貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第43話 暖かい景色


 ユウは、心の不安がとれたみたいで、安心してぐっすりと眠ってしまった。
 私の膝の上でスゥースゥーと、寝息をたてている。
 息をする度に、髪が太ももに擦れてくすぐったい。

 可愛い寝顔。このまま、今ならキスしてもバレないかな?
 ...冗談だけど考えてみると、少しドキドキしてしまう。

 そんな事をしていると、ユウが走ってきた方角から、また人が現れた。
 一人はアイリスちゃんだとすぐに分かったけど、もう一人は誰?


 「ノアさん、良かったで...」

 私は、すぐに人差し指を唇の前に持っていき、

 「ユウが寝てるから、ちょっと静かにしてね」

 「ごめんなさい、お邪魔でしたか?」

 「ううん、良いよ」

 「アイリスちゃんも無事で良かった」

 ユウは、頑張り過ぎだからね、少しは休ませてあげる時間をあげないとね。
 それより......

 「アイリスちゃん。その子は誰?」

 アイリスの後ろに居る、青髪の女性。
 私よりも背が高くて......胸も大きい。

 自分の身体を見る。
 無いわけじゃないけど......止めよう。

 「...セツカです...よろしくお願いします」

 「セツカさんは、何でここに?」

 「...ユウに...助けれたから?」

 首を傾げながらそう言って答えるセツカさんは、嘘を言っているようには見えなかった。
 それより、私の心の中では少し嬉しい気持ちが広がっていた。

 「ユウ、また無茶したんだね。でも、誰かの為に自分を犠牲にする何て事は誰でも出来る事じゃない。目に写る全ての人を助けようとする。私は、そんなユウがかっこいいと思うよ」

 膝の上でまだ目を覚まさない、ユウにそんな事を言ってみる。
 耳元で喋ると、ピクッと反応するところも可愛い。

 「セツカさんは、この後何かしたい事とかあるの?目標とか、目的とか」

 「...ユウに...ついて行く」

 「ふふっ、そう?ユウも隅に置けないな~。こんな可愛い子ばっかり想いを寄せさせて、気付て無いんだもん」

 「ノ、ノアさん。僕は、そんな事無いですよ!」

 「アイリスちゃん、顔が赤くなってるよ」

 そう言うと、アイリスはすぐに自分の顔を両手でペタペタと触る。

 「アイリスちゃん。本当は赤くなって無かったよ」

 「はっ!!ノアさん、意地悪しないでください」

 「ごめんね、アイリスちゃん」

 反応が面白くて可愛いアイリスちゃんを弄るのは楽しい。
 私も、こんな風に話せる人が前の世界で居たらな...と、そんな事を考えてしまう。

 ここにユウが居るなら、元の世界はどうでもいい。
 それに、帰る方法があるわけじゃないし、何より帰りたくない。

 みんなで過ごす、この暖かい景色が私は大好きだから。
 ユウと一緒に過ごす時間が大切だから。

 私は、ここに居たい。
 この世界でユウと一緒にずっと......

 それが叶わない事は分かっている。
 だからこそ、今この時間が何よりも大切なんだ。
 この世界が終わるまで、私の心に残るこの時間は変わらない。変わることの無い、私の一番の宝物。


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