銀狼転生記~助けた幼女と異世界放浪~
027 ~復讐者・後~
敵さんのことはロウに任せ、俺は里の奴らを里の中央から離れ た所へ、避難させていた。
「ガーゴ様! 一体何が起きているのです!?」
そう言って俺のいる所へ向かってくる老人が一人。
「ジゲルか。 丁度良い。里の奴らの中で、聖魔法が使える奴らを全員集めてくれ。」
「な、なんのために──」
「いいから急いでくれ!! ……頼む」
「っ!! 承知しました。ですが、後でしっかり説明はして貰いますぞ」
「ああ、わかってるさ」
そのとき、
グォォォォォォオオオオン!!!!
大気を震わす、獣の怒号が聞こえた。
始まったか……。
「これは、ロウ殿の?」
「そうだ」
俺は、怒号が聞こえた里の中央へ目を向ける。
──頼んだぞ。ロウ。
◆◆◆◆
「雌豚ですって!? 私を、バアル様の窮姫候補を馬鹿にするおつもりですか!!」
『ああ、そうだよ。雌豚。そのバアルって奴もただの女好きなんだろよ。そんな奴らにフィリ達は渡さん』
「この!! 私を馬鹿にするならまだしも、バアル様を愚弄するとは!! この不届き物! 万死に値します!!」
そう言って、エルシアは俺に向かって飛び込んで来た勢いそのままに、貫き手を放つ。
体を横に反らして回避。
『知るかぁ!!』
「グハッ!!」
バアル様、バアル様うるさいんじゃ!!
体当たりをかまして再び外へ吹き飛ばす。
今度は俺も、雨が降る外へと躍り出る。
その際に、フィリの護衛として分身γを部屋に残す。
『頼んだぞ、γ!!』
『承知した!』
ぬかるんだ地面に着地。
少し離れた所へエルシアが転がっている。
「くっ。バアル様の加護を得た私にダメージを与えるだけの膂力に、現し身を作り出す力、何もない場所から物を取り出す力。一体あなたは何者ですか?」
さっきの尻尾攻撃が痛むのか、腹を押さえながら立ち上がるエルシア。
『あ? 俺はフィリのお友達だ』
「あなたのような友達は、母親としてこちらから願い下げです」
『今更、母親面してんじゃねぇ。殺すぞ?』
目に殺気を込めて威圧する。
それを受けたエルシアは……。
「プッ……フフフッ」
笑った。
「あ。し、失礼…フフッ。スミマセン、あなたが本気で私を殺そうとしてらっしゃるので、つい……フフフッ」
『……』
俺が黙っていると、エルシアは腹を抱えて笑い出す。
「アハハハハッ! 今、私はスフィアに取り憑いている状態です。アハハッ!! つまり、私の本体は霊体。勿論、痛覚などはありますが死ぬことはありません。アハッ、お腹痛。既に死んでるんですから……フフッ。ということであなたは延々と、可愛いスフィアの体を痛めつけるしかないんですよ!! アハハハハハッ、滑稽ですっ!! アハハハハ─『知ってるさ』………はい?」
心底疑問だという風に俺を凝視するエルシア。
「何を…言ってるんです?」
『だから、知ってるって言ってんだ。お前が霊体だって事はな』
既に【鑑定】済みだ。
結果。
名前 スフィア・エアロ
種族 エルフ
状態 憑依(霊体)
となった。
スフィアはエルシアに取り憑かれてるって訳だ。
まあ、魔力感知に反応しにくかったのも、霊体的な物なら説明が着く、魂も反応しないしな。
「は、はったりです! 私が霊体だと知ってて、何故攻撃を加え続けていたのですか!! 気にくわないです! こうなったら、私のとっておきで呪い殺してあげましょう」
ちっ!! 何か来る!! 【魔力感知】の反応からして魔法か?
「苦しみ、悶え死になさい。呪術〈死〉」
そして、奴の魔法が放たれる。
が……。
……………。
ん? なんもおきねえぞ?
あいつ、何したんだ?
と、一番驚いたのはエルシアだったらしい。
「なっ!! 抵抗した!? バアル様の加護を得た即死効果の呪いですよ!? ありえません!!」
どうやら、エルシアのとっておきは俺によって抵抗され、不発に終わったらしい。
でも不思議だ。
俺の持つ無効系や耐性系のスキルで呪いを弾くような物はなかったはずだが……。
まあ、この際どうでも良いか。
あとだ、あと。
『今度はこっちの番だな。きっちり殺してやるよ』
「だから、言ってるじゃないですか!! あなたに私を殺す事は出来ません。私の呪いを抵抗したからって、調子に乗らないでくださ──っ!! 消えた!?」
『いんや、お前の後ろだよ』
「んなっ!! いつのまに──ギャァアアアアアアアア!!!!」
〈転移〉でエルシアの後ろへ回り込み、【影爪】で街灯で照らし出された奴の影に腕を叩き込んだ。
物理的な攻撃がスフィアを傷つけるなら、お前の精神へ直接攻撃するまでだ。
『さっさと、スフィアの中から出てけ。じゃねえと、この攻撃はお前の精神自体を破壊する』
まあ、精神にダメージを与えるだけの技だが、効果はてきめんだったみたいだ。
スフィアの体から、白い服をきた女が出て来る。
エルシアだ。
その容姿は貞子、金髪バージョンと言った所か?
