貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第51話 失ったもの


 目の前で消えた、大切なもの。

 「今まで...俺は、何をやってたんだ?」

 どうして気づかなかったんだ!!どうして、こんなことに......
 胸にぽっかりと穴が空いたような感覚が襲ってくる。
 大事なものを失った...その事実は変わらない。

 出てくるものは、後悔、絶望、喪失感のみ。
 どれだけ願っても、消えた彼女はもう戻っては来ない。
 理解したくない真実が、頭の中を埋め尽くす。

 「...なぁ、神様。居るんだろ。答えてくれよ。俺は、何でこんなに失うものがあるんだよ...」

 神にすがる、そんな事しか出来なかった。
 そうしなければ、自分が壊れてしまいそうだから。
 自分で自分を壊してしまうから。

 『そんな事も、分からないのか?』

 突然、声が響く。
 顔を上げると、誰も居なかったはずのこの部屋には、誰かがいた。
 ポツンと置いてある椅子に、黒いもやのようなものがかかっている人が座っていた。

 「...お前は、あの時の...」

 一度見たことのある姿に、驚く。
 俺が、願いを叶えるときにロリ神に同じような黒いもやがかかっていた事を思い出す。

 「お前が、サヤを...」

 そう思った時には体が動いていた。
 今、出せる全力・・で、そいつを殴る。
 拳にまとわる風圧だけでも、軽々と地形を変えられるその一撃。



 だが......俺の拳は、ただ座っているだけの奴に止められた。
 軽々と片手だけで...

 『キサラギ・ユウ。お前は、俺に勝てない』

 耳元でそう言われたと同時に、お腹に衝撃が襲ってくる。

 「...ガッ!?」

 景色は、早送りのように流れて変わっていく。
 一瞬で椅子が見えなくなる位置まで飛ばされた。
 何をされたか分からないほどの速さだった。

 腹はズキズキと痛む、吐き気がする。
 こんなことは、今まで一度もなかったのに...

 『それが、お前の限界だ・・・

 突然、後ろからかかる声に固まってしまう。

 「くっ!!そっ!!」

 振り向きながら、殴りかかる。
 だけど、それもまた止められる。

 『お前は、弱い。だから失う。大切な誰かを!守るべき仲間を!』

 また、そいつは腹に殴りかかってきた。
 何とかして今度は、止めようとしたが...そんな事は関係ないとばかりに、吹き飛ばされる。

 そして、受け止めた手も、無事ではなかった。
 ボロボロになった自分の手を見ると、力の差は歴然だった。
 俺は、こいつに勝てない...

 限界の力を使った反動で、身体中が痛みだす。
 そんな中、俺は声を絞り出して問いかける。

 「お前は、誰なんだ?」

 ランキングで、一位のはずの力が全く及ばない、上からねじ伏せられるほどの力をもった誰か。

 そして、黒い何かは答える。

 『お前は、まだ知るべきではない。真実を知るのは、まだ早い』



 「一体何なんだよ!!真実ってなんの事だ!!」

 『いずれ、分かるさ。その時が来ればな。知りたければ、強くなれ。俺に勝てるぐらいにな』

 黒い何かは、そう言った。
 そして、俺の足元に魔法陣が出てきた。
 魔法陣が光り輝く。

 「絶対にお前を倒してやる!!」

 『待ってるぞ、キサラギ・ユウ。そして、未来を世界を変えて見せろ!』

 獰猛に笑う何かの言葉を最後に、俺は光りに包まれた。

 失ったものは、大きすぎる。
 傷付いた心は、治らない。目標を遂げるまでは......

 「...サヤ...俺は...間違ってたのかな...」

 その問い掛けには、誰も答えない。

 失って始めて気付くことがある。
 自分にとってその人がどれ程大切な存在だったのか、いまさら気付いた。

 後悔、絶望しながらも少年は進み続ける。

 もう、戻ることは許されない。

 もし、戻ることがあるなら...それは、心が死んだ時だ。

 振り返ってはいけない。

 心が死んでしまうから、大切な誰かを失うから......


 失ったは、失ったもの・・を背負って生きていく。


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