時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~

芒菫

外交工作って思ったよりも難しいことに気付いた俺の先に見えるものとはいったい何だったのかまだ知らなすぎて本当に訳がわからない。ていうか、そんなことよりも外交官の目付きが怖いんだけど。


一益達はお構い無く外へと足を踏み入れる。
お市もそれに同行していた。

「はぁ~。やっと出られたに」

一益は上半身を前に伸ばすとそう言った。

「しかし、豪将の勝家殿、当主の信長様とその小姓達もよくあれで耐えられるものだな」

信盛はそう言うと、気が向かないつつも一歩を踏み出す。

「えぇ...なんで俺っていうも雑用なんだろ...」

「····貴方が相良さんですね。姉上からは聞いております。軍師さんだそうですね」

突然お市が俺に話かけてきた。

「え!?あ、ま、まぁそうだけど····えっと、もしかして信長の妹さん?」

「はぁ!?」

俺がそう言った瞬間、一益と信盛が同時に後ろを向いて同時に同じ言葉を言い放った。
意気投合し過ぎだろ。てか、知らなくちゃ悪いことなのこれ?

「ふふ。織田の家中でもまだ私のことを知らない人って居たのですね。はい、お市です。この廊下は滑るので気を付けてくださ」

次の瞬間、お市は足を滑らせてそのまま後ろへ回転して倒れる。

「...え?」

あまりにも突然の発言とブーメラン。注意しときながらも自分で滑るって...もしかして、俺のリアクション試してるの!?試してるんでしょこれ!?ねぇ、どうなのこれ!?

「なっ、お市様!?大丈夫ですかに!?」

「お自分で滑るなどと言うからですよ....もう少しお気をつけになってくださらないと...」

「いたた...迷惑掛けちゃいましたね。ごめんなさい」

彼女はえへへと笑うと、一益と信盛に謝る。

「お市様が大丈夫なら良いですが・・・」

信盛はそう言うと、彼女に手を差し伸べて立ち上がらせる。
お市はその手を握ると、信盛の力を借りて再び立ち上がった。

「・・・駄目ですね、やっぱり。何か言うとすぐこれです。周りにはドジっ子だという事で騙せていますが・・・。本当に邪魔な能力です」

能力?今能力って言ったよね?あれ、でも織田家に能力者って誰も居ないんじゃなかったっけ?誰かそんな説明してなかったか・・・?
お市と信盛は、そのまま一本道を進む。一益と俺も後について追いかけていた。

「そうでしたに。お市様もそのような能力で悩まされていたんでしたに」

一益はお市の言葉を補足するように話すと共に、俺にこの話をすするように此方を見てきた。

「・・・はぁ。その能力って言うのはどんなものなんだ?」

俺は両腕を後ろにやると、淡々と言葉を発していく。

「・・・そう言えば、貴方とお話しするのは初めてですよね」

高貴な姫君がそう言うと、あっ、そう言えばと言って思い返し、まだ一度も話したことが無いことに気が付いた。

「ふふ、姉上から話は聞いております。裕太さんでしたね。面白い手駒さんだと言っておりました。私は信長様の妹であるお市です。宜しくお願いします」

お市の方。戦国一美女と言われた信長の妹。
恒興とは違い、実妹である。後に近江の浅井家に嫁いで信長の全国統一事業に大きく貢献する。
後に三人の娘を娶るのだが、その三人の娘が後の戦国史に大きく関わってくることとなる。
浅井家が信長と対立し、滅亡した後、柴田勝家の元へ嫁ぐ。
だが本能寺の変後、柴田家滅亡と共に、お市も勝家と命を共に落としたと言われている。

「信長・・・手駒は酷いな。知ってくれてるんだったら話は早いや。相良裕太、軍師です。宜しく!」

俺がそう言うと、彼女は軍師と言う存在に驚いたらしい。こっちを向いてとても驚いた顔をしていた。
それをみた一益は、俺についてもっと補足していく。

「兄やんは凄いんですに。例えば桶狭間での合戦。今川家に奇襲を仕掛けると考えたのは紛れもない、兄やんなんですに」

さらに信盛も続く。

「あぁ、今回ばかりは織田家に相良あり。だったな。良い働きだったぞ」

褒められると照れるな・・・。そう思いながら話を聞いていた。

「じゃあ、織田家の軍師って事ですね!凄いです!策略家が誰も居なかったので、これでやっと織田家の先も見えてきた気がします!」

まってくださいお市さん。それは何か違います。それだと俺が「俺ツエーです」って言ってるみたいに書き換えられてしまいます。そんな気はないです。そんなに強くないです。ぜんっぜん強くないです。
と、言いたかったが、口にも出せず。三人から拍手が鳴り響いた。

「・・・とりあえず、早く行こうぜ」

俺がそう言うまでずっと拍手の時間は続きました。
三人とも、おっとそうだったという顔をしては回れ右をして何事も無かったかのように進み始めた。
そのまま真っ直ぐ進み、客間に到着すると、小姓が襖を開いて中に入れてくれる。

「・・・」

同じ体制で座り続ける一人の女の子。この子が松平からの使者って奴なのかな?
俺達は部屋の中に入ると、信盛が真ん中へ座り、その両サイドに俺と一益が腰を下ろした。
お市はそのまま一益の方へ座っていく。

「・・・」

使者の方はじーっと信盛を見つめたまま、何も言わず座り続けていた。
こういうのを魔の空間、別室、説教部屋の空気と言うのだろう。生憎、この状況下で何度か説教部屋で説教を受けた事を思い出すと言うのは、それだけトラウマになっていると言えるのかもしれない。

「・・・」

おいおい信盛。そろそろ何か話さないと使者さんも顔に出てくるよ・・・?ほら、何か話題を持ち掛けないと!
と、頭の中で彼女に呼びかけるも、そんなこと聞こえるはずがない。勿論、そのまま沈黙は続いていく。

「あ、あの」

と、最初に話を切り出したのは俺だった。いつの間にか声を出していたのだ。
流石に、ずっとこの状態では馬鹿らしいと思ったからである。

「・・・」

あれ、どうしたんだろうか。すみません、おーい。

「・・・ハッ」

彼女は、驚いた様に顔をビクっと動かす。
俺達もそれに釣られて驚いていたが、どうやら彼女は眼を開きながら寝ていたようなのだが・・・。
辺りを見ると、いつの間にか人が揃っていてびっくりしていた様だ。

「・・・これはこれは失礼致しました。私、松平様より使者として参りました、石川数正にございます。信長様も急ぎと聞きましたが、貴方方は・・・?」

「信長様の命で参った、佐久間信盛でございます。脇に居るのが滝川一益、相良裕太にございます。」

彼女は俺の方を見ると、男が!?と言う目付きで見られたが、そのまま顔を信盛の方へ戻すと、話を続ける。

「今回参ったのは、いつぞやの同盟の件でございます。お分かりでしょう?」

彼女はさっきまでの目付きとは全く違い、信盛を見つめていた。
正直、めっちゃこわいです。

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