貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

元の世界のお話2


 気が付くと青い空が広がっていた。
 どこまでも続くその空は、これから始まる旅を祝福しているようだった。


 ...そんな気がした。


 現在俺は、落ちている。
 しかも、かなり高いところから。

 掴めそうなほど近くにあった雲は、遠く離れていく。

 今は、そんな事よりもこの状況をどうにかしないと、まじで死ぬ。
 下を向くとどんどん地面が近づいている。
 どうにかしないと...

 そして思い出す。
 自分の能力を。神様から貰ったものを...

 「『何でも出来る能力』」

 何でも出来るなら...俺は...

 空を飛ぶ。

 そう考えた瞬間に体が浮く感覚があった。
 今、俺は浮いている。ちょうど木の高さと同じぐらいのところで止まっている。

 「お、おおーー」

 思わず声が出てしまう。
 今まで空を飛ぶ何て事はいつ以来だろうか...

 通っている学校の英語の時間に見た映画。少年と怪物が自転車で空を飛ぶ、という衝撃的な映画を見て、実際に飛ぼうとした時以来だな。
 あの時もこんな浮遊感を感じていた。

 でも、あの時は何で飛べなかったんだろうか?
 自転車は、空を飛ぶ事の出来る乗り物じゃなかったのだろうか?

 そんな事を考えつつも、地面に足をつける。

 「それにしても、ここどこ?」

 返ってこない問いかけをする。
 日本では無いのだろうか?

 取り合えずなんかあるところに進んでみるか。

 再び空を飛ぶ。
 せっかくの能力だし楽しみたいよな。

 空の旅を楽しみつつ適当な方向に向かって進む。
 どのくらい経っただろうか?少し先に建物が見える。

 近づいていくと、その大きさが分かってくる。

 「これは...すげぇ!!」

 大きな城だった。まるでゲームに出てくる、魔王が住んでいそうな雰囲気のある城。

 「本当にすごいな、ゲームの中に来たみたいだ」

 その城をしばらく空から見ていると、中から人が出てきた。
 その人には翼が生えていた。人とは思えない真っ黒な翼。

 まるで悪魔みたいな...


 すると、その人?は、俺の前で止まる。

 「貴様、何者だ?何の用でここまで来た?」

 「えっと、質問は1つにしてくれると助かるんだけどなー」

 人間は、二つ同時には考えられない生き物なのだ。一気に言われても分からん。

 「そ、それは失礼した。人間は、そんなに知能が低いのか、何で魔王様は...」

 今、言ってはならないことを言ったな。

 「俺が、馬鹿だと。そう言ったな、低能だとそう言ったな」

 「貴様は、何を言ってるんだ?人間なんぞ、我々と比べるまでもないだろう、これだから馬鹿な人間は」

 ぷっつり。何かが切れる音がした。

 「今まで、俺を馬鹿にした奴には、こう言ってるんだ。よく覚えておけ。馬鹿って言った奴が馬鹿なんだと」

 「...え?」

 「ふっ、どうやら俺の言葉に圧倒されて何も言い返せないようだな。俺の勝ちだ」

 「......私が馬鹿だと...」

 目の前の人は固まって動かない。

 それじゃあ、城の中でも見に行こうかな。この人動かないし良いだろう。

 そして、城の前に立つ。
 こうやって下から見上げると、かなり大きいなと思う。

 城の中に入ろうとすると、また誰かが出て来た。

 「人間なんて、珍しいな」

 そこに姿を現したのは、凄く人の良さそうなおっさんだった。
 何か派手なマントをしているが、絶望的に似合ってない。頭に生えている角?みたいなのも、不自然だ。

 「どうだね、向こうで話でもしないか?」

 近所にいる、親切なおじさんに似てるなこの人。
 と、そんな事を考えていると、さっきの黒い翼の人がこちらに飛んできた。

 「魔王様。なぜここに」

 「いや、なんか良いことが起こりそうだったから、つい」

 「いつもいってますが、魔王様は無防備過ぎるんです。この者がもし、強い力を持っていたらどうするんですか」

 なんか話しているけど、凄く気になる単語がある。


   魔王・・


 もしかして、このおっさんが魔王なのか?
 いや、そんな事は...

 「そうだ、自己紹介がまだたったね。僕は、魔王ケアトル。よろしく...えっと」

 「俺は、リュウドウ・ナギだ。ナギでいいぞ」

 「じゃあ、ナギくんよろしく」

 大きい手が差し出される。少しゴツゴツとした手だ。
 俺は、それに答えてその手を握り返す。


 この瞬間こそ、今後の世界を大きく変える出来事になることを今は、まだ知らない。


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