Re:legend
570:何もできなかった。
 気がつくと周りには何も存在しなかった。周囲には真っ白な空間が広がっているだけだった。
 歩いても走っても周囲はまったく変わらない真っ白な空間、気がついたら僕はそこにいたのだった。
 「ハルカ、エリカ、フラン、ニコルちゃん、アミちゃん、ヒナちゃん、ゆめみちゃん…みんなどこに……」
 最愛の人の名を次々と口にするが誰も返事をしない。当たり前だ。誰もここにいないのだから…
 「そうだ……ハルカ………ハルカは今どこに……」
  僕をこの空間に送り込んだのは間違いなくハルカとウィズだ。僕がいなくなった後ハルカとウィズはどうなったのか、それを知ることすらできない。
 今の僕は魔法も使えない、ハルカと並んで戦うことすらできない、大切な人を守ることすらできない。この空間において僕はあまりにも無力で何もできないただの無能だった。
 この何もできない空間で、ただみんなの心配をして己の無力さを憎んでもう、無理だと絶望に狩られあっという間に数日が過ぎ去った。
 この空間は突如崩壊を迎え真っ白な空間はパズルのかけらのようにボロボロになって崩れ落ち僕の前に光が現れた。
 僕はその光を震えながら掴んだ。
 戻った先に何が待っているのか、ハルカは、みんなは無事なのか、不安でいっぱいだったが僕は光を掴んだ。
 今からでもまだ間に合うかもしれない。ハルカは僕に未来を託してくれた。その期待に応えなければならない。その思いが僕を絶滅から解放した。
 僕は未来を掴んだ。掴んだ瞬間に僕の体は光に包まれてあの戦いから3日後のピュレットへと戻った。
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