貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第36話 大切な人の為に


 たどり着いた、ダンジョンの周りには宿屋や屋台などかあり、少し賑わっていて小さな街みたいになっていた。

 ダンジョンで傷付いた冒険者達を癒すための教会も建っていた。

 アイリスと歩いてダンジョンに向かう。
 賑わっている道を通り抜けると、ダンジョンの入り口が見えた。
 だけど、ダンジョンの入り口には、多くの人が集まっている。
 何か事故でも起きたんだろうか?

 「ユウさん、あれは何でしょうか?かなりの人間が集まっているようですが」

 アイリスも分からないようだ。
 それに、あんなに多くの人の中に行くのはアイリスには辛いだろう。
 少し震えているのが分かる。

 「アイリス、まだ人には慣れないか?」

 「...はい。まだ」

 少し辛そうな顔をしている。

 「少しずつ慣れていけばいいよ。ほら、行こう」

 俺はそう言って手を差し出す。

 「大丈夫。俺がついてるから」

 「はい!!」

 アイリスは嬉しそうに笑う。
 俺の手をぎゅっと掴んで嬉しそうにしている。

 握った手からはもう、震えは感じなかった。
 やっぱり、信頼出来る人が居ると安心するのだろうか?

 アイリスが大丈夫なら良かった。

 ダンジョンの入り口に集まっている人に話掛ける。

 「すいません、ダンジョンで何かあったんですか?」

 「ああ、今ダンジョンに入れなくて困ってるんだよ。どうやら、ダンジョンの魔物が異常な死に方をしてるらしくてな」

 「異常な死に方?」

 「魔物が全部氷になっているんだ。もしかしたら、ユニークモンスターが現れたのかも知れないし危ないからダンジョンに入れてくれないんだ」

 ユニークモンスター。
 ダンジョンで発生した異常に強い魔物。
 それが暴れているのか?

 それとも......

 「まぁ、もうすぐ討伐隊も来るから時間の問題だろう」

 もし、そのユニークモンスターと言われている存在のやったことが実はノアがやったことなら。

 急がないといけないかも知れない。
 討伐隊と言っていた人がダンジョンで調査を始めるのだろう。
 そして、ノアを見付けたら...

 討伐隊よりも早くノアを探して助けないと。

 「ユウさん、もしかして...」

 アイリスもノアがやったことだと思っているようだ。

 「ああ、その可能性が高い。急ごう」

 「はい」

 アイリスを連れてダンジョンの入り口にいる受け付けの人に話掛ける。

 「今からダンジョンに入りたいんだが」

 「今は、危険です。討伐隊が解決するまで待っていてください」

 「急ぎの用があるんだ、入らせてくれ」

 「駄目です。入りたいのなら討伐隊のようなランクB以上の方々じゃないと」

 これは、行けるかもしれない。
 俺は、ポケットからギルドカードを出して受け付けに見せる。

 「俺は、ランクBの冒険者だ。なんなら、俺がダンジョンのことを解決してもいいぞ」

 「あなたがランクB?信じられませんがギルドカードに細工は出来ませんし......」

 受け付けの人は、色々と考えているようだった。
 これで、入れないのなら強引にダンジョンに入って行くしかない。

 「分かりました。ただし、この異変の解決を目指すこと。命を落とさないこと。これが条件です」

 「意外と優しいんだな。ありがとうございます」

 許可も取った。
 後は、ノアを助けるだけだ。

 ダンジョンの入り口は、かなり広く作られていて高さが5メートルぐらいはあるだろう。

 俺達は、大きな扉をくぐり抜け階段を上がっていく。


 あの光景を取り戻すために。

 そして、もう二度と失わない為に。

 大切な人の為に。

 少年は、ダンジョンに挑む。


 少年が階段を上がって、最初に見た光景は......

 全てが凍った、白銀の世界だった。



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