貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第41話 ダンジョン探索


 片方だけになった視界では、やはり辛いものがある。
 まず、左からやって来るものに反応が出来ない。
 これがかなりの問題だ、今俺達が居るのは15階層だ。

 まだ、敵が弱く俺に傷は付かない。だけど、今後上に上がっていけばただではすまないだろう。
 アイリスも俺が見えないところをカバーしてくれているが、限界も来ているだろう。

 ずっと魔法を打ち続けると言う行為は、予想以上に危険なのだ。
 俺がこの世界に来てから、魔法を使えるようになったとき、はしゃぎ過ぎて痛い目に会ったことがある。
 魔法を使いすぎると、体に力が入らなくなり倒れてしまう。

 しばらくすれば起き上がれるのだが、その時間が命取りになることもあるだろう。

 そう考えると、ノアは大丈夫何だろうか?
 ダンジョンに一人で入って魔物達と戦っている。
 敵が強くなればノアでも危険だろう。

 急がないとな......

 俺達は順調にダンジョンを進んでいる。
 それは、新たに加わった仲間のお陰だ。

 出会った魔物を次々に行動不能にしている。
 やはり、この氷の能力は強い。普通の魔法使いと戦ったら圧勝するだろう。
 なぜなら、この子は言葉を言わずに氷を発生させる事が出来るからだ。

 敵からしてみれば、気付いたら、目の前に氷が出てきて動けなくなった。そんな状況だろう。


 ...そういえば、この子の名前を聞いていなかった。

 「君、名前は何て言うの?」

 「...名前...無い」

 無表情の彼女が少し落ち込んでいるように見えた。
 これは、聞いちゃいけなかったかな。
 そう思っていると、

 「...名前...付けて」

 「俺がか?」

 彼女はコクリと首を縦に振る。
 名前を付けてと言われてもな...

 頭を回転させて考える。
 いい名前は......そうだ。

 「セツカなんてのはどうだ? 雪に華って書いてセツカ」

 「...セツカ...うん、いい」

 どうやら気に入って貰えたようで、無表情だった顔もあの時のように、少し微笑んでいた。

 「...ありがとう」

 「ああ、どういたしまして」

 名前も決まり、お互いの関係もより深いものになった気がする。
 さて、ノアを探さないと。
 心の中ではいつもノアの事が出てきている。
 早く会いたい。あの声を聞きたい。

 それと、不安もある。
 今どうしているんだろうか?無事なのか?
 と、いろいろな感情が混ざり会う。

 「ユウさん、行きますよ」

 アイリスから、声がかかる。
 考え事をしていて少し置いてかれてしまっていた。

 「おう、今行く」

 氷漬けになった魔物達を横切り、次の階へと進む階段を上がる。

 この後、特に強い魔物が出てくる訳でもなく、順調に歩みを進めていった。
 階層が上がるごとに、魔物も変わってきた。
 ゴブリンなどは居なくなり、変わりに大きな体を持っている豚の魔物が出てきた。

 二足歩行で、大きな木の棒を持っている。顔は豚でそれ以外は、人間に近い形をしていた。

 その魔物は、オークと呼ばれていて、かなり力が強いそうだが......やはり、氷漬けになっていた。
 俺が動くこともなく、どんどん次へと進んでいく。

 そして、また大きな扉の前に着く。
 20階のボス部屋だ。

 「さて、行きますか」

 そう言って扉を開ける。
 ギィィィっと音が響き、中の景色が見える。

 明かりがついた先に居たのは、真っ黒に染まったオーク。
 そして、オークにしては身体が引き締まっていてごつごつした筋肉が見える。
 何より、真っ黒なオークは、刀を持っていた。
 日本刀のような、片方に刃が付いているものだ。

 だけど、出て来た瞬間に足を凍らされ、動けなくなっている状態を見ると何だか、かわいそうに見える。
 そして、頭の上から大きな雷が落ちた。

 真っ黒なオークがさらに焦げて黒くなる。
 プスプスと身体から煙を出して倒れる。

 出落ちとは、こういうのなんだと思った。
 俺が、少し欲しかった刀もアイリスの魔法で壊れている。
 まぁ、いいか。俺が刀を振った瞬間に壊れる未来がが見えるし、持たない方が良かったのかも知れない。

 少し可哀想なオークを見送り、次の階へと進む。

 あのオークは多分、ノアにも同じ事をやられたんだろうなと、心の中で思っていた。


 

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