貴方に贈る世界の最後に
第52話 道標
眩しい光が消えていく。
目の前には、うっそうとした森と大切な仲間達が見えた。
「!!ユウっ良かった。無事だったんだね。怪我ならすぐに治すから待ってて」
そう言って真っ先に向かってきたのはノアだった。
心配してくれたのだろうか、目には涙を浮かべている。
だけど、俺の様子に気付いたのか、目の前で止まる。
「...ノア。また、守れなかった。大切な人を......サヤを、守れなかった...」
「...え?...ユウ...何を...」
「俺のせいで、サヤが死んだ......」
「......」
その時に、少し離れていたアイリスとセツカも走ってきていた。
「ユウさん、良かったで...す...は、早く傷を治さないと」
「...良かった...生きてた」
俺とノアの間に流れていた重い空気は、流されていった。
しばらくして、俺の怪我は完全に治った。
たが、心の傷は治らない。
「...アイリスちゃん、セツカちゃん。ちょっとユウと二人きりにさせてくれないかな?」
「は、はい」
「...分かった」
二人は、見えないところに歩いていってしまう。
そして、ここには俺とノアの二人だけが残された。
「なぁ、ノア」
「ん?」
「実は、俺はお前がサヤなんじゃないかと思ってたんだ。あり得ないと思うかも知れないけど、なぜかそう思ってたんだ出会ったあの時からずっと...」
「...うん」
ノアは、なぜか辛そうに答える。
俺が渡した、ネックレスを強く握りしめて次の言葉を待っている。
「だけど、俺の勘違いだったみたいだ。...ごめん」
「......」
何で、そんなに辛そうな顔をしてるんだ?
勘違いされたことがそんなに辛かったのか?
そんな顔を見たくは無かったな。
ノアは、笑ってる方が良いから...
「俺が転移させられたところに待ってたのが神様だったんだ。この世界じゃなくて、俺の元の世界に居た神様だ。そして、ステータスを見せられた......そこには、トウサカ・サヤって書いてあったんだ...」
「...ステータスの名前は変えられない」
「ああ、だから俺はもう...いい...」
そう言った瞬間に、
パチッーーーン
と、乾いた音と同時に頬に痛みが走った。
「サヤさん、その人が、ユウにとって大切な人だって言うのは分かったよ。それで、傷付いている気持ちもよく分かる。でも!!その人は、ユウに何かを託したんじゃないの?ユウがここで諦めたら、その人は本当に死んじゃうよ!!その人は、ユウを信じて頼んだんじゃないの?私が好きなユウは、ここで止まるような人じゃない!!もっと格好よくて、強い人なの!!」
大粒の涙を流して、ノアは言う。
こんな場面を見てると、俺は馬鹿だなと思う。
何やってんだか。
失った重さだけを考えていて、託された思いの大きさに気付けないなんてな。
「ごめん、ノア。それと、サヤ」
俺は、目の前の大切な者を抱き締める。
「ユウ...」
残された想いを、叶えるために...俺は、進むよ。
誰も居ない空を見上げて、俺は誓った。
サヤ...俺はお前の分まで誰かを救うよ。
もう少しだけ、生きてみる事にするよ、そしてもし、死んだ時。胸を張ってこう言うんだ、
「俺は、世界を救ったぞ」
と、そんな事を言えるように頑張るよ。
誓いを立てたその空は、半分曇っていて半分晴れていた。
「なぁ...サヤ...見ててくれ」
俺の生き様を!!
少年は、歩き出す。
世界を救う為に、大切なものを守る為に。
踏み出すその一歩は、もう後悔も迷いも無かった。
少年は、新しい"道"に踏み入れた。
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