TRICOLORE総務部ヒロインズ!〜もしも明日、会社が消滅するとしたら?!~
【1-3】総務部お局のお掃除テク?!
大きなガラスに仕切られたビルは、規模的に大きく、田町の立地条件もそこそこいい。都内きっての巨大オフィス駅。数年前の大々的な工事改革で、駅は拡張されて、便利なんだか、不便なんだか判らないほど入り組んではいるが、喫茶店が多く、会社員には好まれる場所である。
羽山・カンパニーはビル群の南端の「サウスポート・エリア」にあった。オープンフロアの一階には仕切りはなく、フリースペースの簡易机は駆け込みでの営業用。しかし、総務部はデスクを与えられていた。
ちょうどガラス窓の横。階段を登ると、土盛りした玄関と受付がある。地下倉庫と仲良しの総務部は地下一階のちょっと上にあるが、日当たりは良好。
「戻りました。課長?」
雪乃と鈴子が戻ると、尾城林はデスクに顔を近づけて、必死でプリントを剥がしていた。佐東海空の姿は見えない。
「佐東主任、いないね。鈴子、あんたが怒らせたんじゃないの?」
鈴子は唇を引き結んでぶんぶんと首を左右に振りまくった。後で、「あ」と尾城林に気付いていそいそと机に向かっていった。
「かちょお~、何してるんですかぁ?」
鈴子は手を背中で組んで、ぴょこ、とトレードマークのゆるヘアーを肩から零れさせて、尾城林を覗き込んだ。
「何してるんだろうなぁ~?」「なにしてるんでしょね~」とB型同士の息ぴったりで、尾城林も同じポーズを取ってみせる。(鈴子に甘い!)と思いつつも、雪乃も毅然と机に寄った。尾城林の机には貼り付けられたプリント。四方丁寧にガムテープで貼られている。
「ガムテープ?」
「どこかの陰険お局がしっかり貼り付けてご立腹だよ。全く。長いとこういう嫌がらせも群を抜いていくんだからやんなるよ。おまえらはあんなお局にはなるなよ。プレミアム・フライデーに何してくれやがるんだか、くそ、ベタベタじゃねーかぁ。やってられん」
雪乃はちらっと尾城林が懸命に剥がしているプリントを見詰めた。誤字1つない。怒りで打ったに違いないのに、細部まで丁寧だ。海空は仕事に手を抜かない。
ちらっと机を見ると、散らかしたままの書類は見当たらなかった。
(あたしの仕事も、やってある)机に綺麗に束ねられたファイルチェックも終わっているし、鈴子の投げっぱなしだった領収書の束も、日付ごとに束ねられている。
時折、思う。佐東海空はもっと仕事ができるのだろうと。そして、雪乃はめでたく秘書課へ異動でいい。
「ガムテープは、剥がれた跡が最悪なんだよ。机にモノ、置けねーよ」
こういう嫌がらせも、仕事ができる故か。「あたしも手伝います~」と鈴子が並んだところで、影が過ぎった。
「あ、佐東さん」海空はコンビニの袋を下げて戻って来た。ガサガサと、手を突っ込んで、どん、と置かれたはネイルの除光液。
「どきなさいよ」と海空は除光液のキャップを飛ばすと、尾城林の机に吹っかけた。暫くしてティッシュで拭き取ると、机は綺麗になった。
「おー。総務部お局のお掃除テク」尾城林は驚いているが、元は海空の悪戯である。
「すっごぉい。綺麗に剥がれるんですねえ」と驚く鈴子に海空はふんぞり返った。
「これ、買いに行ってたのよ。あんたたち、仕事投げっぱなしで王子様なんか観に行って! 秘書課にまた厭味言われるっつーの。時計」
海空は時計を見やると、肩を落とした。時刻はもう13時を廻っている。
「こりゃ、アンニュイマンデー決定だわ」呟いて机に座った。
――アンニュイマンデーとは、知る人ぞ知る、プレミアム・フライデーを満喫できない庶民に向けられたピザ屋の心尽くしである。
「ピザが安く食べられるわ……最悪」
数年前から飾ってあるらしい『個性大事!』と書かれた色紙の飾られたデスクは、壁際に尾城林、海空をお誕生日席にして、それぞれ雪乃と鈴子が向かい合って座る。
