現代知識で異世界無双したかったよ……

リン

各国防衛戦。ディラン

「まさかディランの防衛に援軍が来ないどころか、ディランから他国に送る事になるとはねぇ」

刀を持つ中年の男は草原に立ち、向かってくる魔物の群れと対峙していた

「父上、ぼやいていても仕方ありませんよ。どこの国も防衛戦力が足りないのにこの魔物の量ですからね。ジャンヌ殿の従者であるファントム殿が居なかったらフォーデルかサリエル……どちらかは見捨てる形になっていたでしょう」

同じく刀を持つ少女は男の隣に立ち、ぼやく男を諭していた

「まぁねぇ…ここは俺たちだけで十分って判断は正しいかもな。さぁてキリナ、お父さんに成長を見せてくれ」

男は刀を抜き、構え、少女を見る

「ジャンヌさんにとある魔法を教えてもらいましたから、父上こそ今の私について来れますか?」

少女も刀を抜き、構え、男に言葉を返す

「よし、それじゃあ行こうか」

「いざ、開戦です」

2人の剣士は魔物の群れへと向かい走り出す

……
………
…………

キリナは魔物を斬り裂きながら口を開く

「歌えや歌え、個を拒み、翠楼にて眠る獅子の子よ」
「我が王は微睡む竜、揺蕩いは見えざる雨」
「この身体は全てを渇望する」
「グリード!」

周囲の酸素を身体能力に変化させる魔法。普通だったら自分も酸欠になってしまうが、今は違う

エアーロック。空気を魔力の膜で包み、口元に展開する魔法だ……本来はジャンヌが水中で呼吸するために開発した魔法だったが、キリナの魔法と相性が良いのでは?と思いやってみたところ大成功した

「……魔物に変化が無いところを見ると、呼吸器官は無さそうですね。まぁ今の私なら相手の酸欠になど頼らずとも全て斬り伏せて見せます」

その後も魔物達は斬り刻まれ続ける

……
………
…………

キリヤは娘の成長を見て焦りを感じていた

なんだアレ……娘の成長は嬉しいけど、このままだと俺の父親としての威厳に関わるぞ……

「こんな魔物ごときに本気を出す必要なんて無いが、ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ本気出そう」

言い訳のような言葉を呟き、キリヤは詠唱を始める

「我が劔よ。そなたが我を認めるならば力を示せ」
「我が四肢よ。我を裏切ることないなら動き続けよ」
「我、風纏い疾走し、劔振るい敵を薙ぐ」

「シンクロソード」

キリヤが刀を振るうたびに同時に複数の魔物が同じような斬り方で切られていく。まるで見えない刀がキリヤの持つ刀と連動してるかのように…

キリヤは身体能力を普段からストックしておく魔法を最大まで上げ、洗練された極められた動きで魔物を斬っていく

この父の姿はカッコいいだろう!どうだキリナ!

「ふ、ふはは!これが私!倒れることもなく、敵を一方的に屠る!ははは!」

「父の姿を見てないどころか悦に浸ってる!?」

……
………
…………

外壁前に配置していた騎士達の出番はなく、完全剣士パーフェクトセイバー酸欠剣帝デフェクトセイバーの手によってディラン王国防衛戦は幕を閉じた

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