……ん? 俺、お化け苦手なはずなんだがなんともねえな。
「はぁはぁ。もう許しませんよ! この姿になればさすがのあなたでも呪いを抵抗する事は出来なくなる。チェックメイトです!!」
『そっちがな』
「何を──」
エルシアを無視して、俺は、その場で咆哮する。
だが、先程の咆哮(怒号)とは違う。
【遠吠え】だ。
ウォオオオオオオオン!!!!
里に響き渡る銀狼の【遠吠え】
直後……。
空から落ちた極光がエルシアを包んだ。
いや、正確には……。
「なっ!! これは、聖魔法!! それもバアル様の加護ごと吹き飛ばすほどの……! あのガーゴイルの仕業ですか!!」
ああ、そうだ。
これは俺が、ガーさんに頼んどいた保険だ。
もし、俺の予想が当たって本当にお前が霊体だった時のな。
「くっ。意識が……薄れて……」
聖魔法に包まれたエルシアの姿が、だんだん薄くなっていく。
さあ、お別れだ。
『最期に言っておく。魔王バアルは俺が殺す。これは確定事項だ。フィリに手を出したことを後悔さしてやる』
「バ、バアル様──」
『それと、お前は母親失格だ。これからは、フィリのことは俺が責任を取って、一生守り続ける。だから、安心して逝ってくれ──お義母さん』
「こっの!!──」
俺の精一杯の皮肉を受け、エルシアは憤怒の表情を浮かべながら光の中へ溶け込むように消えていった。
それと同時にエルシアを包み込んでいた光も四散していく。
後には、スフィアの遺体が残された。
《一定量の経験値を取得 LV MAXになりました。》
《進化が可能です 進化しますか? YES/NO》
倒したみたいだな……。
どうやら、先の敵との戦闘で溜まっていた経験値がエルシアを倒したことでカンストしたみたいだ。
進化はまだしない。
もし、進化の際に俺の容姿が変わってしまえば、フィリ達に俺だと認識されないかもしれない。
それは避けておきたい。
その時だった。
『ありがとうございます。ロウさん』
スフィアの声が頭に響いたのだった。
「ガーゴ様! 一体何が起きているのです!?」
そう言って俺のいる所へ向かってくる老人が一人。
「ジゲルか。 丁度良い。里の奴らの中で、聖魔法が使える奴らを全員集めてくれ。」
「な、なんのために──」
「いいから急いでくれ!! ……頼む」
「っ!! 承知しました。ですが、後でしっかり説明はして貰いますぞ」
「ああ、わかってるさ」
そのとき、
グォォォォォォオオオオン!!!!
大気を震わす、獣の怒号が聞こえた。
始まったか……。
「これは、ロウ殿の?」
「そうだ」
俺は、怒号が聞こえた里の中央へ目を向ける。
──頼んだぞ。ロウ。
◆◆◆◆
「雌豚ですって!? 私を、バアル様の窮姫候補を馬鹿にするおつもりですか!!」
『ああ、そうだよ。雌豚。そのバアルって奴もただの女好きなんだろよ。そんな奴らにフィリ達は渡さん』
「この!! 私を馬鹿にするならまだしも、バアル様を愚弄するとは!! この不届き物! 万死に値します!!」
そう言って、エルシアは俺に向かって飛び込んで来た勢いそのままに、貫き手を放つ。
体を横に反らして回避。
『知るかぁ!!』
「グハッ!!」
バアル様、バアル様うるさいんじゃ!!