「その色紙、邪魔なんですけど」
「これは総務部の歴史なの。ずっと置いてある」と海空は微笑んだ。ガムテープの嫌がらせなど、もう頭から吹き飛ばしたに違いない。
***
「――で、どうだったのよ? トイレの王子様は」ニヤニヤと聞かれた処を観ると、ゴシップ的に興味はあるらしいが、雪乃は唇をへの字に曲げた。
収穫はなかったが、それを海空に言うには、雪乃は負けず嫌いすぎる。
「峰山が扉まで取りに来て、さっさと持っていきました~」とは素直な鈴子。
「まるで隠しているみたいにね。で、あたし気付いたんですけど、ゲストカードがあったなって」
「もう調べたわよ。名前は鷺原」海空はぴっとメモを切って指に挟んだ。
「詐欺?」イントネーションで確実に違う名前を告げた雪乃に、海空は「違うわよ」と付け加える。「鳥の鷺に、野原の原。名前は分からなかったな」
「そこのトリコロール、ゲストの情報漏洩すんじゃない」
注意喚起した尾城林など無視して、海空はまた椅子を戻した。
「怪しいと思わない? 人事部長がヒソヒソ。なんの用件か、気になるわね」
「大層な美形でしたもんね。トイレの王子様……」夢見がちな雪乃はほう、と目を遠くにした。また夢想しているのだろうと、海空は放置した。
「ミステリ始まっちゃう?」とは鈴子である。
「始まらないわよ、峰山だもん。精々コメディよ」総務部トリコロールは一度海空が話始めると、全員の手が止まる。
「おい、仕事しろ、誰かの内線鳴ってるぞ、出ろ」
電話が鳴った。しかし三人ともワンテンポ遅らせて、電話を掛けるフリをしたり、受話器が取れないフリをしたりの各々のテクニックを駆使して見事に誤魔化した。すると、呆れた尾城林が受話に勤しむ嵌めになる。
尾城林は電話が巧い。年も四十路前で、男盛りの肉好きだ。
巧くやり過ごした三人はまた顔を突き合わせるようにして、前のめりになった。
「ここ数ヶ月なのよね。全部峰山と会議してるみたいで」
会話の途中で「俺ちょっと外すぞ」と尾城林が席を立ち、フロアを出て行った。
「呼び出されちゃいましたよ、かちょお」
「気にしなくていいわよ。責任者は責任取るためにいるのよ。あーあー、予定の仕事、あんたたち終わってないでしょ。ある程度やっといたから、各自仕上げて」
「はーい」
素直な二人の仕事を睨んでいた海空だが、恐らくぎりぎりで終わるだろう。全てを片付けるよりは、仕事の完成の醍醐味を何度も教え込んで、美味しいところを取らせてやる。
――すると、完成に味をしめて、仕事が早くなる。
要は、ゴールや着地点を示してやることで、その道筋もくっきりとしてくる。流れで言えば「魚の目」、「鳥の目」の誘導は、海空の仕事だ。既に雪乃は流れを掴み、出来る範疇も増えて来たが、問題は、鈴子。新卒で社会経験が浅いので、出来る作業が少ない。
「ふええん」と今もExcelと格闘中である。「鈴子、Excel先生と戯れてないで、さっさとして」雪乃の声に涙声で、「関数が入らないんですぅ」と甘え始めた。ちらっと雪乃が海空を伺ったが、海空はデスクの書類を手にして知らんぷりを決め込む。「つめたい」と言われても、それが鈴子の為だからだ。
「お手上げ?」と聞くと、鈴子は涙目で頷いた。「どれ」とみれば、簡単なsubTotalの関数。セルの中の数式に、余計なコンマが入ったため、計算式が成り立っていない。
「――ここよぉくみて?」
「あ」と鈴子はセルの中の点に気付いた。関数1つ扱えない。それでも、鈴子は総務部に適任の能力がある。数十に分かれた部署の、それぞれの部署長の名前を1日で覚える脅威の名前記憶力。社内で名前を間違えずに呼ぶので、早くも可愛がられている。
「さあさあ、さっさと仕上げてメール!」
