貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第13話 奪われた感情


 古びた扉を開く。
 ギルドマスターの情報が確かなら、どこに危険なものがあるか分からない。
 気を付けて進まないとな。

 「ユウ、この館の中に人の気配がない」

 「そうか、なら手掛かりがあるかもしれないし調べておくか」


 館の中は隈無く調べたが、手掛かりになりそうなものがひとつも見つからなかった。
 おかしい、ギルドマスターが嘘を言ったのか?いや、それは無いか。

 「無駄だと思うけど館の周りも調べてみたいから、もう少し付き合ってくれ」

 「分かった」


 周りを調べていると、館の裏側の何もないところでノアが異常を感じたらしい。

 「ここ、なにか変な感じがする」

 そうやって指差しているのは、ただの壁だったのだが、調べる価値はある。

 「ノア、魔法でどうにかなるか?」

 「んー、ちょっとやってみる。離れてて」

 言われたとおりに離れる。
 危険なものなのだろうか?

 そう考えていると、

 「全てを焼き尽くせ、原初の焔『ヘル・フレイム』」

 ノアの手から、小さい黒い炎が出てきてその壁に当てた。

    瞬間


   ドゴォォォォォォォォン


 目の前で爆発が起きた。

 「ノア、なにやってんだ。これじゃあ館も粉々に...」

 「ユウ、やっぱりここだ」

 壁が焦げていた。
 一部分を除いて...


 焦げていないところは、ドアの形になっていた。

 「ユウ、これはおかしい、私の魔法でも壊れなかった」

 「あぁ、分かってる」

 魔法のステータスがSSのノアでも、壊せないドア。
 これをやった奴は、ステータスSS以上の力を持った人。油断は出来ない。


 このドアは、俺が壊すしかないか。


 力を解放する。
 今回は、50% 。力が湧き出す。目が赤くなる。世界が遅く見えるほどの力を解放した。

 これで.....どうだ

 扉を殴る。だけど、全く手応えがないままドアを突き破った。
 勢い余って地面を殴りそうになったので、なんとか踏みとどまる。

 「危ない、ここら辺を吹き飛ばすところだった」

 「ユウ、気を付けてね。そんな事したら私も無事じゃないから」

 「分かってる。それより」

 「ん、これは地下への入口?」

 ドアの先には、階段があった。かなり奥まで続いていて先が見えない。
 この館は、ダミーだったようだ。

 ここから先は何が起こるか分からない。だけど助けるべき人がいる。

 覚悟を決めて、階段に踏み入れる。

 階段を下っていくと、広いスペースに出た。
 その奥には、馬車の中で見た子と黒髪の男が居た。

 黒髪の男がこちらを見て話し出す。

 「君達~、どうやってここに来たのかね?それに、私の能力をどうやって?」

 「俺達はその子を助けに来た」

 「...ふっ、ハハハハハハハハハハ。助けに...だと、お前に倒せるのか?」

 「倒してやるよ」

 黒髪ということは、もしかしたら、『転生者』かもしれない。どんなチートを持ってるか分からない。
 でも、能力を発動する前に倒す。

 『フレア』

 子供に被害がでないように、小さく多く作る。
 20発の炎の玉を黒髪の男に向けて放つ。

 「ほう、すごいですね。でも、お前は攻撃できない」

 「っ!!!」

 俺は魔法をすぐに消す。

 黒髪の男の前に、あの子が出て来て庇ったからだ。

 「フハハハハハ、どうですか?私の能力は。私を倒すには、助けに来たこの子を殺さないと駄目なんですよ~」

 人を操る能力。しかも、強制的に動かしている。
 俺が魔法を放ってからの短い間に黒髪の男の前に出て来た。子供が出来るはずもない速度で。

 無理やり体を動かして発動者を守る盾にしている。
 ...最悪だ。

 もし俺が力を使って、見えない速度で黒髪の男の前に行ったら、その子が強制的に体を動かされる。人間が俺の速度を出したら確実に体が壊れる。

 そんな可能性がある。だから、動けない。

 「くそっ」

 「どうしたのかね?攻撃してきても良いのだよ?」 

 チョンチョン、不意に服を引っ張られる。

 「ユウ、私がやってみる」

 そう言ってノアが魔法を使う。

 「『ショックボルト』」

 雷がノアの手から出る。子供に向かって。
 それが子供に当たってバチバチと電気が走っている。そして、倒れた。

 「大丈夫、手加減してある」

 「よし、これであいつを倒すだけ...居ない」

 「私は、ここに居ますよ~」

 そんな声が聞こえた。振り向くと、ノアの後ろに黒髪の男が立っている。

 「ノア、逃げ...」

 「『タッチ』」

 黒髪の男がノアに触った。
 その瞬間。

 「『ショックボルト』」

 俺に向かってノアが魔法を撃ってきた。

 「フフハハハハハ、どうかね?仲間が奪われた感想は?」

 「くそ野郎が」

 この状況の改善策が見つからない。どうすればいいんだ。
 さっきと同じようにノアを気絶させるしかない。でも俺は魔法の加減が出来るわけじゃない。場合によってはノアが...

 くそっ、もっと俺にコントロール出来る力があれば...

 ひとつだけ思い付く。だけど成功するか分からない。

 「『フレイム』」

 「くっ」

 考えている間にも魔法が飛んでくる。

 ...時間がない。やるしか無いのか。


 これは賭けだ。


 俺は力を解放する。
 限界を超えて...200%


 俺は人に向けて力を使う。もう二度とやらないと決めた事を破る。

 一瞬で黒髪の男に近づく。ノアが反応できない速度。能力すら反応できない速度で

 「頼む、死なないでくれ」

 黒髪の男に軽く触れる。
 それだけで人間がボールのように跳ねていく、触った衝撃で右手の肩から先がとれている。

 黒髪の男は、壁にめり込んで意識を失っている。

 ...化け物。本当にそうなのかもしれない。
 こんな力は、普通の人間は持っていない。

 ...考えるのはやめよう。


 ノアは、大丈夫だろうか?
 振り返って見ると...泣いていた。

 「ユウ、ごめんなさい...ごめんなさい...」


 そんな声が聞こえた。
 歩いていこうとすると、体がうごかなかった。
 そのままバタリ、と倒れる。全身に痛みが走る。

 ...力を使った反動か。

 「ごめん...なさい...ごめんなさい...」


 そんな声を最後に俺の意識は落ちた。

 

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