支配し破壊する我こそが暴君である

「安心しろ、あんたは俺が止めてやる。まぁ最悪殺すけど」

薄情だが状況が状況だけに悠長なことを言ってる場合ではない。いや、それ以前にファングを殺すどころかファング相手にいつまで戦っていられるかも分からない

「頼むぜ、お前には期待してる。クレールの弟子なんだろ？当時はSランクだったが、本気でやりあって負けたのは生涯であいつだけだ」

そう語るファングはどこか嬉しそうだ。好敵手を思い出しているのだろう

「あんまり期待すんなよ。俺は師匠ほど強くねぇ」

とは言っても簡単に負ける気もねぇけどな

「喋りすぎたな……そろそろだ。準備はいいか？」

さて、法神テミスは曲がりなりにも神様だ。おそらく操っていてもファングの100%を引き出せるだろう。とりあえずは無力化、それが無理なら時間稼ぎ、それも無理なら殺害だ

「戦場では準備出来てねぇ奴から死ぬんだよ」

「じゃあお前が戦場で死ぬ奴じゃないことを祈ってるぜ」

その言葉を最後に大陸唯一のSSランク冒険者ファング・ドレイクとディラン王国第2騎士団の騎士団長ベリアル・スティングレイの戦いが始まった

……
………
…………

「キラーボイス」

細胞を破壊する音撃

「メロディドミネート！」

音が自身に到達する前に搔き消す。すでに反応の領域は音の速さに到達しようとしている。かなりの技術、そして集中力が求められる芸当だ
 
「次は……近接戦闘だ。音による感知と接触時に相手を酔わせる振動を使うから気ぃつけろ」

ファングの動きは卓越している。死神のように特別速いわけではない。だが洗練された人間の急所を狙う技とその切り替えの速さがファングを強くしている要因だ

「強化魔法80倍……センスドミネート」

強化魔法で自身の肉体を強化し、感覚を鋭敏化させる魔法でなんとか対応する。酔いに関しても接触と同時に振動を打ち消す事により無効化する

「次……不協和音ディソナンスだ。俺が発した音はほとんどが人間には有害になる」

さっきから厄介な魔法ばっかり使いやがって……師匠はまだ当時はここまで強くなかったとしても…本当にこんな化け物に勝ったのかよ……

「ハッ！」

「……うっ…あぁっ……」

気持ち悪い……なんだこれ………景色が歪む…

まだだ……倒れるわけにはいかない……

死神なんていう化け物とジャンヌは戦ってる。今も未来も

私の相手は化け物か？神様か？いや人間だ。だったら勝ってやる…私が人間最強になってやる

時間稼ぎ？殺害？そんなのどうでもいい…ここで勝つ！

ベリアルの周囲から感覚が消える。視界は無い。音も聞こえない。感触が無い。滴る血の味も分からない。

「どういう魔法だ……これ」

多分、さすがのSSランクもこれには驚いてるだろうな

自身が定めた空間の全てを一時的に消し去る支配の魔法

「支配し破タイラ壊するント我こそがドミネ暴君であるーション」