貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第59話 未来の結果


 力と能力ちからのぶつかり合い。
 ダンジョンは、その衝撃によって揺れ動いている。

 ユウの放つ力に、真っ向から対応してくるナギ。
 有り得ない程の力が相手からも伝わってくる。
 ぶつかる度に、拳がミシミシと音をたてて悲鳴を上げる。

 両者の力は互角ではなく、少しだけ戦況がナギの方に傾いてきていた。

 「キサラギ・ユウ。お前は俺に勝てない。大切な者の前で朽ち果てろ」

 「やってみないと分からないだろ?それに、未来は変えることが出来るみたいだぞ」

 人生に一度の賭けだ!!
 これで、倒せなければ確実に負ける。

 これで......最後だ。

 俺の全てを乗せて、力を解き放つ。
 限界を超えた力は、自分の肉体を蝕んでいく。
 あの時と同じように、黒い霧が身体にまとわりつく。

 俺は、飛び出した。
 目の前の敵を倒すために。

 光の速さにも迫る勢いで、迫っていく。
 俺が出せる最大の力。《ランキング》一位を取った最強の力。

 しかし、現実はいつも残酷で最悪の結果だけが無情にも残る。

 「無駄だ...」

 時間が止まったかのように思えた。
 その中で聞こえた言葉には、現実を突き付けられた。

 本気で殺すつもりで殴ったはずの拳は、簡単に止められた。
 まるで何事もなかったように......

 振りほどこうもしても全く動かない。
 絶対的な力の差を感じた。
 その時のナギの顔は、俺を哀れんでいるようだった。

 黒い霧が全身に広がっていく。
 右手だけだった黒い姿がどんどん身体を侵食していく。
 自分のものではない何かに変わっていく。

 「俺の最後は......コレなのか」

 そんな言葉を最後に、ユウの全身が黒色に染まった。

 「もう、終わったよ......これで、俺は......」

 その時、倒れているユウの側に駆け寄ってくる影があった。

 「ねぇ、ユウ。起きて?ねぇ、ユウ......返事を......してよ」

 銀髪の少女は、倒れている黒い何かを揺さぶっている。
 その目には、光が無く。無くしてしまった大事なものを探しているようだった。

 離れたところで、他の二人は力無くうなだれている。
 もう、立ち上がる気力すらも無いようだ。

 「キサラギ・ユウは、もう死んだ」

 そう告げた途端に、銀髪の少女は壊れたように言葉を繰り返す。

 「嘘!!嘘!!嘘嘘嘘だーーーー!!」

 「もう、ソレはキサラギ・ユウじゃない」

 「嘘...嘘......嘘だって言ってよ...」

 糸が切れた人形のように泣き崩れる。
 大切な者を失った痛みを、苦痛を、喪失感を味わっているだろう。
 だからこそ、本当の目的・・・・・を達成できる。

 救いの手、いや、悪魔の手を差し出す。

 「君に、もう一度チャンスをあげよう。君の命と引き換えにキサラギ・ユウを治してあげるよ」

 「......本当?ユウを治してくれるの?」

 暗闇の中で光る一筋の光。
 それに目がくらんで人は、それにしかすがれなくなる。
 頭から他の選択肢が消える。

 「ああ、元に戻せるぞ」

 「じゃあ、お願い。ユウを元に戻して」

 「本当に良いのか?」

 「叶えてくれるなら、最後にユウと話がしたい」

 だが、その要求は

 「......駄目だ」

 少しの間の後に断られた。

 「......そう。じゃあ、遺言だけ...」

 それにも関わらず、ノアは仕方ないと割り切り遺言を残す。

 「ユウ...ありがとう。そして、ごめんね」

 彼女がこの世界で最後に残した言葉は、感謝と謝罪だった。
 涙と共に倒れた彼女は、どこか満足そうな顔をしていた。


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