貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第39話 神からの授かり物


 パラパラと崩れていく氷の鎧。
 鎧の間から見えたのは、泣いている顔。
 しかし、その鎧はすぐに直されてしまった。

 実際、俺の拳が当たったのは、ほんの少しだけ。
 それでも、おかしいぐらいの威力のがあるはずだ。

 「ユウさん...あの人は多分...」

 誰かに作られた存在。
 そして、このダンジョンに入ったイレギュラーを倒す為に出て来た存在だろう。

 それは、ノアと言う魔族がダンジョンに入ったから出現した。
 そして、俺では無くアイリスを先に殺そうとした。

 ダンジョンに入った魔族と言うイレギュラーを排除するために、この人はやりたくも無いことをしている。
 涙を流している。

 じゃあ......俺が助けてやる。
 救って見せる...完膚なきまでに。


 自然と自分の口角がつり上がるのが分かる。
 自分の拳に更に力を込める。
 無茶を覚悟で試してみる。

 鎧は、大きく後ろに離れて様子を伺っている。

 「足りない、もっと...もっと力が必要だ」

 あの人は強い。
 だから、俺の全力・・でその囚われた運命から助けてやる。
 大丈夫、ダンジョンの地面は壊れないはずだから。
 どれだけの力を出しても周りに被害が出ることは無い。

 「ユウさん、無茶しないで!!」

 叫ぶ声が聞こえるが、今は無茶をしないと目の前の人を助けられない。
 俺一人の犠牲で誰かが助かるのなら...

 身体全体が熱くなる。
 力を出していくたび、焼けるような熱さが襲ってくる。
 だけど、このスキルは全力の状態じゃないと使えない。

 俺が一度死んでから手に入れたスキル。
 神から貰った俺だけのスキル。

 それは......『破壊者』。

 俺が望んだものを破壊することが出来ると言う、明らかにおかしいスキル。
 だけど、そのスキルの代償も大きい。


 「はぁ...はぁ...」

 苦しい、目の前が揺らいで見える。
 全身の血管がビキッビキッと嫌な音を立てる。
 自分の力に押し潰されて今にも破裂しそうだ、この状態を維持するだけで精一杯だ。

 でも、助けるんだ。
 あの時の誓いとともに歯を食い縛り、堪える。


 これが俺の今の全力...1000%。 

 俺はスキルを発動させる為に歩く。
 しかし、一歩踏み出しただけで目の前は壁に変わっていた。
 そのまま、壁に衝突する。

 力の制御が出来ていない。
 少し歩くだけでこれ程の速さが出るなんて...

 俺はさらに、歯を食い縛る。

 『破壊者』の発動条件は、自分の隠された力も含めて全てを使っている状態であることともう1つ、対象に触れていること。

 1つ目の条件はクリア出来たが、問題は二つ目の条件。
 力の制御が出来てないまま俺があの人に触るだけで粉々になるだろう。
 それは、出来ない。

 じゃあ、どうすればいいんだ!!

 怪我をさせる覚悟で触る?
 あり得ない。

 そうだ、俺に触らせればいい。
 動かない俺に触って貰う、それが一番安全だ。

 今度は、歩く事すら加減してほんの少しだけ地面を蹴った。
 すぐに地面に足を付けてブレーキをかけて体を止める。
 そして、鎧の目の前に着く。

 急に現れた俺に対して、氷の槍を投げつけてくる。
 だけと、その槍は俺の体に当たった瞬間に粉々になって消えた。
 その後何度も氷の槍を投げつけて来たが、結果は変わらない。
 しばらくして、鎧の人が諦めた所で俺は声を掛ける。

 「俺は、お前を助けたい」

 「!!」

 「お前が、この先の運命を変えたいのなら、俺の手を掴め。俺が必ず助けてやる」

 ゆっくりと手をして止まる。
 後は、こいつ次第だ。
 全ては俺が決めることじゃない。

 自分の手で自分の未来を掴め。

 真っ白な鎧が動き出す。
 手を差し出している俺を見て、その手を...

 強く握った。


 ああ、お前の意志は分かった。



 『破壊者』発動。

 縛られている運命を破壊。

 パキッーーンと何かが壊れた音がした。
 氷の鎧が崩れていく。

 「これで、お前は自由だ。これからは、自分の好きに生きればいい。何にも囚われない、縛られない、自由をお前は手に入れたんだ」

 鎧が完全に崩れ、中に居た人の全体が目に写る。
 深い青色の髪。それと同じく青色の瞳。まるで水の女神のような美しさの女性がそこにはいた。

 目から涙をポロポロ流しているのに、その顔は嬉しそうに笑っていた。

 そんな顔を見て俺は満足する。

 そして、脳内に響く言葉と共に意識が落ちた。


 「スキル『破壊者』の代償は......です」


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