貴方に贈る世界の最後に
第57話 最強の敵
扉を開けた途端、視界がグニャリと歪んだ。
目の前にあった空間が一瞬にして変わっていく、そして、俺達が辿り着いた場所。
ダンジョンの100階層。
「......ノア、これは、どういう事だ?」
「......ユウ、それは私にも分からない」
そこは、俺の見覚えのある場所だった。
ダンジョンの100階層の景色、それは、真っ白に塗りつぶされたような空間。
そこに、ポツンと置かれている豪華な椅子。
そう、ここは俺が最初にロリ神と会った部屋。
そして、サヤを助けられなかった場所。
「ようこそ、ダンジョン最上階へ。それと、キララギ・ユウ。俺は、お前がここに来るのを待っていたんだ」
1つの影が椅子の後ろから現れる。
姿を見せたのは、黒目黒髪の少年。
「誰だ?何で俺の名前を知っている?」
「まずは、自己紹介からだな。俺の名前は、リュウドウ・ナギだ。お前と同じ世界から来た『転生者』だ」
「俺と、同じ......もしかして、《ランキング》の願いを使ってこの世界に来たのか?」
俺の居た元の世界から、この世界に来るには、《ランキング》で一位をとる必要があるはずだ。
それなら、目の前のこいつは、何で一位を取ったんだ?
「ああ、《ランキング》で一位を取った時の願いでこの世界に来た」
「じゃあどうして、『転生者』がこんなところに居るんだ?」
「キララギ・ユウ。お前を止めるために、俺はここに立っている。お前が叶えようとしている願いは、世界を壊す結果になる。俺は、お前を止めて本来のあるべき世界に戻す!!」
俺が、世界を壊す?
ふざけるな!!
「俺は、誰もが幸せに暮らせる世界を願う。本来の世界なんて不平等だ!!必ず誰かが苦しみ、誰かが辛い思いをする。そんな世界は、創らせない!!」
二人の少年の想いは、決して交わらない。
どちらの主張も正しく、どちらも間違っている。
この世界に本当の正しさなんてものは、存在しない。
本当の真実を知っているのは、神様だけ......
しかし、この場には神様に最も近い人間が存在する。
『何でも出来る能力』。これは、神様に最も近く、最も遠い能力。
使う人間次第で、善にも悪にも変わる危険な能力。
だから......間違える。
「ノアさん。1つ取引をしよう。受けても受けなくてもいい君次第だ」
目の前の男は突然、ノアに問い掛けた。
「キララギ・ユウの怪我を全て綺麗に治す。俺には、そういうことが出来る能力がある」
振り向いて確認したノアの顔は、驚きに包まれていた。
そして、ノアの口が開く。
「それは......本当なの?」
「ああ、本当だ。ただし、ノアさん。君の命が条件だ」
ノアの目は大きく見開かれる。
胸に手を当てて、考えている。
「ノア!!アイツの言葉を聞かなくていい。本当なのかも分からない事に、惑わされるな!!それに、俺は絶対認めない。ノアの犠牲で生き残るなんて、死んでも嫌だからな」
「...ん、分かった」
「失敗か...まぁ、いいや。どうせ結果は変わらない。さぁ、俺を倒してみろ!!その先に、お前の望む世界があるのなら!!」
「ああ、お前を倒して、俺が世界を変える!!」
身体はボロボロだ。
たけど、この先に俺の望む世界がある。
仲間と過ごしたい、世界がある。
ノアとそんな世界でずっと、幸せに暮らして行きたい。
胸の奥から力が沸き上がる。
俺は、最後の力を振り絞り、飛び出した。
こうして二つの物語は、ぶつかり合う。
互いの願いを胸に、戦う。
大切な誰かを救う為、大切な誰かの願いを叶える為。
最強と最強の戦いがーーー今、始まる。
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