貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第14話 人への憎しみ


 目が覚める。

 「知らない天井だ」

 と、お決まりの台詞を言って周りを見渡す。
 すると、ベットに寄りかかって寝ているノアが見える。泣いていたのか、目の周りが赤くなっている。


 コンコンコン

 「失礼します」

 そう言って入ってきたのは、受付の人とギルドマスター。

 「起きたようだな、どうだ?体は大丈夫か?」

 「おかげさまで、なんとか動けそうだ」

 体を少し動かすだけで、全身に痛みが走る。限界を超えて力を使ったから、その制限をくらってるみたいだ。

 「すみません。回復魔法では、能力の反動は消せないので」

 受付の人は申し訳なさそうだが、

 「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」

 「感謝するなら、お前のパートナーの方だと思うがな。その小さな体でお前をここまで連れ来たんだから。しかも、そのあと2日間ずっとお前の看病をしてたからな」

 「2日間!! そんなに寝てたのか...」

 ノアを見る。

 「そうか...ありがとな、ノア」

 ノアの頭を撫でる。
 すると、ゆっくりと目が開く。

 「ユウ、良かった。もう、起きないかと思って...私...私は一人に」

 泣きながら抱きついてくる。

 「心配かけてごめんな」

 「...うん、もう無茶しないで」

 それは、約束出来ないかもな。お前を守る為ならどんな無茶でもするから。

 「はぁー。全く、イチャつくのは後にしろ。話がある」

 「あぁ」

 「まず、お前が戦った相手の『転生者』は、怪我は酷かったが無事だ」

 「...そうか」

 この手で人を殺したかもしれないと思っていた。でも、力を使って傷つけた事に変わりはない。

 「まぁ、それよりも大変な事があるのだが...実際に見たほうが早いか。お前達付いてきてくれ」



 そんな事を言われて連れてこられた場所には、あの子がいた。
 奴隷になって『転生者』に操られていた子供が

 「お前達が助けようとしていた、この子供だが...これを見てまだ助けられると思うか? キサラギ・ユウお前は、どう思う?」


 見せられた現実に言葉が出ない。

   壊れた人形。

 そんな表現が当てはまるだろう。
 何も考えてない、何もか感じてないその目に恐怖を感じる。

 何をしたら、ここまで人は壊れるんだ。その小さい体でどれ程の苦痛を味わったのか。

 体は痣だらけ。力なく椅子に座っている。いや、そこに居るだけ。

 「この子は魔族だ。子供だと言ってもこの世界では忌み嫌われる存在。お前は、そんな子供を助けようとしていたんだ。『転生者』の私には分からない事だが、この世界の人間は魔族を見たら殺すか、売るそうだ」

 「魔族だから。たったそれだけの理由でこの子は苦しんだのか!!」

 「そうだな。だから、この子はすぐに殺される。国によって」

 「ふざけるな!!それだけでこの子は殺されるのかよ」

 「もう無理だ。諦めろ。国が決定したことだ。だから言っただろ、お前に奴隷は救えないと」

 それでも、それでも俺は...

 「救ってみせる。何があろうと、俺が救う」

 「ユウ、違う。私達が救う」

 「お前達は国を、この世界を敵に回して、たった一人を救うのか?その方が馬鹿げている。死ぬぞ」

 「構わない。何があろうと、全てを敵にしてもいい。誰かが苦しむ世界は間違ってる。だから、俺が、俺達が変える」

 俺は、座っている子供を背負って建物の出口へと向かう。

 「ギルドマスター、世話になった。ノア、行くぞ」

 「うん」



 先の見えない道へ踏み出す。だけど後悔は無い。ノアと二人なら何でも出来る。そんな気がする。


 先は見えない。でも、足元は見える。進むべき道があるなら真っ直ぐ進むだけだ。




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 行ってしまった二人の影を見る。

 「なぁ、リューナ」

 「なんでしょう。ギルドマスター」

 「英雄って言葉を知ってるか?」

 「物語で出てくる、偉業を達成した人のことですか」

 「そう、誰かの為に命を張れる。誰かの為に全力が出せる。そんな奴は、もう居ないと思ってた。前の世界では、どれだけ頑張っても駄目だった。目の前で仲間が殺されて思った。誰も英雄には成れないって。人は臆病で、誰かの為に自分を犠牲に出来ないって。実際、私がそうだった。馬鹿みたいに英雄に憧れて...」

 「...ギルドマスター」

 「でも、あいつらなら。ユウとノアなら、英雄に成れる。そんな気がするの」

 「そうですか」

 「変えられるかもしれない。この世界を、この世界の真実を...」

 消えていった二人を見てそう思う。



 「さて、ギルドマスター。まだ仕事が残っているのですから、戻られたほうがいいと思いますよ」

 「そうだな」


 ....あっ。あいつらに話をするのを忘れてた。
 まぁ、いいか。じきに分かることだ...


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