貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第57話 最強の敵


 扉を開けた途端、視界がグニャリと歪んだ。
 目の前にあった空間が一瞬にして変わっていく、そして、俺達が辿り着いた場所。

 ダンジョンの100階層。

 「......ノア、これは、どういう事だ?」

 「......ユウ、それは私にも分からない」

 そこは、俺の見覚えのある場所だった。
 ダンジョンの100階層の景色、それは、真っ白に塗りつぶされたような空間。
 そこに、ポツンと置かれている豪華な椅子。

 そう、ここは俺が最初にロリ神と会った部屋。
 そして、サヤを助けられなかった場所。

 「ようこそ、ダンジョン最上階へ。それと、キララギ・ユウ。俺は、お前がここに来るのを待っていたんだ」

 1つの影が椅子の後ろから現れる。
 姿を見せたのは、黒目黒髪の少年。

 「誰だ?何で俺の名前を知っている?」

 「まずは、自己紹介からだな。俺の名前は、リュウドウ・ナギだ。お前と同じ・・世界から来た『転生者』だ」

 「俺と、同じ......もしかして、《ランキング》の願いを使ってこの世界に来たのか?」

 俺の居た元の世界から、この世界に来るには、《ランキング》で一位をとる必要があるはずだ。
 それなら、目の前のこいつは、何で一位を取ったんだ?

 「ああ、《ランキング》で一位を取った時の願いでこの世界に来た」

 「じゃあどうして、『転生者』がこんなところに居るんだ?」

 「キララギ・ユウ。お前を止めるために、俺はここに立っている。お前が叶えようとしている願いは、世界を壊す結果になる。俺は、お前を止めて本来のあるべき世界に戻す!!」

 俺が、世界を壊す?
 ふざけるな!!

 「俺は、誰もが幸せに暮らせる世界を願う。本来の世界なんて不平等だ!!必ず誰かが苦しみ、誰かが辛い思いをする。そんな世界は、創らせない!!」

 二人の少年の想いは、決して交わらない。
 どちらの主張も正しく、どちらも間違っている。

 この世界に本当の正しさなんてものは、存在しない。
 本当の真実を知っているのは、神様だけ......

 しかし、この場には神様に最も近い人間が存在する。
 『何でも出来る能力』。これは、神様に最も近く、最も遠い能力。
 使う人間次第で、善にも悪にも変わる危険な能力。

 だから......間違える。


 「ノアさん。1つ取引をしよう。受けても受けなくてもいい君次第だ」

 目の前の男は突然、ノアに問い掛けた。

 「キララギ・ユウの怪我を全て綺麗に治す。俺には、そういうことが出来る能力がある」

 振り向いて確認したノアの顔は、驚きに包まれていた。
 そして、ノアの口が開く。

 「それは......本当なの?」

 「ああ、本当だ。ただし、ノアさん。君の命が条件だ」

 ノアの目は大きく見開かれる。
 胸に手を当てて、考えている。

 「ノア!!アイツの言葉を聞かなくていい。本当なのかも分からない事に、惑わされるな!!それに、俺は絶対認めない。ノアの犠牲で生き残るなんて、死んでも嫌だからな」

 「...ん、分かった」

 「失敗か...まぁ、いいや。どうせ結果は変わらない。さぁ、俺を倒してみろ!!その先に、お前の望む世界があるのなら!!」

 「ああ、お前を倒して、俺が世界を変える!!」

 身体はボロボロだ。
 たけど、この先に俺の望む世界がある。
 仲間と過ごしたい、世界がある。

 ノアとそんな世界でずっと、幸せに暮らして行きたい。

 胸の奥から力が沸き上がる。
 俺は、最後の力を振り絞り、飛び出した。


 こうして二つの物語は、ぶつかり合う。
 互いの願いを胸に、戦う。

 大切な誰かを救う為、大切な誰かの願いを叶える為。

 最強ユウ最強ナギの戦いがーーー今、始まる。



「貴方に贈る世界の最後に」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く