貴方に贈る世界の最後に
第48話 未来の可能性
魔王城と、言うだけあって入り口に大きなガーゴイルの石像が置いてあったり、ゴーレムが一列に並んで出迎えてくれたりした。
ゴーレムが並んでお辞儀をする姿は、圧巻だった。
そこを通り抜け、階段を上っていく。
アイリスは、はしゃぎながらも色々と城の中を説明してくれた。
「今は、皆さんが居るので家の中も安心して進めますが、敵が来たときは僕の家は危険な罠が一杯ある迷宮になるんですよ」
「久し振りに帰ってきたから、懐かしく思います...あっ!セツカさんそこに行くと危ないですよ......」
と、こんな感じで久し振りに家に帰ってきて嬉しそうだった。
そして、長い廊下を進み、一つの扉の前に着く。
「さぁ、着いたよ。ここが僕の部屋だ」
真っ黒に塗りつぶされた大きな扉には、何かの文字が書かれている。
全てが記号のようなもので、全く読めるものではない。そんな文字がびっしりと扉に書かれていた。
「このお父様の部屋の扉には、特殊な魔法がかかっていて僕みたいな魔族にしか開かない扉なんですよ」
そんな説明をアイリスがしてくれる。
成る程......魔族を仲間にするか、無理やり連れてくるかしないと開かない扉か。
「これは、僕なりの"試練"のつもりなんだ」
「面白いことを考えるんだな」
魔王が言っている事が分かる気がする。
なぜなら、この魔王は俺と同じような考えをしているからだ。
「やっぱり、君には分かるんだね。僕は、この試練で倒すべき敵か、歓迎すべき味方を決めようと思っているんだ。僕達、魔族を仲間にしてここまで着いた者には、話しかける。僕達、魔族を殺してここに着いた者は、僕の全力をもって排除する。そういう"試練"さ」
そう言ってから、魔王はその扉に手を当てる。
すると、扉に書かれている文字が白く光だした。
眩しく光るその灯りは、俺達を歓迎しているようだった。
「前者なら白く光り、後者なら赤く光る。僕の夢は、ここにくる者全てが魔族と手を取り合える。そんな存在であることだ......君達みたいにね」
扉は開かれる。
そこには......魔王が座るに相応しい椅子が置いてあった。
あまりにも、このおっさんが座るには似合わないような中二感を漂わせる椅子だった。
そして、もうひとつこの部屋に存在するもの。
それは、大きな水晶。
部屋の中央に固定されている、透き通る丸い球体。
「なんだ、これは?」
「それは、僕の能力に使うんだ」
「......未来を見る能力」
ノアがそう言ってから、気付く。
未来が分かるなら聞いてみたいことがある。
「なぁ...」
「無理だよ。その質問に僕は答えることが出来ない」
質問をする前に止められてしまった。
この質問をする事も分かっていたのだろうか?
それに、未来が分からないではなく、答えることが出来ない?なぜだ?
「ごめんね、その答えは君自身が見付けることだと思ってるんだ」
「あぁ、分かったよ」
答えられないのなら仕方ないか。
それより、ここに来た目的を話そう。
「それより、アイリス。ここに来た目的があるんじゃないか?」
「そ、そうでした。お父様、実は......」
ここまで、あったことを話した。
魔族が人間を殺していたこと、魔族の言っていたこと。
それを、聞いた魔王の反応は普通だった。
「僕のやり方が気に入らないようでね、僕の考えを邪魔しようとする仲間が出てきたんだ。これは、完全に僕の失態だ。魔王としての能力が足りなかったんだ」
「お父様...そんな事...」
「いいんだ、アイリス。嫌な目に会わせてしまってごめん」
「その魔族達はどうしたんだ?」
「僕が直々に行って、解決してきたよ。その時にアイリスが居なくなっていてね...」
魔王も辛い選択を迫られていたわけか。
「解決しているなら、もう大丈夫だな」
「そうだね」
俺は、心置きなく自分の目的に向かって走り出す事が出来る。
今、この時も苦しんでいる誰かを救うため、世界を変えるために。
ダンジョンをクリアする。
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