時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~

芒菫

奇策を立てる、その女子も奇人なり。


「ちょ、ちょっと待ってよその仕打ちは酷くない!?そこは助けの言葉くらい・・・。」

途中途中で声が裏返ってしまったが、それくらい必死なので察して頂けるとありがたい。
毛利新助。彼女はそう名乗った。小柄なのだが、人に対する威圧、対人威圧とでも名付けるが、彼女から感じられる雰囲気も、正義と根性で満ち溢れている様に感じられる。

「何を言うか。突撃するこそ女子の嗜みぞ!」

「それ違うよね!?違う思考に走っちゃってるよね!?」

発言が大胆不敵過ぎる・・・。彼女に恐れはないのか!?それとも、新助ちゃんも天然さんだったりするの!?
新助は、右手を胸に当てて背筋をピシッと伸ばし、左手を後ろの腰の下辺りに持っていくと、敬礼する。
それもまた、熱き闘志だの何だのと・・・。一益は言っていた。

「あ、そう言えば兄さん。」

突然、一益が掴んでいた俺の首の裾を放すと、体を此方に向けて両手を脇腹に当てて立ち、俺を見つめていた。
ただ、先程まで首の裾を強引に掴まれて引きずられている状態だったので、鼻息を荒くさせながら呼吸しているのが今の俺の状態だった。

「はぁ・・はぁ・・。なんだ?」

頑張って呼吸していて、余裕が出来たので、俺は一益に話を返した。

「どうせなら、私のことを一益かずますじゃなくて一益いちますって呼んで貰えると嬉しいに。別に、作者も漢字の読みが変わるだけで何にも苦労無いと思うし・・・。そっちの方が、親近感沸くやろ?」

作者の漢字の読みが変わるだけってどんだけ現実的な話してんだこの人・・・。
一益との現実的過ぎる話をしていると、髭を触りながら歩み寄ってくる平手政秀の姿があった。

「あれ、平手殿。」

「おぉ、相良殿。ご出陣ですかな?」

平手殿は此方に気付くと、その場にいた一益と新助の姿を見て出陣するのかと尋ねて来た。
察する所、2人は相当の戦好きなのだろう。そうとしか考えられない・・・。

「ま、まぁそうだけど・・・。平手さんは?」

「私は今回、城内の見回りと避難担当ですからな。こうして、度々問題は起きていないかと巡回しているのですよ。」

話を聞けば、信長が居ない状態でも行動できるよう、織田家では戦の場合、いくつかの係に分けており、戦況に応じてその役割について仕事をこなすと言う義務が課せられているらしい。
今回の場合、一益は偵察担当。平手殿は城内や城下の巡回や避難経路確保担当。となっている。
ここで、信長が居なくても事は回すことが出来るのだと、ようやくホッとする事が出来たと思ったのだがその都度、藤吉郎と利家の悲しそうな顔が頭の中を横切って行った。

「そうですか・・・。お勤めご苦労様です。信長がもし起きたらお大事に。とお伝えください。」

俺が頭を下げてそう話すと、平手殿は「まぁまぁ。そうかしこまらずとも。」と言い、手を握ってくれた。なんか、本当に良いお爺さんだな・・・。心が温まった。

「ん~っ!さて、そろそろ出発しますかにー。」

俺と平手殿のやり取りを見ていた一益は、話が終わった直後、背伸びをして大声で言った。

「平手の爺さん、信盛やんに丸根砦、鷲津砦は共に攻撃されてたって伝えてくれに。そして、わっちらがもう一度偵察に行ったとも伝えてくれると嬉しいや。」

一益は笑顔で話すと、平手殿は頷き「承った。」と、一益の依頼を受ける。
彼女は、木の板の上に置かれていた愛用の銃を二丁、腰に掛けてハチマキを締め直すと、先頭に立ってこう大声で叫んだ。

「お前ら~!ここからが地獄の茨道って奴やで~!抜けたもんに神は味方するに~いくで~!!」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

そこにいた数えても数百人しか居ない軍勢が出せるとは思えない途轍もない大声で、女達は咆哮する。
そして、俺もその御供としてついて行くことになってしまった・・・。

・・・尾張南部鳴海城近くの熱田村付近。
ちょっとだけ、気休めなのだが清洲城で武具を貰い、着てみたところ、結構俺の体とマッチングして合っていたので、貰っておいて良かったと思った。籠手くらいなんだけどね。
今やこの時代、武具を着ようが何だろうが、戦えなければ着たって意味がない。だからこそ、俺はこの2つだけを貰い、後は身軽に動けるよう、昨日から来ていて、ちゃんと洗濯をした服を着ているのだ。
俺は、一益の近くについていた。新助もそこに居たからだ。彼女とも何かと話が合い、面白いからであった。
平地に生える森林を進む中、林が途切れる辺りで、何か灯のような物が見えてきた。

