貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第35話 大切な人の元へ


 清々しい青空がそこには、広がっていた。

 ああ、俺。生き返ったのか......
 自分の体を見る。

 あの時『悪魔』に切られた傷は、少し跡を残すだけになっていて、触ってみても痛みはない。
 やっぱりノアが治してくれたのか。

 頭の中で大切な人の姿を思い浮かべる。

 これで、また会える。
 また、あの声が聞ける。

 そう思うだけで、俺の心臓は高鳴っていた。
 早く、会いに行こう。

 体を起こして、周りを見渡す。
 そこには、驚いてる様子の勇者パーティーとアイリスが居た。

 すると、

 「ユウさん...本当に...良かったです」

 泣きながら抱き付いてくる、仲間がそこにいた。
 アイリスは、俺を心配してくれたんだろうか?

 「ごめん、心配かけたな」

 アイリスを一人にしてしまった。
 勇者パーティーが近くに居るのに...無事で良かった。

 アイリスの頭を撫でる。
 これも、慣れたものだな。

 最初に会ったときは、近くに来ることもなかったのに。

 「心配したんですよ」

 赤く腫れた顔で、頬をプクーッと膨らませているが、どこか嬉しそうだった。

 「ユウさん...実は、ノアさんが...」

 「ああ、分かってるよ」

 「そう...なんですか」

 実際、ノアがダンジョンに向かっていることは知っている。
 だけど、どこまで行っているかは知らない。

 だから、迎えに行かないと。

 アイリスを連れてダンジョンに向かおうとすると、勇者パーティーが近寄ってきた。

 「何の用だ?」

 「悪かった。僕が勘違いをしていたせいで君を死なせた。それに、僕の命も救ってくれた。僕は君に返しても返せない恩がある。だから、手伝わせてくれないか?」

 しっかり、謝ってくれるのか。
 人としては駄目な奴だと思うが...『悪魔』と契約したり。何も聞かずに勘違いしたり。

 そう、俺が出す答えは決まっている。

 「もう、俺と関わらないでくれ。それが俺がお前に望む事だ」

 「......」

 勇者は、何も言えないようだ。

 それに、勇者が付いて来ていたら、アイリスが怯えてしまうだろう。
 魔王の娘だということが、ばれれば大変な事になりそうだし。

 「じゃあ、行こうか。ノアの元へ」

 「はい!!」

 俺は、アイリスを抱える。
 抱えると言っても、お姫様抱っこの形だ。

 「ふぇ? えぇぇぇぇ」

 アイリスは、顔を真っ赤にしているが、関係ないとばかりに走り出す。
 20%の力で...

 地面を蹴り、加速する。
 抱えているアイリスは、

 「きゃぁぁぁぁ!!助けてーーー。でも、少し嬉しいかも?」

 と言って騒いでいるが。

 荒れ地を駆け抜け、森に突入する。
 木が邪魔なので、思いっきり地面を蹴って飛び上がる。

 そして、木を蹴って、空中散歩? をする。

 アイリスも慣れてきたのか、楽しみ始めている。

 「ユウさん。ありがとうございます。僕、ユウさんと出会えて幸せです」

 「そうか、俺もアイリスと旅をして毎日楽しかったぞ」

 「そ、そうですか。そうですか」

 少し頬を赤く染めて、嬉しそうに笑っている。

 「だけど、アイリス。ノアと俺と三人でいた方がもっと楽しくなかったか?」

 「そうですね。もう僕の当たり前の日常は、ユウさんとノアさんと一緒に居ることになってます。二人が居ないと、僕は寂しいです」

 「じゃあ、アイリスの目的が終わったら、三人でどこかに遊びに行くか?」

 「は、はい。行きたいです」

 凄い勢いで食い付いてきたな。
 そういうところが子供っぽくて可愛いんだけどな。

 「分かった。三人揃って行こう」

 「はい!」


 
 しばらくすると、 高い塔みたいなのが見えてきた。
 その塔の一番上は、ここから見えない程に高い。

 どこまでも続いてそうだな。


 とりあえず、ノアを探して三人で無事に戻ってくる。
 それが、最低条件だ。


 今から始まる、ダンジョンでの冒険に不安とノアの心配を覚える。

 無事で居てくれよ...ノア。


 少年と魔王の娘は、大切な人の為に世界最大で最難度の『願望の塔』へと足を踏み入れる。



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