貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第52話 道標


 眩しい光が消えていく。
 目の前には、うっそうとした森と大切な仲間達が見えた。

 「!!ユウっ良かった。無事だったんだね。怪我ならすぐに治すから待ってて」

 そう言って真っ先に向かってきたのはノアだった。
 心配してくれたのだろうか、目には涙を浮かべている。

 だけど、俺の様子に気付いたのか、目の前で止まる。

 「...ノア。また、守れなかった。大切な人を......サヤを、守れなかった...」

 「...え?...ユウ...何を...」

 「俺のせいで、サヤが死んだ......」

 「......」

 その時に、少し離れていたアイリスとセツカも走ってきていた。

 「ユウさん、良かったで...す...は、早く傷を治さないと」

 「...良かった...生きてた」

 俺とノアの間に流れていた重い空気は、流されていった。



 しばらくして、俺の怪我は完全に治った。
 たが、心の傷は治らない。

 「...アイリスちゃん、セツカちゃん。ちょっとユウと二人きりにさせてくれないかな?」

 「は、はい」

 「...分かった」

 二人は、見えないところに歩いていってしまう。
 そして、ここには俺とノアの二人だけが残された。

 「なぁ、ノア」

 「ん?」

 「実は、俺はお前がサヤなんじゃないかと思ってたんだ。あり得ないと思うかも知れないけど、なぜかそう思ってたんだ出会ったあの時からずっと...」

 「...うん」

 ノアは、なぜか辛そうに答える。
 俺が渡した、ネックレスを強く握りしめて次の言葉を待っている。

 「だけど、俺の勘違いだったみたいだ。...ごめん」

 「......」

 何で、そんなに辛そうな顔をしてるんだ?
 勘違いされたことがそんなに辛かったのか?
 そんな顔を見たくは無かったな。

 ノアは、笑ってる方が良いから...

 「俺が転移させられたところに待ってたのが神様だったんだ。この世界じゃなくて、俺の元の世界に居た神様だ。そして、ステータスを見せられた......そこには、トウサカ・サヤって書いてあったんだ...」

 「...ステータスの名前は変えられない」

 「ああ、だから俺はもう...いい...」

 そう言った瞬間に、

 パチッーーーン

 と、乾いた音と同時に頬に痛みが走った。

 「サヤさん、その人が、ユウにとって大切な人だって言うのは分かったよ。それで、傷付いている気持ちもよく分かる。でも!!その人は、ユウに何かを託したんじゃないの?ユウがここで諦めたら、その人は本当に死んじゃうよ!!その人は、ユウを信じて頼んだんじゃないの?私が好きなユウは、ここで止まるような人じゃない!!もっと格好よくて、強い人なの!!」

 大粒の涙を流して、ノアは言う。

 こんな場面を見てると、俺は馬鹿だなと思う。
 何やってんだか。
 失った重さだけを考えていて、託された思いの大きさに気付けないなんてな。

 「ごめん、ノア。それと、サヤ」

 俺は、目の前の大切な者を抱き締める。

 「ユウ...」

 残された想いを、叶えるために...俺は、進むよ。
 誰も居ない空を見上げて、俺は誓った。

 サヤ...俺はお前の分まで誰かを救うよ。
 もう少しだけ、生きてみる事にするよ、そしてもし、死んだ時。胸を張ってこう言うんだ、

 「俺は、世界を救ったぞ」

 と、そんな事を言えるように頑張るよ。

 誓いを立てたその空は、半分曇っていて半分晴れていた。


 「なぁ...サヤ...見ててくれ」

 俺の生き様を!!


 少年は、歩き出す。
 世界を救う為に、大切なものを守る為に。
 踏み出すその一歩は、もう後悔も迷いも無かった。

 少年は、新しい"道"に踏み入れた。


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