「あれが敵の城の鳴海城だ。敵兵約2500くらいと思われるが、あそこで休憩中なのが第二陣。と、すると第一陣はもうちょっと戻ったところで戦いが行われているようだな。」

なんだかんだ言って新助の凄い解説力と視力。いや逆か。視力と解説力。凄まじい。よく敵兵の数が分かるものだな。と、褒めようしたが、そこには肩車されている一益とその土台になっている新助の2人が居た。

「すみません。敵地で何をしてるんだ?」

と、恐ろしくなったので二人に声を掛けると、一益が答えを返した。

「何言ってるに。肩車やで。見てわかるやろ?こうやって肩に乗せて貰う事w」

「いやそう言う事じゃなくて!敵地で何バレるような事やってんのって話だよ!」

と、つい怒鳴ってしまったがそれでも尚、一益は言い続ける。

「肩車に。何が悪いんやて?」

「・・・。」

思わず、言葉も出なかった。言葉の重みとかじゃなくて何というか・・・。何言っても無駄な気がして来たんだよね。
とにかく、二人はその状態が長く続いていた。しかし、続いて約30分後。空も真っ暗。夜空の星々が俺の事を見て馬鹿にして来ている気がして何だか気持ちが優れない。

「ふむふむ。よし、分かったに!」

一益はそう言うと、ひょこっと新助の体から飛び降りて服の裾から見た事のある長い棒を取り出した。
「アンティーク望遠鏡」の見る部分だった。あの望遠鏡はこの時代、南蛮品であったのだろう。織田家が持つ特別な兵器だと思われる。

「それ、アンティーク望遠鏡だよな?」

「ん?知ってるに?」

と、俺が問いかけると、一益はその質問に耳を傾けた。

「あぁ。俺も手元にはないけど持ってるぞ。」

「流石兄さん。南蛮品に目を付けるのが早いねぇ~!」

と、一益は元気な声で言うと、気分は好調そうなのが見て取れた。
周りを見張る事長い間、敵の鳴海城からの動きは一つも無い。ここで、一益が思いもよらない話を持ち掛けだした。

「んじゃ、このまま裏から鳴海城を叩くことにするで。全員、大丈夫に?」

そう言い出したのだ。流石の俺も、すぐに「うん。」と話す事も頷く事も出来ずにいた。が、周りの連中は全員やる気だった。

「おう!姉御の為ならやったる!」「まかせな!」「私らは姉御の兵士じゃねぇ!友なんだ!共に歩むが感銘ぞ!」

よく見ると、一益の兵士には男の人数も比較的に多かった。ただ、そこで俺以外の全員は敵陣に乗り込むことは賛成という事で、多数決決定となってしまった。

「それじゃあ、ド派手に行くに。」

一益はそう言うと、鳴海城の地図らしきものを取り出した。

「これは・・・?」

俺が疑問視していた地図に、一益は答えた。

「これは鳴海城の地図や。わっちらはこれから、裏門から攻め立てる。まずは上手く引き付けてから鉄砲でバンバンうち抜かすに。その間、最初から何人かで敵陣に潜り込んでもらって、敵の遠距離武器を全部盗んでくる戦法で行くに。ここで敵に不意を付いちまえば、織田軍の援軍だって呼べるに。」

一益は、自分の掲げる理想を話すように、大きく語った。戦法としては、おとり役で何百人かが鉄砲を装備し待機。その隙に別動隊は敵陣に乗り込み、武器をかき集める。そこから挟み撃ちで総崩れにさせていくと言う作戦だそうだ。奇襲としては悪くない戦法に感じられる。飽くまで、城を落とす為の戦法ではなく、一防衛地点を攻撃するという手段では手っ取り早く終わらせられ、逃げられる戦法を一番好む。
と言う面から考えれば、一益の戦法はまさに奇策と言えるだろう。
勿論、この案で攻めが開始されることとなった。

「それじゃ、賛成してくれた全員に、明日の夕日を見せたげる保証をするに。全員、生きて帰るよ!」

「あぁ!」「了解です!」「姉御の為なら!」「いくぞ!」

兵士たちもやる気の様だった。俺の配置とは、と言うと・・・。
一益や何人かと共に、敵陣に乗り込む事だった。頑張らなくては!
この時、まさかとは思うがこの策の行く末がこの城に大きく関わるとは誰も知る由も無い。

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