姿をもう1度見たいの。だから、絶対に諦めないで!」
彼女の叫びは俺の心の奥まで届いた。
そうだ。
俺はいつも送っている日常が好きだ。
そして、それは俺だけじゃないということを。
俺は涙で濡れた顔をタオルで拭い、顔を蘭華の方に向けた。
そして優しく微笑む。
「悪いな。俺はなんにもしてやれないっていうのに、いつもいつも助けて貰って。感謝し切れないほど俺は蘭華に感謝しているよ」
この言葉を最後まで聞く前に彼女の方から鼻をすする音が聞こえた。
どうやら彼女まで泣いてしまったようだ。
「って、何お前まで泣いてるだよ!」
「だって私、剣也には迷惑かけてばっかりで…。私にはこんなことくらいしか出来ないけど、それでも剣也は嬉しい?」
『こんなこと』と彼女は言うかもしれない。
でもそれがどれほど俺を救ってくれたことか。
「もちろん、俺は嬉しいよ。だから改めて言わせて欲しい。ありがとう」
すると彼女は涙を隠すために覆っていた手を膝について立ち上がる。
そして俺の方を振り返って、
「こちらこそ、ありがとう」
と言葉を返した。
「私、ジュース買ってくるね!」
そう言って、この部屋を勢いよく出ていった。
「おい、財布忘れてるぞ!」
言ったところで聞こえないだろうけど。
まぁ、『財布忘れちゃった』とか言って戻ってくるのがオチだろうが…。
その5分後、彼女は案の定財布を取りに帰ってきた。
3
俺はリハビリを頑張ったおかげで遂に退院出来るようになった。
これでようやく学校へ行けるとウキウキな気分で病院の自動ドアをくぐる。
ドアの外にいたのは、花束を持った黒髪ロングの少女。
幼馴染で、馬鹿で天然。
だけど心優しい、俺の大事な人。
その彼女が俺の目の前に来て、花束を差し出す。
「退院おめでとう!剣也!」
「ありがとうな!お前のおかげだよ」
俺は約3ヶ月ぶりの帰宅の途につくことになる。
でも、親が仕事の関係で迎えには来ていない。
歩いて帰らなければ行けなかった。
でもそんな嫌なこともリハビリと比べると雲泥の差に感じる。
帰る前に俺の見送りをしてくれた、医師と看護師にお礼の言葉を言った。
そして、蘭華にこう質問する。
「一緒に帰るか!」
「うん!行こっ!剣也」
俺達は快晴の空のもとを歩いていった。
蘭華。
彼女は俺の最高の幼馴染だ!
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