TRICOLORE総務部ヒロインズ!〜もしも明日、会社が消滅するとしたら?!~
【1-4】自信家のナルシスト警報発令?!
*4*
田町の駅ナカを通り越した、隠れ家的カフェ・レストランは「ラビット・カフェ」の名で、海空のお気に入りである。
「混んでるわねえ」
プレミアム・セット《おかえりなさい》と書かれた看板のせいか、普段空いている窓際の席は満席だった。テーブルを寄せれば2人は座れる。(あのお客様がひとつずれてくれたらな)と見守っている海空の前で、鈴子が動いた。
鈴子はひょい、と歓談中の中年2人に顔を向け、ぱっきりと告げた。
「ナイスミドルなかたですよね? あのぉ、席、1つ譲って貰えますか?」
大した度胸である。しかし、品のよさげなナイスミドルは、直ぐに席を空けてくれた。
「ありがとうございます」と雪乃も丁寧に頭を下げて、テーブルをくっつけて、無事に四人席となった。
「あんたたち、大したもんねえ」
「えへ、一緒がいいじゃないですか」と鈴子は頬を緩めて、「さっきはありがとうございました」と頭を下げた。
「ああ、Excelの?」
「あんな小さな点に邪魔されるなんて。昨日は出来てたんですよ? あ、雪乃さん笑うけど、出来てたんです!」
〝昨日は〟
ふと海空は鈴子が一生懸命PCに向かっている姿を思い出す。あの時、関数と格闘していたのかと思うと可笑しくなった。
努力家の兆しは見えている。鈴子は、総務部に必要な素質を持っている。悩みの種は……考えごとに陥りそうになったところで、鈴子が頬を膨らませた。
「佐東主任まで」
「ほらあ、だって可笑しいもの。まあまあ、頑張ってたから見守ってました」
ぷくす、と頬を膨らませた鈴子を窘める雪乃はすっかり先輩の顔をしている。鈴子への対応はよいお姉さんだが、いずれ雪乃とは衝突せざるを得ないだろう。
まるで性格が違う。雪乃は海空を扱いかねていて、リンパが滞った血流のように流れを悪くする。
仕事とは、支え合いだ。だが、雪乃は一人で抱えてしまうタイプ。
出来ない、と差し出せない短所が仕事の流れを止めてしまう。ようは素直になるタイミングを考え倦ねているようで、その上で、秘書課へ異動を願っている。
――与えられた事を任されるから、仕事というのに。
「プレミアムサンドセット3つ」
三時の軽食には重そうなサンドイッチも、お昼をぶっ飛ばした業務の後の塩梅は良さそうで。頼んだ後で、値段に目玉を落としそうになった。
珈琲と、デラックスサンドで1200円。
珈琲はベトナムの最上級のブレンドを淹れてくれるらしいが、それにしても高すぎる。アベノミクスの言葉を浮かべたが、今日はそういう「経済活性化の日」。
「まあいい。日本経済の回転、手伝ってやるか。あんたたち、奢るから食べなさいな」
海空が数えで34歳、雪乃が24歳、鈴子が23歳。傍目から見ると、3姉妹のように見えるだろう。
「そういえば、営業二課の怒られリーマン……」鈴子は社内の人間をよく把握している。従ってフルネームがぽんと飛び出た。
(まずい)と海空は牽制に入った。総務部は職業上、社員の機密を知る機会が多い。冠婚葬祭、退職、昇進、勤怠……だからこそ、外での会社の話は気をつけねば大変なことになる。
例を挙げれば、「**部長、また離婚して保険解約しました? 給与天引きズレてます」だの、「**課長の行きつけってオカマバーなんだ。ママから暑中見舞い来てるけど、もしや」……弱味が勝手に飛び込んでくる。
13年の総務部所属の強者にはほとんどの社員の闇が見えてしまうのである。
だからこそ。
「社内の話は、外ではストップよ」
――と、「あ」と鈴子が本当に動作をストップした。続いて雪乃も動作をストップした。
「あんたたち、動作まで止めなくても。ん?」
続いて海空が振り返ると、まさに噂の渦中の「トイレトイレ王子様」が新聞を手に、テーブル席に座ったところではないか。