何でも屋じゃないんだよ! と言いたくなるほどの雑用をそれぞれの部署にメールして、タイムオーバー。
「社員のみなさん、今日はプレミアム・フライデーです」
PC全面に黄色のにこにこマークが立ち上がれば、どんなにウシガエルたちがブーブー言っても、業務は終了。
駅ナカのビールを飲んだり、余裕噛まして買い物をしたりの時間になる。
「あたし、『ラビット・カフェ』行くけど、あんたたちはどうする?」
コートを羽織りながら聞くと、二人とも「あたしたちも行きます」と来た。階段を上がってすぐのエントランスには、営業部の群れ。「あ、トリコロール」の声に三人で揃って手を振る。
海空、雪乃、鈴子の順番に並んで、広いエントランスを横切ると、峰山の姿が見えた。近くには着飾った秘書課トリオに足元には旅行トランク。海空と雪乃は同時にムスっと表情を硬くする。
「峰山だわ。良く逢うわね。人事部暇なの?」
「秘書課もなんなのよ。ああ、これからご旅行ですか。いいわねえ。あいつらやっぱり旅行の話しかしてないわ」
「ガムテープ やり過ぎですよ」
「他にも技はあるわよ。そうね。大切なプリントの裏を鉛筆で塗って置いて、カーボンしちゃうとか? 出来損ないがあたしの上っていうのが気に入らない。まして尾城林。あたしは絶対許さない」
海空の標的は尾城林である。
「なんのヘマしたのか、探るのも面白いかも」
「やめてあげてくださーい」は鈴子。二人で振り返ると、鈴子は「かちょおが可哀想」と目玉を落としそうな台詞を吐いて見せた。
「誰も、そういう秘密は探られたくないと思う。そんな話してるお二人、きらい。鬼」
「その後を言ってみなさいよ? ホラホラ」
海空は鈴子のふにゃふにゃの頬を両手で包んでうりうりと動かした。鈴子は「ぷは」と海空から逃れて、雪乃の背中にちょこんと隠れた。
海空はふ、と笑って背中を向けた。
「とりあえず無理やり会社を出されたトリコロール総務部は遅いランチとシャレ込みますか! 奢って欲しいひと、ついておいで!」
「はあい!」と鈴子。雪乃ももちろん同伴である。
羽山・カンパニーはビル群の南端の「サウスポート・エリア」にあった。オープンフロアの一階には仕切りはなく、フリースペースの簡易机は駆け込みでの営業用。しかし、総務部はデスクを与えられていた。
ちょうどガラス窓の横。階段を登ると、土盛りした玄関と受付がある。地下倉庫と仲良しの総務部は地下一階のちょっと上にあるが、日当たりは良好。
「戻りました。課長?」
雪乃と鈴子が戻ると、尾城林はデスクに顔を近づけて、必死でプリントを剥がしていた。佐東海空の姿は見えない。
「佐東主任、いないね。鈴子、あんたが怒らせたんじゃないの?」
鈴子は唇を引き結んでぶんぶんと首を左右に振りまくった。後で、「あ」と尾城林に気付いていそいそと机に向かっていった。
「かちょお~、何してるんですかぁ?」
鈴子は手を背中で組んで、ぴょこ、とトレードマークのゆるヘアーを肩から零れさせて、尾城林を覗き込んだ。
「何してるんだろうなぁ~?」「なにしてるんでしょね~」とB型同士の息ぴったりで、尾城林も同じポーズを取ってみせる。(鈴子に甘い!)と思いつつも、雪乃も毅然と机に寄った。尾城林の机には貼り付けられたプリント。四方丁寧にガムテープで貼られている。
「ガムテープ?」
「どこかの陰険お局がしっかり貼り付けてご立腹だよ。全く。長いとこういう嫌がらせも群を抜いていくんだからやんなるよ。おまえらはあんなお局にはなるなよ。プレミアム・フライデーに何してくれやがるんだか、くそ、ベタベタじゃねーかぁ。やってられん」
雪乃はちらっと尾城林が懸命に剥がしているプリントを見詰めた。誤字1つない。怒りで打ったに違いないのに、細部まで丁寧だ。海空は仕事に手を抜かない。
