魂の枷

「………死神…ちゃんと頼み聞いてくれたみたいだな」

悲鳴と共に意識を失ったはずのジャンヌは今にも倒れそうだった体をしっかりと両足が支えている。体中にあった傷も消え、まるで新しい体かのように全快している  

「ユキト…少しでいい。もう少しだけ、ロキを抑えといてくれ」

「何があったかは知らないけど……頼ってくれるなら、俺は全力で応える」

さっきの魔力……明らかに死んでもおかしくないような密度だった。おそらく、一度死んだんだろうな……止めるべきだった……

「なんかやろうとしてるし、まずはアイツからだな……」

ロキが前に突き出した両手の中心に魔力の球体が浮かんでいる

「時の旅人ぉ、お荷物の全方位……カバー出来るかなぁ？」

魔力の球体が弾け、ジャンヌに向かって様々な方向に拡散していく

「……こりゃ厳しそうだ……いいぜ、神様の挑戦受けてやる！」

ジャンヌさんを狙う魔力を全て叩き落としてやればいい…

「時間歩行タイムウォーカー全開！」

……
………
…………

ユキトが俺を守ってくれてる間に、詠唱を完了させる

禁忌を……死神の力を……

もう二度とあんな気持ちになりたくない……でも、多分あれも俺の本性なんだろうな……死神の使徒にお似合いだ

ジャンヌは体中に魔力を巡らせながら、ゆっくりと口を開く

「現うつつは儚き千里の旅路」

現実なんて、ただ息を吸ってるだけで…何も出来ず、すぐ終わる

「夢ねがいは暗き無限の苦行」

夢なんて、叶うことなんてないのに……そこに至るまで、辛く険しい

「我は歩く終わりある命の道を」

俺は今も昔も…ただ生きる為に前に向かって歩いた

「我は進む終わりなき魂の道を」

俺はたくさんの人を殺した……ただ生きる為に人を殺した

「たった一度も命に意味をなせず」

生きてることに使命を感じたことなんてなかった。殺すことに使命を感じたことなんてなかった

「そんな幾度に魂を削り散らせる」

使命なんてない、殺したくなんてない……でも殺した。そんな矛盾が心を壊していった

「しかし我が死など取るに足らず」

生きる為に殺した。何人も…何人も…何人も……その大量の命は……俺の命と釣り合ってるのか……？

「ゆえに人の死こそ心身を満たす」

命を奪うことに抵抗があると思いながら、どこか……心のどこかで悦楽に浸る俺がいる

「理解した、意識した、認知した」

あぁこれが俺なのかと理解した。あぁこれが狂気なのかと意識した。あぁこれが最高に楽しいと認知した

「次は行動しよう、魂に枷は要らない」

自身のことを完全に把握した。だったら行動に移そう……俺の本能を……俺の魂を縛り上げる鎖から解き放とう

「我が魂はソウル咆哮し全リミットてを殺すロスト」