観葉植物の一番近くの奥の席は海空の特等席。空いていなかったからこっちに座ったのに。
ガラス板を挟んだ向かいに1つテーブル席があるが、気難しそうな女性がちょうど立ち上がったところだった。二人が何かを言いたそうに、海空を見やる。
海空ははふ、と息を吐くと、「確かに席、空いてるわねぇ……?」と謎かけ口調になった。
「ちょっと、あっちに移ってみません? ちょっとだけ」
「席、譲ってもらっておいて? 若者は恩を感じないって言われてもいいなら」
鷺原の観察には興味がない。
さっさとサンドイッチ詰めて、オフィス街を脱出したい。
「ちょっとだけ。ほら、お隣のおじさま帰るみたいですよ」
ちらっと目線を向けられたので、「さきほどはありがとうございました」と頭を下げた。
どうやら、若者の恩返しは出来たらしい。中年はにっこりと笑顔で頷いて去って行った。どこかのお偉いさんだろう。嫋やかな物腰と言動で判る。
偉い人物は、ある程度行くと神さまの如き穏やかな人格者が増えてくるものだ。やはり、上に立つにはそれなりの人徳があるとの話だろう。
「移動しましょ。ね? 佐東主任も」
雪乃が茶目っ気を出すと、鈴子も「そうそう。こんなチャンスないですもんね」と応援し始めた。
――どうしてこう、女の子は王子様タイプが好きなのか。海空から見れば、乾いて下がっているするめのようだ。(つまり、タイプではない)。しかし、どんな男か見るには絶好のチャンスだろう。あの峰山と二人で良くも耐えられる。
「すいません、席を移動していいですか」
こそっとウエイターを呼んで、三人でこそこそと席を移動した。ちょうどガラスはひび割れデザインで、観葉植物の影の隙間から鷺原を窺える絶好の位置。
「お待たせしましたぁ」
「しーっ!」三人で揃ってウエイターに合図を送り、「伏せ」の海空の号令で身を屈めた。
***
(見える?)
(ばっちりでーす!)
観葉植物越しに鷺原を伺うと、投げ出した足の片方にノートパソコンを置き、スマートフォンを机にセット。Bluetoothでモソモソ喋っている様子が窺えた。
「かっこいいなあ。仕事出来るよ、きっとあれ、英語よ」
チラチラと雪乃が妄想を交えて夢中で鷺原を眺めている。
良く似合うグレーのスーツのまま、指はひっきりなしにキーを打っている。
――と、とうとうBluetoothを外し、携帯を肩で挟んだ。どうやら商談。
切れ長の目は伏せられていて、考えを告げるときは手元で顎を押さえる癖があった。口元に手が行く男は要注意。自信家のナルシスト警報発令である。
(やっぱり男はセクシーに限るわ……)
(いや、雪乃。口元を押さえている男はデートDVの可能性が高いのよ? デートの最中に空腹で、缶蹴りながら引き返すわよ。もしくは腕を掴んで引き摺るか)
(あー、それはイヤンです。佐東さん。言われて見れば、意地悪そう……雪乃さん、Mですか)
(ばっ……静かにしなさいよ! 明日からリンゴって呼ぶよ? りょ、許さないかんね)
(りょ……)
(し、動いたわ)
頭を寄せ合う前で、鷺原はパタン、とノートパソコンを閉じると、新聞を持ってすっと消えた。
多分、トイレだろう。三人はようやく「伏せ」から「よし」になって上半身を起こして珈琲を飲み始めた。確かに美味しい。
「近くにトイレがあるから、またトイレかしらね。お腹壊してるって言ってたし」
「佐東さん、なんでそんなとこだけ聞いてんですか」三人で顔を見あわせたところで、ぽこ、ぽこ、ぽこ。と順番に頭に何かが跳ねた。
ぎょ、と振り返ると、鷺原が丸めた新聞紙を手で弾ませたところで。
「この俺に何か用事? 《《オモカワヒロインズ》》。ずっとPCの画面に映り込んでたんだよ。仕事邪魔されたあげく、気付いて吹き出すところだっただろ」