ちらっと机を見ると、散らかしたままの書類は見当たらなかった。
(あたしの仕事も、やってある)机に綺麗に束ねられたファイルチェックも終わっているし、鈴子の投げっぱなしだった領収書の束も、日付ごとに束ねられている。
時折、思う。佐東海空はもっと仕事ができるのだろうと。そして、雪乃はめでたく秘書課へ異動でいい。
「ガムテープは、剥がれた跡が最悪なんだよ。机にモノ、置けねーよ」
こういう嫌がらせも、仕事ができる故か。「あたしも手伝います~」と鈴子が並んだところで、影が過ぎった。
「あ、佐東さん」海空はコンビニの袋を下げて戻って来た。ガサガサと、手を突っ込んで、どん、と置かれたはネイルの除光液。
「どきなさいよ」と海空は除光液のキャップを飛ばすと、尾城林の机に吹っかけた。暫くしてティッシュで拭き取ると、机は綺麗になった。
「おー。総務部お局のお掃除テク」尾城林は驚いているが、元は海空の悪戯である。
「すっごぉい。綺麗に剥がれるんですねえ」と驚く鈴子に海空はふんぞり返った。
「これ、買いに行ってたのよ。あんたたち、仕事投げっぱなしで王子様なんか観に行って! 秘書課にまた厭味言われるっつーの。時計」
海空は時計を見やると、肩を落とした。時刻はもう13時を廻っている。
「こりゃ、アンニュイマンデー決定だわ」呟いて机に座った。
――アンニュイマンデーとは、知る人ぞ知る、プレミアム・フライデーを満喫できない庶民に向けられたピザ屋の心尽くしである。
「ピザが安く食べられるわ……最悪」
数年前から飾ってあるらしい『個性大事!』と書かれた色紙の飾られたデスクは、壁際に尾城林、海空をお誕生日席にして、それぞれ雪乃と鈴子が向かい合って座る。
「その色紙、邪魔なんですけど」
「これは総務部の歴史なの。ずっと置いてある」と海空は微笑んだ。ガムテープの嫌がらせなど、もう頭から吹き飛ばしたに違いない。
***
「――で、どうだったのよ? トイレの王子様は」ニヤニヤと聞かれた処を観ると、ゴシップ的に興味はあるらしいが、雪乃は唇をへの字に曲げた。
収穫はなかったが、それを海空に言うには、雪乃は負けず嫌いすぎる。
「峰山が扉まで取りに来て、さっさと持っていきました~」とは素直な鈴子。
「まるで隠しているみたいにね。で、あたし気付いたんですけど、ゲストカードがあったなって」
「もう調べたわよ。名前は鷺原」海空はぴっとメモを切って指に挟んだ。
「詐欺?」イントネーションで確実に違う名前を告げた雪乃に、海空は「違うわよ」と付け加える。「鳥の鷺に、野原の原。名前は分からなかったな」
「そこのトリコロール、ゲストの情報漏洩すんじゃない」
注意喚起した尾城林など無視して、海空はまた椅子を戻した。
「怪しいと思わない? 人事部長がヒソヒソ。なんの用件か、気になるわね」
「大層な美形でしたもんね。トイレの王子様……」夢見がちな雪乃はほう、と目を遠くにした。また夢想しているのだろうと、海空は放置した。
「ミステリ始まっちゃう?」とは鈴子である。
「始まらないわよ、峰山だもん。精々コメディよ」総務部トリコロールは一度海空が話始めると、全員の手が止まる。
「おい、仕事しろ、誰かの内線鳴ってるぞ、出ろ」
電話が鳴った。しかし三人ともワンテンポ遅らせて、電話を掛けるフリをしたり、受話器が取れないフリをしたりの各々のテクニックを駆使して見事に誤魔化した。すると、呆れた尾城林が受話に勤しむ嵌めになる。
尾城林は電話が巧い。年も四十路前で、男盛りの肉好きだ。
巧くやり過ごした三人はまた顔を突き合わせるようにして、前のめりになった。
「ここ数ヶ月なのよね。全部峰山と会議してるみたいで」
会話の途中で「俺ちょっと外すぞ」と尾城林が席を立ち、フロアを出て行った。
「呼び出されちゃいましたよ、かちょお」