体当たりをかまして再び外へ吹き飛ばす。
今度は俺も、雨が降る外へと躍り出る。
その際に、フィリの護衛として分身γを部屋に残す。
『頼んだぞ、γ!!』
『承知した!』
ぬかるんだ地面に着地。
少し離れた所へエルシアが転がっている。
「くっ。バアル様の加護を得た私にダメージを与えるだけの膂力に、現し身を作り出す力、何もない場所から物を取り出す力。一体あなたは何者ですか?」
さっきの尻尾攻撃が痛むのか、腹を押さえながら立ち上がるエルシア。
『あ? 俺はフィリのお友達だ』
「あなたのような友達は、母親としてこちらから願い下げです」
『今更、母親面してんじゃねぇ。殺すぞ?』
目に殺気を込めて威圧する。
それを受けたエルシアは……。
「プッ……フフフッ」
笑った。
「あ。し、失礼…フフッ。スミマセン、あなたが本気で私を殺そうとしてらっしゃるので、つい……フフフッ」
『……』
俺が黙っていると、エルシアは腹を抱えて笑い出す。
「アハハハハッ! 今、私はスフィアに取り憑いている状態です。アハハッ!! つまり、私の本体は霊体。勿論、痛覚などはありますが死ぬことはありません。アハッ、お腹痛。既に死んでるんですから……フフッ。ということであなたは延々と、可愛いスフィアの体を痛めつけるしかないんですよ!! アハハハハハッ、滑稽ですっ!! アハハハハ─『知ってるさ』………はい?」
心底疑問だという風に俺を凝視するエルシア。
「何を…言ってるんです?」
『だから、知ってるって言ってんだ。お前が霊体だって事はな』
既に【鑑定】済みだ。
結果。
名前 スフィア・エアロ
種族 エルフ
状態 憑依(霊体)
となった。
スフィアはエルシアに取り憑かれてるって訳だ。
まあ、魔力感知に反応しにくかったのも、霊体的な物なら説明が着く、魂も反応しないしな。
「は、はったりです! 私が霊体だと知ってて、何故攻撃を加え続けていたのですか!! 気にくわないです! こうなったら、私のとっておきで呪い殺してあげましょう」
ちっ!! 何か来る!! 【魔力感知】の反応からして魔法か?
「苦しみ、悶え死になさい。呪術〈死〉」
そして、奴の魔法が放たれる。
が……。
……………。
ん? なんもおきねえぞ?
あいつ、何したんだ?
と、一番驚いたのはエルシアだったらしい。
「なっ!! 抵抗した!? バアル様の加護を得た即死効果の呪いですよ!? ありえません!!」
どうやら、エルシアのとっておきは俺によって抵抗され、不発に終わったらしい。
でも不思議だ。
俺の持つ無効系や耐性系のスキルで呪いを弾くような物はなかったはずだが……。
まあ、この際どうでも良いか。
あとだ、あと。
『今度はこっちの番だな。きっちり殺してやるよ』
「だから、言ってるじゃないですか!! あなたに私を殺す事は出来ません。私の呪いを抵抗したからって、調子に乗らないでくださ──っ!! 消えた!?」
『いんや、お前の後ろだよ』
「んなっ!! いつのまに──ギャァアアアアアアアア!!!!」
〈転移〉でエルシアの後ろへ回り込み、【影爪】で街灯で照らし出された奴の影に腕を叩き込んだ。
物理的な攻撃がスフィアを傷つけるなら、お前の精神へ直接攻撃するまでだ。
『さっさと、スフィアの中から出てけ。じゃねえと、この攻撃はお前の精神自体を破壊する』
まあ、精神にダメージを与えるだけの技だが、効果はてきめんだったみたいだ。
スフィアの体から、白い服をきた女が出て来る。
エルシアだ。
その容姿は貞子、金髪バージョンと言った所か?
……ん? 俺、お化け苦手なはずなんだがなんともねえな。
「はぁはぁ。もう許しませんよ! この姿になればさすがのあなたでも呪いを抵抗する事は出来なくなる。チェックメイトです!!」
『そっちがな』
「何を──」
エルシアを無視して、俺は、その場で咆哮する。
だが、先程の咆哮(怒号)とは違う。
【遠吠え】だ。
ウォオオオオオオオン!!!!
里に響き渡る銀狼の【遠吠え】
直後……。
空から落ちた極光がエルシアを包んだ。
いや、正確には……。
「なっ!! これは、聖魔法!! それもバアル様の加護ごと吹き飛ばすほどの……! あのガーゴイルの仕業ですか!!」
ああ、そうだ。
これは俺が、ガーさんに頼んどいた保険だ。
もし、俺の予想が当たって本当にお前が霊体だった時のな。
「くっ。意識が……薄れて……」
聖魔法に包まれたエルシアの姿が、だんだん薄くなっていく。
さあ、お別れだ。
『最期に言っておく。魔王バアルは俺が殺す。これは確定事項だ。フィリに手を出したことを後悔さしてやる』
「バ、バアル様──」
『それと、お前は母親失格だ。これからは、フィリのことは俺が責任を取って、一生守り続ける。だから、安心して逝ってくれ──お義母さん』
「こっの!!──」
俺の精一杯の皮肉を受け、エルシアは憤怒の表情を浮かべながら光の中へ溶け込むように消えていった。
それと同時にエルシアを包み込んでいた光も四散していく。
後には、スフィアの遺体が残された。
《一定量の経験値を取得 LV MAXになりました。》
《進化が可能です 進化しますか? YES/NO》
倒したみたいだな……。
どうやら、先の敵との戦闘で溜まっていた経験値がエルシアを倒したことでカンストしたみたいだ。
進化はまだしない。
もし、進化の際に俺の容姿が変わってしまえば、フィリ達に俺だと認識されないかもしれない。
それは避けておきたい。
その時だった。
『ありがとうございます。ロウさん』
スフィアの声が頭に響いたのだった。
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