鷺原の背後ではサンドイッチを3皿持って来たはいいが、鷺原が邪魔で困っているウェイトレスの姿が見えた。
「こ、ここ、ここ来ませんかっ?」
積極的なのか、恥じらっているのか判らない雪乃の攻撃。「え? いいの? 勿論」と鷺原は席に戻ると、PCを抱えて戻って来たが、海空には先程の言葉に問いただしたい想いがあった。
オモカワヒロインズ。――である。なんという皮肉を。
テーブルには海空と鈴子、ソファには鷺原と雪乃が並んだ。が、鷺原が「こっちまだ空いてるけど?」などといい、鈴子が隣に移っていった。
結果、テーブルには海空一人、ソファでは雪乃と鈴子に挟まれて鷺原が座る構図。海空と鷺原を見れば、「俺、面談されてんの?」状態、雪乃と鷺原、鈴子を見れば「キャバクラ慣れした男」風味である。
何と堂々と女の間に座るのだろうと思っていると、「お代わり要ります?」と雪乃がお水を取りに席を離れていった。
「オモカワヒロインズって何よ。トリコロールならまだしも」
ちゅる、とアイスコーヒーをすすりながらじとっと睨むと、鷺原は軽快な声で笑った。
出来る……とお局の審美眼がギラリと光る。営業は第一声で決まる。こんなに明るく挨拶されたら、誰だって門戸を開いてしまうだろう。因みに、オモカワヒロインズについて、鷺原は自分で告げておいて、自分で受けた様子だった。
爽やかな声音で、鷺原はまず「オモシロ」と海空を指した。
次に「カワイイ」と戻って来た雪乃。
「ヒロイン?」とは鈴子である。
「ちょっと! なんであたしがオモシロなのよ!」腰を浮かせて机を叩いた前では、
「えっ? カワイイ?」
「ヒロイン? りょ!」
ご満悦な雪乃と鈴子の二人に気圧されて、海空は(ま、いっか)と座り直した。
一人っ子の海空にとっては、雪乃と鈴子は妹のような気さえしていた。妹を想う姉の顔を考えれば、きっと海空になる。
しかし、この男、出来すぎて胡散臭い。数度の会議で、人事部の峰山と何を話しているのだろうと海空は鷺原をしばし観察する判断をした。
田町の駅ナカを通り越した、隠れ家的カフェ・レストランは「ラビット・カフェ」の名で、海空のお気に入りである。
「混んでるわねえ」
プレミアム・セット《おかえりなさい》と書かれた看板のせいか、普段空いている窓際の席は満席だった。テーブルを寄せれば2人は座れる。(あのお客様がひとつずれてくれたらな)と見守っている海空の前で、鈴子が動いた。
鈴子はひょい、と歓談中の中年2人に顔を向け、ぱっきりと告げた。
「ナイスミドルなかたですよね? あのぉ、席、1つ譲って貰えますか?」
大した度胸である。しかし、品のよさげなナイスミドルは、直ぐに席を空けてくれた。
「ありがとうございます」と雪乃も丁寧に頭を下げて、テーブルをくっつけて、無事に四人席となった。
「あんたたち、大したもんねえ」
「えへ、一緒がいいじゃないですか」と鈴子は頬を緩めて、「さっきはありがとうございました」と頭を下げた。
「ああ、Excelの?」
「あんな小さな点に邪魔されるなんて。昨日は出来てたんですよ? あ、雪乃さん笑うけど、出来てたんです!」
〝昨日は〟
ふと海空は鈴子が一生懸命PCに向かっている姿を思い出す。あの時、関数と格闘していたのかと思うと可笑しくなった。
努力家の兆しは見えている。鈴子は、総務部に必要な素質を持っている。悩みの種は……考えごとに陥りそうになったところで、鈴子が頬を膨らませた。
「佐東主任まで」
「ほらあ、だって可笑しいもの。まあまあ、頑張ってたから見守ってました」
ぷくす、と頬を膨らませた鈴子を窘める雪乃はすっかり先輩の顔をしている。鈴子への対応はよいお姉さんだが、いずれ雪乃とは衝突せざるを得ないだろう。
まるで性格が違う。雪乃は海空を扱いかねていて、リンパが滞った血流のように流れを悪くする。