「気にしなくていいわよ。責任者は責任取るためにいるのよ。あーあー、予定の仕事、あんたたち終わってないでしょ。ある程度やっといたから、各自仕上げて」
「はーい」
素直な二人の仕事を睨んでいた海空だが、恐らくぎりぎりで終わるだろう。全てを片付けるよりは、仕事の完成の醍醐味を何度も教え込んで、美味しいところを取らせてやる。
――すると、完成に味をしめて、仕事が早くなる。
要は、ゴールや着地点を示してやることで、その道筋もくっきりとしてくる。流れで言えば「魚の目」、「鳥の目」の誘導は、海空の仕事だ。既に雪乃は流れを掴み、出来る範疇も増えて来たが、問題は、鈴子。新卒で社会経験が浅いので、出来る作業が少ない。
「ふええん」と今もExcelと格闘中である。「鈴子、Excel先生と戯れてないで、さっさとして」雪乃の声に涙声で、「関数が入らないんですぅ」と甘え始めた。ちらっと雪乃が海空を伺ったが、海空はデスクの書類を手にして知らんぷりを決め込む。「つめたい」と言われても、それが鈴子の為だからだ。
「お手上げ?」と聞くと、鈴子は涙目で頷いた。「どれ」とみれば、簡単なsubTotalの関数。セルの中の数式に、余計なコンマが入ったため、計算式が成り立っていない。
「――ここよぉくみて?」
「あ」と鈴子はセルの中の点に気付いた。関数1つ扱えない。それでも、鈴子は総務部に適任の能力がある。数十に分かれた部署の、それぞれの部署長の名前を1日で覚える脅威の名前記憶力。社内で名前を間違えずに呼ぶので、早くも可愛がられている。
「さあさあ、さっさと仕上げてメール!」
何でも屋じゃないんだよ! と言いたくなるほどの雑用をそれぞれの部署にメールして、タイムオーバー。
「社員のみなさん、今日はプレミアム・フライデーです」
PC全面に黄色のにこにこマークが立ち上がれば、どんなにウシガエルたちがブーブー言っても、業務は終了。
駅ナカのビールを飲んだり、余裕噛まして買い物をしたりの時間になる。
「あたし、『ラビット・カフェ』行くけど、あんたたちはどうする?」
コートを羽織りながら聞くと、二人とも「あたしたちも行きます」と来た。階段を上がってすぐのエントランスには、営業部の群れ。「あ、トリコロール」の声に三人で揃って手を振る。
海空、雪乃、鈴子の順番に並んで、広いエントランスを横切ると、峰山の姿が見えた。近くには着飾った秘書課トリオに足元には旅行トランク。海空と雪乃は同時にムスっと表情を硬くする。
「峰山だわ。良く逢うわね。人事部暇なの?」
「秘書課もなんなのよ。ああ、これからご旅行ですか。いいわねえ。あいつらやっぱり旅行の話しかしてないわ」
「ガムテープ やり過ぎですよ」
「他にも技はあるわよ。そうね。大切なプリントの裏を鉛筆で塗って置いて、カーボンしちゃうとか? 出来損ないがあたしの上っていうのが気に入らない。まして尾城林。あたしは絶対許さない」
海空の標的は尾城林である。
「なんのヘマしたのか、探るのも面白いかも」
「やめてあげてくださーい」は鈴子。二人で振り返ると、鈴子は「かちょおが可哀想」と目玉を落としそうな台詞を吐いて見せた。
「誰も、そういう秘密は探られたくないと思う。そんな話してるお二人、きらい。鬼」
「その後を言ってみなさいよ? ホラホラ」
海空は鈴子のふにゃふにゃの頬を両手で包んでうりうりと動かした。鈴子は「ぷは」と海空から逃れて、雪乃の背中にちょこんと隠れた。
海空はふ、と笑って背中を向けた。
「とりあえず無理やり会社を出されたトリコロール総務部は遅いランチとシャレ込みますか! 奢って欲しいひと、ついておいで!」
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