貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第40話 力の代償


 「...ユウさん...ユウさん...」

 体を揺さぶられる感覚と必死に俺の名前を呼ぶ声が聞こえて、意識が覚醒する。
 体を起こして目を開く。

 そして、目を開いてるはずなのに景色が半分しか見えない。

 「ああ、代償は左目だったか...」

 自分の左目のあった位置に手を運んで確認する。
 そこには、何も無かった。

 「ユウさん良かった」

 アイリスは、俺に勢いよく飛び込んでくる。
 その反動でまた倒れてしまう。

 「良かった...」

 何時から泣いていたんだろうか?
 目の周りが赤く腫れている。
 綺麗な顔から涙がポロポロと落ちてくる。

 俺の服をぎゅっと抱きしめ、顔を擦り付ける。

 「悪い、心配かけたな」

 「無茶しないでって言ったじゃないですか」

 「......悪い」

 半分になった景色の中で俺はアイリスへと手を伸ばす。
 そして、いつものように頭を撫でて......あげようとしたが、アイリス自身に止められた。

 「その目は、あの人のせいで無くなったんですよね」

 そうやって指差したのは、鎧の中にいた青髪の女性。

 「これは、俺が自分でやったことだあの人のせいじゃないぞ」

 「でも!!...でも、僕は許せません」

 歯を食い縛り、青髪の女性を睨んでいる。

 「アイリス...いいんだ」

 「...はい」

 しゅんとしてしまったアイリスを俺の上から下ろして、立ち上がる。
 やはり、左目が全く見えない。


 スキル『破壊者』の代償。
 それは、発動者の身体をランダムで完全に・・・破壊すると言うものだった。

 左目だけならまだ運が良い方だ。
 ランダムで破壊する。
 つまり、俺の身体全てが破壊される可能性もあったのだ。

 だから、命があるだけで充分だ。
 次回、使うことがあったら今度は、命を失う覚悟が必要だな......
 自分の拳を強く握って、そう考える。

 ノアに会ったら何て言われるかな...
 そんな心の不安もあるが、俺がやったことに後悔はしていない。
 例え、命を失う事になっても、俺のこの生き方は変えられない。いや、変えたくない。

 俺は、他の誰かが苦しんでいるのを見るのが一番嫌いだから。

 「...アイリス。先に進もう」

 「分かりました」

 ボス部屋の大きな扉を開ける。
 さっきまで凍り付いていた部屋も元通りに戻っている。

 これで、ダンジョンの異変は解決した。
 もう、こんなことが起こることも無いだろう。

 俺がダンジョンのシステムを破壊したんだから、もう二度とこんなことは起こらない。

 頭の中で1つ思い出す事がある。
 この『破壊者』のスキルを貰った時に神から聞いた言葉だ。

 「力とは、何かの犠牲の上で成り立っている。その事実は、いつの時代でも変わらない真実だ」

 と、そんな事を言っていた。
 確かに『破壊者』は、犠牲を支払って発動している。

 ......じゃあ、俺のこの力は何を代償にして成り立っているんだ?
 あり得ない程の力。
 それは、生まれた時からずっと俺の中にある正体不明の力。

 この力は、いったい何なんだ?
 神から言われた時から、持ち始めた疑問。

 俺は、何を......


 「ユウさん? どうしました? もしかして、他にも体に異常があったんですか?」

 「いや、何でも無い。さあ、行こう。ノアの元へ」

 そう言って次の階へ進もうと.....

 「...待って」

 アイリスでは無い声が聞こえる。
 後ろから声を掛けて来たのは、助けたはずの青髪の人だった。

 「どうした?」

 「...連れてって...役に...立つ」 

 「どうしてだ? お前はもう、自由なんだぞ。俺に付いきても危険な目に会うだけだ」

 「...あなたに...助けれた...だから?」

 首を傾げながらもそんな事を言った。
 これは、どうするべきか...

 俺は構わないけど、アイリスは、この人を嫌っている。
 だけど、この人の能力は強い。
 今後の冒険でも必要になってくるだろう。

 「分かった。付いてきてもいいぞ......アイリス、ごめん」

 「ユウさんが決めたことです。僕は構いませんよ」

 アイリスは、そう言ってくれる。
 ダンジョンの10階層で、俺達は新しい仲間を手に入れた。

 新たな仲間と共に三人で、ダンジョンを上がっていく。
 多くの疑問、心配、焦りを胸に抱えて、前に進む。


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