仕事とは、支え合いだ。だが、雪乃は一人で抱えてしまうタイプ。
出来ない、と差し出せない短所が仕事の流れを止めてしまう。ようは素直になるタイミングを考え倦ねているようで、その上で、秘書課へ異動を願っている。
――与えられた事を任されるから、仕事というのに。
「プレミアムサンドセット3つ」
三時の軽食には重そうなサンドイッチも、お昼をぶっ飛ばした業務の後の塩梅は良さそうで。頼んだ後で、値段に目玉を落としそうになった。
珈琲と、デラックスサンドで1200円。
珈琲はベトナムの最上級のブレンドを淹れてくれるらしいが、それにしても高すぎる。アベノミクスの言葉を浮かべたが、今日はそういう「経済活性化の日」。
「まあいい。日本経済の回転、手伝ってやるか。あんたたち、奢るから食べなさいな」
海空が数えで34歳、雪乃が24歳、鈴子が23歳。傍目から見ると、3姉妹のように見えるだろう。
「そういえば、営業二課の怒られリーマン……」鈴子は社内の人間をよく把握している。従ってフルネームがぽんと飛び出た。
(まずい)と海空は牽制に入った。総務部は職業上、社員の機密を知る機会が多い。冠婚葬祭、退職、昇進、勤怠……だからこそ、外での会社の話は気をつけねば大変なことになる。
例を挙げれば、「**部長、また離婚して保険解約しました? 給与天引きズレてます」だの、「**課長の行きつけってオカマバーなんだ。ママから暑中見舞い来てるけど、もしや」……弱味が勝手に飛び込んでくる。
13年の総務部所属の強者にはほとんどの社員の闇が見えてしまうのである。
だからこそ。
「社内の話は、外ではストップよ」
――と、「あ」と鈴子が本当に動作をストップした。続いて雪乃も動作をストップした。
「あんたたち、動作まで止めなくても。ん?」
続いて海空が振り返ると、まさに噂の渦中の「トイレトイレ王子様」が新聞を手に、テーブル席に座ったところではないか。
観葉植物の一番近くの奥の席は海空の特等席。空いていなかったからこっちに座ったのに。
ガラス板を挟んだ向かいに1つテーブル席があるが、気難しそうな女性がちょうど立ち上がったところだった。二人が何かを言いたそうに、海空を見やる。
海空ははふ、と息を吐くと、「確かに席、空いてるわねぇ……?」と謎かけ口調になった。
「ちょっと、あっちに移ってみません? ちょっとだけ」
「席、譲ってもらっておいて? 若者は恩を感じないって言われてもいいなら」
鷺原の観察には興味がない。
さっさとサンドイッチ詰めて、オフィス街を脱出したい。
「ちょっとだけ。ほら、お隣のおじさま帰るみたいですよ」
ちらっと目線を向けられたので、「さきほどはありがとうございました」と頭を下げた。
どうやら、若者の恩返しは出来たらしい。中年はにっこりと笑顔で頷いて去って行った。どこかのお偉いさんだろう。嫋やかな物腰と言動で判る。
偉い人物は、ある程度行くと神さまの如き穏やかな人格者が増えてくるものだ。やはり、上に立つにはそれなりの人徳があるとの話だろう。
「移動しましょ。ね? 佐東主任も」
雪乃が茶目っ気を出すと、鈴子も「そうそう。こんなチャンスないですもんね」と応援し始めた。
――どうしてこう、女の子は王子様タイプが好きなのか。海空から見れば、乾いて下がっているするめのようだ。(つまり、タイプではない)。しかし、どんな男か見るには絶好のチャンスだろう。あの峰山と二人で良くも耐えられる。
「すいません、席を移動していいですか」
こそっとウエイターを呼んで、三人でこそこそと席を移動した。ちょうどガラスはひび割れデザインで、観葉植物の影の隙間から鷺原を窺える絶好の位置。
「お待たせしましたぁ」
「しーっ!」三人で揃ってウエイターに合図を送り、「伏せ」の海空の号令で身を屈めた。
***
(見える?)
(ばっちりでーす!)
