貴方に贈る世界の最後に
第27話 逃走
王都の壁を越え、小高い山に着地する。
「ふぅ、やっぱり三人だとかなり辛い」
今まで魔法を使い続けてきたノアがそんな言葉を漏らす。
「なんかノアには、色々と助かってばかりだな」
ギルドマスターとの、戦いの時も助けてもらっているし。
今回もそうだしな。
「助け合うのが仲間だしね。おお、私良いこと言ったかも」
「そうだな、ありがとう」
そんな楽しげな会話をしていると...
「あの、ノアさん、ユウさん本当に良かったんですか?」
アイリスが、そう問い掛けてくる。
俺は、分かっていながらも問い返す。
「何が?」
「だって、ユウさんはおんなじ人間を敵に回したんですよ。もう、人間の居るところには戻れないかも知れないんですよ」
「関係無いな。俺は、そんな事よりも困っている仲間を助けることを優先するぞ」
そう言ってアイリスを見ると...
涙を流していた。
「ユウさん...ありがとうございます。僕、貴方なら何だか怖く無くなってきました。今まで、素っ気ない態度でごめんなさい」
「いいよ、それは仕方ない事だったんだし。大丈夫だ」
そう言ってノアにやるように頭を撫でようとする。
今回は、避けられることもなく撫でさせてくれた。
さらさらとした金色の髪が掌にあたる。
アイリスは...更に泣いてしまった。
「え?どうしたんだ?」
「ごめんなさい。こうされてると、お父様にしてもらってたときのことを思い出してしまって」
「そうか、悪かった」
「いえ、僕は嬉しかったです。また、してくれると嬉しいです」
と、笑顔で言ってくれるこの子の顔は少し赤くなっていた。
そんなやり取りをアイリスとしていると、後ろから服を引っ張られた。
引っ張った人物は、勿論。
ノアだった。
「ユウ。今は、すぐにでも目的地に行く為の行動をしないと、捕まっちゃうよ」
「ああ、分かってる。じゃあ行こうか」
「それと、ユウ。後で私も撫でて。アイリスだけずるい」
「ノアさん...」
ノアさんや、アイリスが微妙な表情になっていますよ。
少しは、自重しようか。
と、まぁそんな感じに、また新しい旅が始まる。
確かな目的がある者。それを、助けたい者。
そして、そのどちらでも無い者。
そんな三人の旅が始まる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
魔王城にて
「キサラギ・ユウが、こちらに向かっているのを確認しました。魔王様」
「ああ、分かった。もうそろそろだと思ってたんだよね。さて、僕も行動を始めるかな」
ここに来た『転生者』リュウドウ・ナギくんと、キサラギ・ユウは、会わせてあいけない存在だからね。
まだ、今は出会うべきではない。
「ねぇ、君、ナギくんを呼んできて貰えるかな?」
「はい、今すぐに...」
近くにあった気配が消える。
さて、今は僕、一人だけか...
「もうすぐ、世界は動き出す......かも」
少し無責任な言葉を放って、魔王は動き始める。
「さて、この世界はどうゆう結末を迎えるのかな?」
楽しみだな......
さて、仕事をしないとね、僕だって暇じゃないんだし。
それに、アイリス...どこに行ったんだ?
もうそろそろ帰ってきてもいいと思うんだけど。
まぁ、僕の娘は強いから大丈夫か。
色々と知っているが所々知らない。
この世界の魔王は、そんな感じの魔王様だった。
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