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りゅう

556:戦陣乙女と堕天使









「ミカエラ様、一体何が……」
「敵襲です。あのお方達は歴代のヴァルキリーの長や優秀な戦士たち…おそらく『死霊』と『純血』の仕業でしょう。あれはもうヴァルキリーではない。闇に堕ちた堕天使です。英霊の魂を無下に扱う行為…許せません。全力で討ちますよ」

ミカエラは怒りに震える手で再び剣を握り堕天使となった英霊たちに向かって行く。

「ミカエラ様………敵は6人、こちら側で動けるのはミカエラ様と私、その他10名程度……勝ち目がない。動ける者に告げる。敵は私とミカエラ様で足止めする。まだ息のある者を連れてリュウ様の城まで逃げなさい…はやく!」

パラスアテナはそう指示を出して剣を抜きミカエラの後を追う。その場に残ったヴァルキリーたちはパラスアテナの指示どおり撤退を始めようと動けない者たちの救出に向かった。

「ミカエラ様、今現在他の者たちは撤退の準備をしております。撤退が完了するまで私たちで時間を稼ぎますよ」
「何を言っている。そんなことをして英霊たちが………いえ、あなたの言っていることの方が正しいわね。わかった。パラスアテナ、殲滅するつもりで時間稼ぎをしますよ」
「わかりました」

ミカエラとパラスアテナは意を決して剣を構え光の力を発動する。それに呼応するように堕天使たちは闇の力を発動した。

2つの光と6つの闇が対峙する。それは闇に支配された空間に光が灯る瞬間だった。神々しい翼を広げた2人の戦陣乙女は闇を光で照らしながら闇の根源を討つために剣を振るった。

僅かに灯る光を完全に断ち切るために6人の堕天使は闇を広げ光を完全に断とうとした。

光と闇、相反する力同士がぶつかり合い互いを潰し合う。力は拮抗していた。最後に勝ったのはその力に込めた思いだった。たった2本の剣、その剣には本人たちの思いだけでなく。この村に住むヴァルキリーたちの思い、そして、今、死して尚体を操られた英霊たちの思いが込められていたのだった。

思いの強さが傀儡を討ち取る瞬間だった。
闇に満たされていた空間は再び光に満たされ歓喜に包まれた。

2人の戦陣乙女が力を使い果して倒れていくのをまだ動ける者が受け止めて讃えた。

光が闇に勝った。そう思った瞬間だった。

だが、その時間は本当に短いものだった。

空間は再び闇に支配された。
先程とは比べ物にならないほどの絶望により光は再び闇に呑まれたのだった。













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