観葉植物越しに鷺原を伺うと、投げ出した足の片方にノートパソコンを置き、スマートフォンを机にセット。Bluetoothでモソモソ喋っている様子が窺えた。
「かっこいいなあ。仕事出来るよ、きっとあれ、英語よ」
チラチラと雪乃が妄想を交えて夢中で鷺原を眺めている。
良く似合うグレーのスーツのまま、指はひっきりなしにキーを打っている。
――と、とうとうBluetoothを外し、携帯を肩で挟んだ。どうやら商談。
切れ長の目は伏せられていて、考えを告げるときは手元で顎を押さえる癖があった。口元に手が行く男は要注意。自信家のナルシスト警報発令である。
(やっぱり男はセクシーに限るわ……)
(いや、雪乃。口元を押さえている男はデートDVの可能性が高いのよ? デートの最中に空腹で、缶蹴りながら引き返すわよ。もしくは腕を掴んで引き摺るか)
(あー、それはイヤンです。佐東さん。言われて見れば、意地悪そう……雪乃さん、Mですか)
(ばっ……静かにしなさいよ! 明日からリンゴって呼ぶよ? りょ、許さないかんね)
(りょ……)
(し、動いたわ)
頭を寄せ合う前で、鷺原はパタン、とノートパソコンを閉じると、新聞を持ってすっと消えた。
多分、トイレだろう。三人はようやく「伏せ」から「よし」になって上半身を起こして珈琲を飲み始めた。確かに美味しい。
「近くにトイレがあるから、またトイレかしらね。お腹壊してるって言ってたし」
「佐東さん、なんでそんなとこだけ聞いてんですか」三人で顔を見あわせたところで、ぽこ、ぽこ、ぽこ。と順番に頭に何かが跳ねた。
ぎょ、と振り返ると、鷺原が丸めた新聞紙を手で弾ませたところで。
「この俺に何か用事? 《《オモカワヒロインズ》》。ずっとPCの画面に映り込んでたんだよ。仕事邪魔されたあげく、気付いて吹き出すところだっただろ」
鷺原の背後ではサンドイッチを3皿持って来たはいいが、鷺原が邪魔で困っているウェイトレスの姿が見えた。
「こ、ここ、ここ来ませんかっ?」
積極的なのか、恥じらっているのか判らない雪乃の攻撃。「え? いいの? 勿論」と鷺原は席に戻ると、PCを抱えて戻って来たが、海空には先程の言葉に問いただしたい想いがあった。
オモカワヒロインズ。――である。なんという皮肉を。
テーブルには海空と鈴子、ソファには鷺原と雪乃が並んだ。が、鷺原が「こっちまだ空いてるけど?」などといい、鈴子が隣に移っていった。
結果、テーブルには海空一人、ソファでは雪乃と鈴子に挟まれて鷺原が座る構図。海空と鷺原を見れば、「俺、面談されてんの?」状態、雪乃と鷺原、鈴子を見れば「キャバクラ慣れした男」風味である。
何と堂々と女の間に座るのだろうと思っていると、「お代わり要ります?」と雪乃がお水を取りに席を離れていった。
「オモカワヒロインズって何よ。トリコロールならまだしも」
ちゅる、とアイスコーヒーをすすりながらじとっと睨むと、鷺原は軽快な声で笑った。
出来る……とお局の審美眼がギラリと光る。営業は第一声で決まる。こんなに明るく挨拶されたら、誰だって門戸を開いてしまうだろう。因みに、オモカワヒロインズについて、鷺原は自分で告げておいて、自分で受けた様子だった。
爽やかな声音で、鷺原はまず「オモシロ」と海空を指した。
次に「カワイイ」と戻って来た雪乃。
「ヒロイン?」とは鈴子である。
「ちょっと! なんであたしがオモシロなのよ!」腰を浮かせて机を叩いた前では、
「えっ? カワイイ?」
「ヒロイン? りょ!」
ご満悦な雪乃と鈴子の二人に気圧されて、海空は(ま、いっか)と座り直した。
一人っ子の海空にとっては、雪乃と鈴子は妹のような気さえしていた。妹を想う姉の顔を考えれば、きっと海空になる。
しかし、この男、出来すぎて胡散臭い。数度の会議で、人事部の峰山と何を話しているのだろうと海空は鷺原をしばし観察する判断をした。
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