Re:legend
350:嫉妬の魔法
「白、大丈夫か?」
僕は風の魔女ウィルモアが寝ていた部屋に入りすぐに白の安否を確認する。
「うん。大丈夫だよ」
白はボケーとした表情で風の魔女ウィルモアのベッドの横に座っていた。
「とりあえず少し話してみたけど本当に何も覚えてないみたいだね…」
白が僕に言う。僕は白を部屋の隅まで連れて行き小さな声で話し始める。
「僕達を騙すための演技っていつ可能性はないのか?」
「たぶんないだろうね。それはウィルモアにとってのリスクが多すぎる。手練れの敵がわんさかいる中に1人で潜入しようとは思わないだろう…」
「まあ、そうだな…」
風の魔女ウィルモアを疑っていた僕は白の言葉を聞きその通りだなと納得する。となると風の魔女ウィルモアは本当に記憶を失っているのだろうか…僕は納得はしたがまだ確信は出来ていなかった。
「まあ、ヒナちゃんの魔法があればすぐにわかるよ。そのためにヒナちゃんを連れて来るように言ったんだから…」
「『嫉妬』の魔法か?」
「ああ、『嫉妬』の魔法は相手の心を読む魔法だ。だからヒナちゃんにはウィルモアが演技をしているか本当に記憶を失っているか手に取るようにわかるだろう」
相変わらず大罪シリーズの魔導書の魔法はチート級だな…僕はそう思いながらヒナちゃんに魔法を使うように頼む。
「わかりました」
ヒナちゃんはそう応えてすぐに『嫉妬』の魔法を発動させる。
「リュウさん…どうやら本当に記憶を失っているみたいです。彼女の頭の中ほとんど真っ白で何もありません。ただ不安で一杯って感じみたいです」
「そうか…ありがとう。それにしても便利な魔法だな…」
「あとで『強欲の書』に入れさせてあげますよ」
ちょいちょい、ミュージックプレーヤーに音楽を入れるみたいなノリで言わないでよ。僕は心の中でそう思いながらヒナちゃんに礼を言う。
「とりあえず、何か覚えていることはないか聞いてみるか…」
僕はそう言いベッドの上でキョトンとしている風の魔女ウィルモアの横に立つ。
「はじめましてって言えばいいのかな?僕はピュレット国王の涼宮竜、起きてすぐにこんなことを尋ねてしまい申し訳ないのですが、何か覚えていることはありませんか?」
僕は風の魔女ウィルモアにそう尋ねる。
「あなたが…ピュレットの王様…私が覚えていたのはピュレットという場所とあなたの名前のみです…」
「そうですか…」
僕には何故僕のことだけ覚えていたのか尋ねることはできなかった。
「とりあえず今日のところはゆっくり休んでください」
「はい。ご丁寧にありがとうございます」
僕の言葉を聞き風の魔女ウィルモアは軽く頭を下げて礼を言う。
僕達は部屋を出て今後の方針をきめることにする。
風の魔女ウィルモアの部屋の見張りはラハドさんに任せてその場を後にする。
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